Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2019年01月号掲載

Brian the Sun

Member:森 良太(Vo/Gt) 白山 治輝(Ba/Cho) 小川 真司(Gt/Cho) 田中 駿汰(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

Brian the Sunが1年ぶりの新作として2曲入りシングル『Lonely Go!』をリリースする。メジャー2ndフル・アルバム『the Sun』はよりリスナーの間口を広げる方向性での制作だったが、そこから様々な心境の変化と、このシングルの制作をきっかけに、インタビューをした2018年12月現在で新しいモードへと突入しているようだ。それはどこか懐かしいBrian the Sunの姿でもあり、だがこれまでになかった貫禄も持ち合わせているという、まさに彼らのキャリアすべてが反映された状態でもある。そんな彼らにとって『Lonely Go!』とはどんな作品なのだろうか? メンバー全員に訊く。


"4人で一生懸命やったら何が生まれるのか?"を実行することで、お客さんも嬉しいし、俺らもバンドやってる実感が持てることに気づいてきた


1年ぶりのインタビューなので、まずはこの1年を踏まえて現在いかがお過ごしでしょうか? というところから話をうかがえればと思います。

森:2018年の頭に『the Sun』というフル・アルバムを出して、その中の「the Sun」という曲がバンドを象徴する曲であり、自分の中で節目を迎えた感覚があって。だから2018年は好き勝手やってみようと思ったんです。4人全員、それぞれのこと、自分自身のことをやる期間になったのかな、と思っていて。

-そうですね。森さんは別のプロジェクトを立ち上げ、田中さんもサポート・ドラマーとして活動したり、白山さんはレギュラー・ラジオや舞台に出演したり、小川さんも映像作りをしてみたり。

森:Brian the Sunという帰る場所があるから好きにやってみようや、ということになったんです。それならイベントもそれぞれが好きなようにやって、個々の色を出してみればいいんじゃない? って。

-それが9月から開催された、公演ごとに各メンバーがプロデュースする自主企画イベントの"Four Bright Lights"ということですね。

白山:ライヴの日程が4本4ヶ所やから、ブッキング、セットリスト、グッズもそれぞれで全部やってみたらいいんじゃないか、という話になって。現時点で3本やってみて(※取材日は12月中旬)、全員が"ライヴを作る"という同じことをしているのに全然アプローチが違うなと思ったんですよね。

森:うん。全員全然ちゃうんやなーって確認ができた。でもそれはそれやな、そればっかりやっててもしゃあないなと思ったんです。最近はモードが真逆で、"バンドなんやし一丸となってやろうぜ"というタームになってきてる気がしますね。ばらけるよりも、まとまると個性が出る、バンドの旨味や強さが出るな......と最近思ってます。今、切実にいいライヴをしたいと思ってるんですよ。

-というと?

森:見え方、見せ方を考えるとか、小手先のことをやるのではなく、原点に立ち返って、ひとりひとりのできること、得意なことを全力でやっていかないとな、と気づいて。"4人で一生懸命やったら何が生まれるんやろ?"というのを実行することが、結果的にお客さんも嬉しいことやし、俺らもバンドやってる実感がすごく持てるねんな......ということに徐々に気づいてきた。

-Brian the Sunとは5年のお付き合いになりますけど、その当時からこのバンドの本質はそこだと思っていましたよ。

森:最初はそういう気持ちを持ってたんですけど、メジャー・デビュー前あたりから大衆を意識し出すようになって。"自分たちのことはいったん差し置いて"という発想も、歳を重ねるとだんだん大きくなってくるし。そういうところにとらわれていた節はあるのかもしれない。その結果"より聴いてもらいやすい曲を"とか"より聴き手が入ってきやすいライヴに"とかを考えていたんですけど、自分らに見合ったスタイルでやらないと続かんし、パワーも発揮できひんし――それがなんなのかをずっと探していたのかもしれないですね。

-その結果、やっとひとつの答えに辿り着いたと。

森:うん。やっと。むっちゃシンプルなところに帰結して(笑)。

白山:辿り着くたびに探して辿り着くたびに探して......280周くらいしたな(笑)。


"こういうアレンジにしたらいいんじゃない?"という提案を貰った時点でこの人は信用できると思った


-『Lonely Go!』は話してくださったモードになる前に制作したものですよね?

森:そうですね。どうやったら大衆に受け入れてもらえるのかを考えるのと、メンバー個々好き勝手やってみようとしているときの切り替わりくらいの時期でした。

-「Lonely Go!」はTVアニメ"BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS"のオープニング・テーマということで、ボルト(※"BORUTO-ボルト-"の主人公)もBrian the Sunや森 良太も孤独感を持つのは共通項かなと。

森:んー......"BORUTO-ボルト-"を読んで、漫画の中にも世代感、時代感はあるんやなー......と思いました。ナルトは息子のボルトの扱い方をわかってなくて。ナルトは何もないところから成り上がったけど、ボルトは生まれたときからいろいろ持ってるし、家族もおるし、才能もあるからちょっと練習すればなんでもできてしまう。それってむっちゃ孤独なことで。表面上満ちているように見えても実際は......ということ、あるじゃないですか。

-そうですね。

森:そういう時代に生まれた子供のお話なのかな、とぼんやり思ったんです。今はすっごいいろんな情報が溢れているから、ひとつのことを掘ることも少なくなっている。自分の心の拠りどころがなんなのかもわかんなくなってきてるんですよね。バンドもそうやし、なんでもそうですけど、あるものばかりにとらわれるんじゃなくて、身体ひとつから始まっていることなんで。ひとりで寂しくても進んでいくしかないけれど、それは裏を返せば"身体ひとつあればオッケー"ってことやと思う。それくらいの気持ちで生きていけたらいいのにな、って。

-だから"Lonely Go!"という言葉を用いた。

森:寂しいけど、前に行くしかないでしょう。何かに向かうときというのは、寂しいし、孤独なこと。周りに目もくれず突き進むときはひとりなので。"BORUTO-ボルト-"はそういう切なさをわかりやすく描いているので、そういう感覚をしっかり歌いたいなと思いましたね。それで「Lonely Go!」は江口 亮さんと一緒に制作させてもらって......いろいろ腑に落ちることがあったんです。江口さんはしっかりとバンドを導いてくれるディレクターさんなんですよね。"お前は余計なことを考えんでいい"と言ってくれて、その言葉にすごく説得力がある。

-江口さんもバンドマンですからね。

森:バンドやってない人に同じことを言われても無責任やなと感じてしまったりするけど、江口さんに言われると"なるほどね"と思うことがたくさんあった。それで"余計なことってなんやろ?"と考えてみたら、めっちゃいっぱいあって。見せ方、見え方、売れ方、広がり方、どこの層、どこのジャンル、どういうバンド、みたいに......いろーんなこと考えてたな、邪魔なこと。それでもっともっともっともっと原点に立ち返って、"アーティストってそういうことじゃなくない? アーティストと呼ばれる人間はそれではだめじゃない?"と思った。レコーディングを通して、江口さんはそういうことを音楽的にも人間的にも教えてくれた気がしますね。

-「Lonely Go!」の第一印象は、江口さんらしい華やかでブライト感のある音の作り方がBrian the Sunにはとても異質だけど、いい化学反応が起きている、ということでした。

森:ギターそのもののサウンドをここまで愚直に磨いている4人組ですから、江口さんも考える前にわかったんでしょうね。スタジオに来てもらって1回デモを聴いてもらったときにもうわかり合っている感じはあって。"こういうアレンジにしたらいいんじゃない?"という提案をもらった時点でこの人は信用できると思った。すごく愛情のある人なんですよ。

-江口さんはBrian the Sunに"ロック・バンド"でいてほしいんだなと、音作りから手に取るようにわかります。

小川:江口さんから"お前たちはロック・バンドなんだ! ロックじゃなきゃだめだよ!"ってめちゃくちゃ言われてるんですよ(笑)。バンドのことをすごく考えてくれる人なんです。

森:"男がかっこいいと思うバンドになれ!"とかな(笑)。

田中:"かっこいいビートを叩け! 右手を抜け!"って(笑)。