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INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2019年03月号掲載

Brian the Sun

Member:森 良太(Vo/Gt) 白山 治輝(Ba/Cho) 小川 真司(Gt/Cho) 田中 駿汰(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

"今4人がやってかっこいい"と思った曲だけ入れたのが良かった


-時間をかけて手にしたものは、揺るぎないものにもなりますしね。では森さんのデモ作りも、バンド云々の前に、自分自身の気持ちいい感覚を大事に曲作りをしていったということですか。

森:そうっすね。頭の中で鳴ってる音をデモに起こして、それをみんなのところに持っていって、結果どうなるか――そこがバンドのおもろいところですよね。よりイメージに近づくことも、イメージから離れて違うものになることも、バンドやからできることやから。「MILK」はロックの香りも残りつつ、今までとは違うテイストのものになったんで、こういうことを繰り返してバンドのスタイルというものはできていくんやなと思いました。

-サウンド感には現在のモードが反映されているけれど、曲そのものには子供目線のことが書かれているものもありますよね。

森:曲は自分の中で順番待ちをしているようなもんやと思ってて。新曲というとほんま今この瞬間生まれたような新しいものやと思いがちやけど、ずーっと昔から出てくるのを待ってた曲たちが、やっと出てきただけかもしれないですね。自分ではこの28年、考えてることややっていることの整合性が取れているというか、一貫してると思っていて。でも表現の場や方法が変わると、ぶれてるように見えたりするじゃないですか。

-そうですね。

森:というのもあって、今はこうだ、過去はどうだという発想になるんやと思うんです。でも人間、根本にあるものはそんなに変わらへんから。今やから昔のことが書けるとか、そういうのとはちゃうんです。

-その身体の中には常に、生きたぶんの人生がすべて詰まっているわけですからね。

森:そうっすね。今回はこの10曲に順番が回ってきたというか。発明のように思いついたことは、何ひとつ入ってない。

-今まで出てこれなかったものが出てきたんじゃないかな、とは思いますよ。

森:んー、そうかもしれないっすね。今回は自分に制約を設けたりはしていないので。だから"こういうアルバムを作りたい"というイメージはあったけど"こういう曲を作りたい"みたいなコンセプト性はなくて。今回は江口さんが俺らのやりたいことも汲んでくれてるし。そういう音作りだから、作品の中身がより気になる、と思わせる作品になっているし、より本質が浮き彫りになっているのかもしれないですね。自我がサウンドに出ている。

-楽器隊は森さんの上げてきたデモに対してどんな印象を抱いていましたか?

田中:デモにはバンド以外の新しい音が入ってて、あぁ、森君進化してるやんって思って。「忘れていたこと」や「MINT」はデモにピアノが入ってて、もともとはもっとポップ寄りなアレンジやったんです。でもそこから話し合いを経て、今回はこのバンドのロックの音でポップなことをやろうと。曲の雰囲気がデモからだいぶ変わった印象があります。

白山:良太もどんなアルバムにしようかすごく考えていたと思うんです。4人でミーティングをしたとき、良太が"こういうアルバムにしたいねんけど"と話してくれて、全員が"それいいやん。4人でいっぱいスタジオに入ろうや"と一致して――『MEME』の制作はそこから動き出した。あの話し合いでぎゅっとまとまりましたね。

-4人全員が等しくそのテンションで制作に向き合えたことは突破口だったかもしれないですね。

白山:デモを現場で聴いて4人でがちゃがちゃ音を合わせながらアレンジを作っていったので"こういうアルバムになっていくんやろな"というイメージを持ちながら制作が進んでいって。良太が持ってくる曲がパワー・アップしてるので、俺たちもパワー・アップしないといけないなという相乗効果が生まれました。メンバー全員が120パーセントの力を出せたから「MILK」みたいな曲に挑戦できたし、ちゃんとかたちにすることもできた。"今4人がやってかっこいい"と思った曲だけ入れたのが良かったんやと思います。僕らとしては聴いてくれた人からそういう作品を"かっこいい"と言ってもらえたら、一番嬉しいじゃないですか。

-そうですね。リスナーとしても"今このバンドはどんなものをかっこいいと思っているのか"という思想が落とし込まれている音楽が聴きたいですよ。信頼しているバンドならなおさらそれが知りたい。

小川:『MEME』の制作に取り掛かる前って、自分たちがこれからどうしていくべきか、どうなるのか、誰もわかってなかった。バンドとしての指針がない状態で"どうしよう? 何をしよう? 何が楽しいんかな?"みたいな期間が結構長かったんですよ。

-そうでしたね。

小川:その期間はほんまものすごい話し合いもしたし、それこそバンドをやめるのかやめへんのかという話もあった。でも『MEME』という作品の指針が決まってから、すごくいろんなことが転がり始めたんです。バンドの空気もどんどん良くなっていったし、バンドの空気が良くなったから出てくるものも良くなった。出てきたものに対していろんな色味が生まれていって――その結果アルバムを通して一貫性があるものができました。

-今までのBrian the Sunは、4人がお互いを見てバランスを取りながらBrian the Sunを目指している印象があったんですけど、今回は4人それぞれが120パーセントの力を出したものがBrian the Sun、という潔さがある。

一同:うんうん。

-今までも"ソングライターwithバック・バンド"みたいなバンドではないと感じていましたし、バンドだと思っていたけれど、『MEME』でやっと本当にバンドになったのかなと。

森:あぁ......。うんうん。

-10年以上バンドをやっている人たちに、バンド未経験の人間がとても失礼なことを言っていますが(笑)。

森:あははは(笑)。最近思うんですけど、お客さんには俺らの展望とか政治的なこととかは関係なく、曲を聴いてほしいなと思うんです。アーティスト単位ではなく曲単位で聴くリスナーが増えてるのも、音楽業界にとって悪いことじゃないかもしれない。そんななかで"曲単体じゃなくてバンド単位で聴いてよ"というのは、自我の極みやと思うし。でも自我があるから人間やし、世の中や自然というものは、そういうものでできてるとも思う。

-そうですね。

森:「MILK」でも歌ってるけど、エントロピー増大の法則は人の心にも言えることやから。いろいろなことが細分化されて平たくなってるのは自然やし、そこに対して抗えるわけではない。前は俺も"この曲はこうやな"と分析したりしてたし、"こういう曲のあとはああいう曲出すんやろな"というのもわかってしまう――そういうことが非常にもったいないことだと気づいたし、気づいてからより音楽を好きになっていってるんです。無責任な話、今回のアルバムがお客さんにどう届くかわからない。そういうことが結構どうでも良くなっていて。

-というと?

森:ただむっちゃ大事なのは、お客さんたちのことをまったく考えてないというわけではないことで。"バンドばらそっか"と話したときに、応援してる人たちの顔がめっちゃ浮かんで。こういうバンドを応援してライヴに来てくれる、俺のことをめっちゃ好きでいてくれる、俺らの作品が聴かれへんくなったらすごく悲しいと思ってくれる......そういう人たちがたくさんいる。そういう人たちに対して、ものすごく背を向ける行為やと思った。過去に"大きいステージに連れて行きたい"という想いをステージで伝えたこともあるし、約束を破りたくない気持ちもめっちゃあった。それが4人にとって、むっちゃ大事なことやったんですよ。

-うんうん。

森:自由に音楽ができているのも、そういう気づきがあったのも、そういう場所があったからやし、口で"感謝してます"って言うてても解散してたら意味ないし。次の作品どうするか、まじで一生懸命考えてるから、それしかないと思ってますね。それはサービスを提供して気持ち良くなってもらおうということではなくて。

-ええ、わかりますよ。

森:いいものを作らなきゃというプレッシャーは、今まで以上にめちゃくちゃあるんです。同じタイミングでスタートした奴らがどんどん先に行って、歩幅が乱れてしまうこともあるけど、自分の歩幅をキープするのが一番重要なことやと思う。そういうふうに生きていけたらいいなと思いますね。難しいですけど(笑)。まぁ......今はみんなが"頑張っていきましょう!"という感じなんで。それが何より一番良かったことかな。そのぶん余裕綽々でいられなくなったし、ちゃんとしないとな、とすごく思ってますね。