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LIVE REPORT

Japanese

Brian the Sun

2015.01.31 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 沖 さやこ

なぜ若い男女だけでなく、熟年の男女までもが、彼らの音楽に魅せられるのか。その理由のひとつは、彼らが臆することなくラヴ・ソングを奏でているからだと思う。このバンドは表面的なものだけではなく、好きゆえに生まれる複雑な感情、愛するがゆえに生まれる悲しみなどを、そのまま偽りなく音楽にしてしまう。メジャー・キーとマイナー・キーの間を彷徨うような音階は、些細なことで一喜一憂する敏感な心そのもののようで、それは時に聴き手の過去の恋物語に重なり、時にソングライターでありフロントマンの森 良太(Vo/Gt)の感情をそのまま埋め込まれるような感覚にも襲われる。愛を奏で、愛を歌う――言葉にすると少々キザかもしれないが、それは音楽においてとても大事なことだ。

開演時間の10分前、突如フロアの上手のプロジェクターにツアーのドキュメント映像が流れた。ライヴ1本1本と舞台裏が丁寧に追われた充実の内容。その中でベーシストの白山治輝が"おじいちゃんになっても音楽を続けていきたい"と言っていた。新しい挑戦が盛り込まれた最新アルバム『Brian the Sun』も、そういう気持ちが強く表れた作品であるが、改めて本人の口から言葉として聞けるのは非常に喜ばしい。

放映が終わると暗い会場にSEが流れ、メンバーが登場する。最新作から「13月の夜明け」で硬派に且つ妖しげに幕を開けると、すぐさま「Sister」へ。メンバー全員が"この4人で音を鳴らすのが楽しい"と言わんばかりに音が躍る。甘味と苦味が同居する良太の歌は、男性ならではのロマンチシズムに溢れ、それを堂々と歌い上げる姿もまた凛々しい。話していても彼は生粋のアーティストだと思うが、ステージ上では尚のことだ。切ないマイナー調のメロディが際立つ「Baked Plum Cake」からダンス・ナンバー「早鐘」へ。テンポが速くテクニカルな曲だが、4人全員この曲が生む波を華麗に乗りこなす。それもすべてツアーを経たからこそだ。良太と小川真司、ふたりのギタリストによるソロも非常に頼もしい。

田中駿汰のドラムの強弱と表情が楽曲の奥行きを作り出し、治輝のベースは彼の人柄どおり細かいところまで意識が通う丁寧なプレイで楽曲を支える。3拍子のリズムに乗る真司のブルージーなギター・ソロが輝く「グラストライフル」も、アウトロまで強い気迫が漲る。だが現在のBrian the Sunの作る音は、どんな曲でも心に安らぎを与えるのだから不思議だ。優雅なアップテンポの楽曲の応酬、観客は音に吸い込まれるように――それこそ恋に落ちるように彼らの作る音に魅了されていた。

良太がアコギを抱えたセンチメンタルでスウィーティーな「メロンパンシンドローム」から、軽快でポップな「チョコレートブラウニー」。この曲ではジャンプして楽しむ人、その甘い空気にうっとりする人、両手を高く広げて音を吸収しようとする人、のんびりと楽しむ人......と、観客が思い思いに楽しんでいたのも印象的だった。ミディアム・ナンバーの「R25」は良太の歌に寄り添い、共に歌うような真司のギターが美しく、ベースのリフレインがグルーヴを先導する「Noro」もまどろみのような心地よさを生む。Brian the Sunの作る音は本当に気持ちがいい。それは頬杖をついて好きな人の他愛のない話を聞いている感覚に近いものがあり、日常の些細な幸せがかけがえのないものだと言われているようでもある。「キャラメルパンケーキ」の音に溺れながら、そんなことを考えた。

後半戦1曲目の「Intro」は真司のギター・ソロからメンバー紹介に繋いでいくというライヴならではのロング・バージョンで楽しませ、そのアウトロの残響を遮るように「タイムマシン」へ。心をひとつにしたひたむきで強い音でこちらの心の奥まで入り込み、そこから一転、ギターをかき鳴らしてスピード感のある「Suitability」、コール&レスポンスが起こった躍動的な「パワーポップ」......とドラマティックに飛び回る。自分たちの音楽に確かな手応えを感じていること、そしてこの音を武器に生きていくことを、強い眼差しと清々しい表情で告げられているようだ。

「神曲」のあと良太はギターを爪弾きながら話し始めた。"「白い部屋」は大切の人のために作った曲です。生まれてきて、今ここに立っているということを肯定するために、僕はラヴ・ソングを歌います。あなたたちがここにいること、誰かを愛すること、愛されていることを思い出してほしい。......その日の夜は確か、けんかをした日でした"と彼が言い、彼の歌声と共に「白い部屋」のイントロが鳴った瞬間、泣くつもりなんてなかったのに勝手に涙が零れてきた。人を愛することは、人を傷つけることかもしれない。でもそれを恐れていたら、人を愛することなどできない。もしかしたら彼のラヴ・ソングは、傷ついた心や傷つく覚悟のもとに存在するものなのかもしれない。そんなことを考えながら、その圧倒的な音の前に、ただただ立ち尽くした。

アンコールでは良太が鍵盤を弾いて、映画"ハッピーランディング"の主題歌「アブソリュートゼロ」のバンド・バージョンを披露。ラストに「ロックンロールポップギャング」を演奏するも、フロアからはダブル・アンコールを求める拍手が止まず、バンドは急遽「君の声」を演奏し、約3ヶ月の全国ツアーを締めくくった。

"夢を追い続けることは簡単なことではないが、不可能なことではない。だからみんな、自分の正しいと思うスタイルで、自分の魂が行きたいと思う場所に突き進んで、最後燃え尽きて死ねるように"――森 良太のその言葉の通り、Brian the Sunは2014年、自らの魂が求める場所へと駆け出した。彼らがこれから掴む景色が、輝いていないわけがない。こんなロマンに満ち溢れた男らしいライヴを見せられたら、どんどん突き進んでもらいたい、ずっとついていきたいと思ってしまうのは、必然なのだ。

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