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INTERVIEW

Japanese

アルカラ

2012年08月号掲載

アルカラ

Member:稲村 太佑 (Vo&Gt) 田原 和憲 (Gt) 下上 貴弘 (Ba) 疋田 武史 (Dr)

Interviewer:天野 史彬


-そうやって“引いていく”っていう今までにない変化が生まれて、バンドとしてそれを受け入れていくことは、自然なことだったんですか? それともそこに抵抗や軋轢みたいなものがあったりしたんですか?

稲村:自然なことやったと思いますね。……この作品で、アルカラはじめてちょうど10年経つんですよ。で、このアルバムを作る時に、12~3年前、自分が20歳くらいの頃にやってたバンドのビデオを見る機会があって。それが、もちろん今より全然下手糞なんですけど、なんか、よかったんですよね。刺々しい感じというか……武器を持ってないからこそ、何もないからこそ、素直過ぎてよかったっていうのがあって。まぁ、恥ずかしいなぁっていうのが9割やったんですけど、あと1割のよさを見た時に、原点回帰というか、今、知識だったり技術だったりは上がったけど、その中心はなんやったんやろうなっていうのを考えたりもして。なので、今回の変化に対しては抵抗よりも挑戦っていう感じがありますし、むしろ、自然であるなぁっていう感じですね。自分たちのよさっていうのは、今までみたいに着飾ることでも出せるけど、芯の刺々しいところは、昔だったらただの暴言だったものが、今だったら説得力のある言葉にすることもできるかもしれない。北島三郎が、“10年たって一皮、20年たってふた皮、30年たって自然体になる”って言ってて。僕らもちょうど10年たって、1周したなって感じなんですよね。で、今言ったみたいに戻ってきた部分もあるし、これからの2周目で、1周目では見えんかった景色を見たいとも思うし。自分がマルとしたものがほんとにマルなのか、自分がバツとしたものがほんとにバツで、使いものにならんのかっていうのをもっと見ていかなあかん2周目がこの先にあって、その最後に自然体になるのかなって思ってて。

-過去を振り返ったり、未来を見つめることできたのは、この10年間でアルカラが培ってきた、バンドとしての芯があればこそですよね。

稲村:そうですね。今、サッて楽器持たされて、“さあ、やってください”って言われた時に、この4人でやったら5秒くらいの打ち合わせがあればできるやろうなっていう、経験値ですよね、要は。……まぁ、5秒は無理ですけど(笑)。

下上&田原&疋田:(笑)。

稲村:まぁ、ちょっと相談すればできちゃうだろうっていう、ひとつの経験からくる自信というか。それはつきましたね。今までは、自分たちが出してるものがいいのか悪いのかっていうのが凄い不安やったんです。聴く側の人の心を動かしたり、その人の中のスイッチを入れられる瞬間があるかどうかだと思うんですね、音楽って。でも、それが実際、自分らにあるのかどうか……自分らが聴く側に立って音楽を聴いてても、そんな瞬間があったりなかったりで、その答えはわからないですし、一時的に自分の気持ちが上がってるからこそ、そうなり得たこともあれば、自分の気持ちが下がってるからこそ、そうなり得なかったこともあったと思うし。音楽は、やってるのも人だし、聴いてるのも人じゃないですか。僕らは30分とか1時間のステージだったり、CDという形でしか聴き手と会話ができない中で、如何に人間の中の心の一部を締めれるか、如何にその人の生活の一部になれたり、夢の一部になれるのかっていうのを考えないといけない。それって、見えへんもんやからこそ、答えがわからんかったんです。でも、やっていくうちに、“次にアルカラは何をしでかすんやろう?”って待ってくれてる人がいるなって思えるようになったので。だからこそ、素直に自信を持ってやればいいなって、今作は特にそういうところはありましたね。

下上:がむしゃらにやってきた10年だったんですけど、2年前に東京出てきて、そこから段々と、自分たちを分析できたりするようになれた部分があって。それからちょっとずつ、自分たちの芯がどこで、どこを出せばいいのか、どこを引いてみればいいのかっていうところを考えられるようになって。それはレコーディングとかを経験しながら、自然にこうなってきたなって思います。次はどうなるかわかんないですけど、自分たちらしさをわかってきたからこそ、このアルバムも作れたのかなって思いますし。