Japanese
amazarashi
Writer 石角 友香
コロナ禍の青森での生活、個人としての感情をどうしても2020年のうちにアウトプットしておきたかった印象の強いEP『令和二年、雨天決行』から約1年半。アルバム『七号線ロストボーイズ』をリリースするamazarashi。昨年は新作にも収録されている「境界線」を表題とするCDリリースを果たし、また延期となっていたアルバム『ボイコット』のツアーも果たした。時系列が入り混じるような感覚を覚えるが、秋田ひろむ(Vo/Gt)は多くの人々が言う、コロナ前の当たり前の幸せや、元通りの生活という概念に対してやはりどこまでも懐疑的だったのではないだろうか。決して"普通の生活"を嫌悪するわけではなく、そもそも平穏無事な世界など存在していなかったではないか? という問い掛けが、長年のファン以外にもリアルなものになったはずだ。
国道7号線は新潟県新潟市から青森県青森市に至る一般国道だ。秋田の生育の記憶と分かち難い場所だろう。未曾有の時代の個人の感情を吐き出さざるを得なかった『令和二年、雨天決行』の先にはもっと根源的に、じゃあなぜこの困難を乗り越えても生きていたい自分がいるのか。そもそもなぜ、自分は表現をやめないのか。もっと言えば"自分"とはなんなのかを過去の体験や情景まで遡り、変わらぬ軸と、今だから言える言葉をこの『七号線ロストボーイズ』では主演と脚本/監督を兼任するような筆致で描いているのだ。秋田自身、本作について"行く先も分からない空白の未来へ向かう為に、まず自分が何者かを知る必要があった。何故始まったのか、何故、今現在この場所で暮らしているのか。僕らを現在地へと掻き立てたものとはなにか。日々過ごす中で、道に迷う子供たちと、かつて子供だった人たちへ"と、コメントしている。実際、聴き進めていくうちにかなり早い段階で、かなり具体的な形で、その頃の少年が現れる。しかもそのトーンはアルバムが進むごとに穏やかであったり、前向きであったり、まだこの足で走り続けようとする体感としてのスピードも伴っていくのだ。これはかつてない感覚だと思う。
アルバムを曲順通りに聴いていくからこそ見えてくるものがある。永遠に続く乾いた悪夢のようなピアノとギター・リフのループがヒップホップのトラックめいた「感情道路七号線」は、どこかTHA BLUE HERBのようなタフさを携え、アルバムの序章を告げる。続く「火種」も、エレクトロニックなシーケンスからピアノとシンセ・ストリングスが侵入してくる冷たい感触。"火種はあの日の呪いだ"というパンチラインがすべての始まりを想像させる。自分を苦境に立たせるのも、苦境を照らすのも、なんらかの違和感から生まれた火種が発端なのだろう。続く「境界線」は、TVアニメ"86―エイティシックス―"オープニング・テーマであるがゆえに、アニメの勝ち目のない残酷な戦いに身を投じる少年少女たちを想起せずにいられないが、アルバムで聴く"境界線"というワードや認識、比喩は自分がとってしまった態度や距離に思えてくる。だが、この曲の最後に登場するのも火種に似た、"微かに灯る火"である。火は予兆でも希望でもある。加えて、「境界線」はサウンドをアップデートした堂々たるJ-ROCKの野心作であることも新鮮に響く。
そして物語の主役がタイトルの「ロストボーイズ」から、シーンはぐっと具体的な過去の情景に。他人と違うように感じる自分の居場所のなさと、優しく寄り添う今の自分。ミディアム・バラードが俯瞰の視点を裏づけるようだ。冷たい空気を感じさせる生音で作るアブストラクトなトラックの「間抜けなニムロド」は、なぜ秋田が青森に住み続けるのか空気感で伝わるような1曲。さらに今自分がこの世に存在する理由、血縁や土地の記憶が綴られる「かつて焼け落ちた町」には"青森空襲"という言葉も登場する。都会ではない土地が狙われた理由も、現代の青森という都市の負債を押しつけられた事実も想起させながら、それでも人間の営為は続いていくことを歌う。後半でグッとファンク寄りの強いグルーヴが出現するアレンジに命の力を感じるのも、歌詞は淡々と事実を綴っているからこそだろう。ランダムな単語が四つ打ちのビートに乗る「アダプテッド」は、恋のみずみずしさと恐れを知らない青さと少しのユーモアに微笑んでしまうほどだ。
時間は少し流れたのか、続く「戸山団地のレインボー」は、退路を断って音楽活動を本格化した時期を描いたのだろうか。青森には珍しい暑い夏の日の夕立のあとに見えた虹を想像させる。それは今までにないほど光が見えるサビの音像だったり、色合いだったりのせいでもあるのだが。さらにタイトルがすべてを物語っている「アオモリオルタナティブ」。ライヴ・シーンのことだけじゃない、その土地にしかない、でもどの町にもありそうな始まりの気配が、温かみのあるピアノが支えるトラップ調のオケで、今もありそうな情景に思わせるのだ。そしてラストのこれぞギター・ロックと呼んでさしつかえない、最近のamazarashiには珍しい「空白の車窓から」で、なぜ自分は表現することをやめられないのだろう――という問いの答えが白く光っている。
ラスト1曲前に収録されている「1.0」はアルバムの中では現在進行形の心情を見せる。それは手紙のような形態をとった歌詞から感じられることで、そもそもこの曲は存在していた。が、この曲を発端に人気漫画"チ。"との往復書簡プロジェクトがスタートしたことで、作品を通じた"会話"の発端となっているのが興味深い。すでに"チ。"の作者である魚豊氏はイラストと文章を「1.0」に対して寄せているが、そのイラストを使ったMVを"チ。"のコミック7巻と同時に公開する。また、今後amazarashiからの往復書簡は"チ。"の最終第8巻の発売日である6月30日に公開予定。互いにインスパイアされている両者のトリビュート・プロジェクト"共通言語"の今後からも目が離せない。
コロナ禍に加え、国境を越えた戦争が現実になるという、SFを越えてしまったような今を生きていると、何が自分の尺度であり正義なのか頭を抱えてしまう。だが、最大公約数的な正解めいた思考は危ういものだ。生きてきた月日は様々であっても、まず自分は何者なのかを知ろうとするamazarashiの試行は、リスナーにとっても多くのヒントを含んでいる。音楽的にも曲が求める必然的な姿をした一曲一曲はとても自然だ。
▼リリース情報
amazarashi
ニュー・アルバム
『七号線ロストボーイズ』
2022.04.13 ON SALE
【完全生産限定盤】(CD+Blu-ray)
AICL-4204~4206/¥7,700(税込)
※特殊パッケージ、ハードカバースケジュールノート封入
amazon
TOWER RECORDS
HMV
【初回生産限定盤】(CD+DVD)
AICL-4207~4209/¥6,600(税込)
※特殊パッケージ
amazon
TOWER RECORDS
HMV
【通常盤】(CD)
AICL-4210/¥3,300(税込)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
『七号線ロストボーイズ』特設サイト
購入はこちら
[DISC1(CD)]
1. 感情道路七号線
2. 火種
3. 境界線
4. ロストボーイズ
5. 間抜けなニムロド
6. かつて焼け落ちた町
7. アダプテッド
8. 戸山団地のレインボー
9. アオモリオルタナティブ
10. 1.0
11. 空白の車窓から
[DISC2(Blu-ray/DVD)]※完全生産限定盤、初回生産限定盤のみ
1. 拒否オロジー
2. とどめを刺して
3. 境界線
4. 帰ってこいよ
5. 初雪
6. アルカホール
7. 水槽
8. 抒情死
9. マスクチルドレン
10. 馬鹿騒ぎはもう終わり
11. 世界の解像度
12. 独白
13. 千年幸福論
14. そういう人になりたいぜ
15. 未来になれなかったあの夜に
16. 夕立旅立ち
「空白の車窓から」先行配信中
「1.0」先行配信中
デジタル・シングル
「境界線 (Naeleck Remix) - Sakura Chill Beats Singles」
NOW ON SALE
配信はこちら
▼ツアー情報
"amazarashi Live Tour 2022 「ロストボーイズ」"
5月3日(火・祝)北海道 カナモトホール(札幌市民ホール)
5月21日(土)リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
6月7日(火)福岡サンパレス
6月9日(木)大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
6月24日(金)東京ガーデンシアター
6月26日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
[チケット]
全席指定
前売:¥6,500(税込) / 当日:¥7,500(税込)
■OFFICIAL HP先行
~4月7日(木)23:59(抽選)
■ファミリーマート先行
4月9日(土)12:00~4月17日(日)23:59(抽選)
■CD封入先行予約
4月12日(火)12:00~4月17日(日)23:59(抽選)
■発売日
4月23日(土)イープラスにて
※札幌公演のみ4月24日(日)18:00受付終了
詳細はこちら
- 1
LIVE INFO
- 2025.10.08
-
THE ORAL CIGARETTES
TOKYOてふてふ
FOO FIGHTERS
Re:name × Enfants
JON SPENCER
MONO NO AWARE
ORCALAND × Gum-9
- 2025.10.09
-
キュウソネコカミ
Rei
OKAMOTO'S
終活クラブ
JON SPENCER
DOES
アイナ・ジ・エンド
感覚ピエロ
Hedigan's
Plastic Tree
羊文学
Kroi
- 2025.10.10
-
ENTH × SPARK!!SOUND!!SHOW!!
暴動クラブ × 大江慎也
Rei
SUPER BEAVER
ザ・シスターズハイ
KING BROTHERS
PEDRO
YOASOBI
moon drop
オレンジスパイニクラブ
OKAMOTO'S
the cabs
WHISPER OUT LOUD
FRONTIER BACKYARD
LEGO BIG MORL
JON SPENCER
NOMELON NOLEMON
a flood of circle
DOES
水曜日のカンパネラ
FOO FIGHTERS
キタニタツヤ
たかはしほのか(リーガルリリー)
ExWHYZ
MONOEYES
藤森元生(SAKANAMON)
大塚紗英
感覚ピエロ
ZAZEN BOYS×サニーデイ・サービス
East Of Eden
アーバンギャルド
JYOCHO
羊文学
小林私
THE SPELLBOUND
- 2025.10.11
-
終活クラブ
キュウソネコカミ
トンボコープ
Appare!
cinema staff
秋山黄色
YOASOBI
moon drop
コレサワ
OKAMOTO'S
"FM802 MINAMI WHEEL 2025"
KNOCK OUT MONKEY
INORAN
WtB
阿部真央
I Don't Like Mondays.
"京都音楽博覧会2025 in 梅小路公園"
KANA-BOON
ExWHYZ
FRONTIER BACKYARD
androp
カミナリグモ
brainchild's
フレデリック
envy × world's end girlfriend × bacho
"JUNE ROCK FESTIVAL 2025"
East Of Eden
Official髭男dism
藤沢アユミ
豆柴の大群
"TOKYO ISLAND 2025"
- 2025.10.12
-
a flood of circle
キュウソネコカミ
SUPER BEAVER
WtB
キタニタツヤ
セックスマシーン!!
WESSION FESTIVAL 2025
"FM802 MINAMI WHEEL 2025"
INORAN
"京都音楽博覧会2025 in 梅小路公園"
Omoinotake
Bimi
ART-SCHOOL
Official髭男dism
eastern youth
なきごと
"TOKYO ISLAND 2025"
- 2025.10.13
-
WtB
阿部真央
I Don't Like Mondays.
Awesome City Club
ExWHYZ
Appare!
The Biscats
brainchild's
Rei
OKAMOTO'S
秋山黄色
Age Factory
トンボコープ
CYNHN × タイトル未定 × fishbowl
"WESSION FESTIVAL 2025"
岡崎体育
"FM802 MINAMI WHEEL 2025"
シド
SCANDAL
cinema staff
Cody・Lee(李)
コレサワ
ネクライトーキー×ポップしなないで
リュックと添い寝ごはん
eastern youth
hockrockb
Omoinotake
Kroi
PIGGS
清 竜人25
Plastic Tree
ぜんぶ君のせいだ。
LiSA
"TOKYO ISLAND 2025"
- 2025.10.14
-
ASIAN KUNG-FU GENERATION × ASH
ドミコ
THE ORAL CIGARETTES
Hump Back
Survive Said The Prophet × NEE
MONOEYES
ぜんぶ君のせいだ。
超☆社会的サンダル
go!go!vanillas
武瑠 × MAQIA
- 2025.10.15
-
ドミコ
LONGMAN
PEDRO
キュウソネコカミ
MONOEYES
打首獄門同好会
アカシック
HY × マカロニえんぴつ
ポルカドットスティングレイ
藤巻亮太
- 2025.10.16
-
ENTH × SPARK!!SOUND!!SHOW!!
YOASOBI
PEDRO
ASIAN KUNG-FU GENERATION × ASH
"Shimokitazawa SOUND CRUISING presents. サウクルラボ vol.1"
SCANDAL
SIX LOUNGE
brainchild's
- 2025.10.17
-
挫・人間
キュウソネコカミ
打首獄門同好会
アイナ・ジ・エンド
YOASOBI
a flood of circle
ズーカラデル
LONGMAN
chilldspot
otsumami feat.mikan
リュックと添い寝ごはん
コレサワ
神聖かまってちゃん
終活クラブ
NOMELON NOLEMON
ASIAN KUNG-FU GENERATION × ASH
フラワーカンパニーズ
SUPER BEAVER
東京スカパラダイスオーケストラ
BIGMAMA
Bimi
- 2025.10.18
-
TOKYOてふてふ
伊東歌詞太郎
挫・人間
シド
OKAMOTO'S
YONA YONA WEEKENDERS
ENTH × SPARK!!SOUND!!SHOW!!
アイナ・ジ・エンド
moon drop
RADWIMPS
キュウソネコカミ
ぜんぶ君のせいだ。
bokula.
the cabs
SWANKY DOGS
amazarashi
INORAN
WtB
osage
"LIVE AZUMA 2025"
カミナリグモ
Cody・Lee(李)
阿部真央
Newspeak
センチミリメンタル
東京スカパラダイスオーケストラ
Keishi Tanaka × 村松 拓
"ASAGIRI JAM'25"
ズーカラデル
I Don't Like Mondays.
Victoria(MÅNESKIN) ※振替公演
ロザリーナ
the paddles
神聖かまってちゃん
LACCO TOWER
星野源
- 2025.10.19
-
DYGL
リュックと添い寝ごはん
OKAMOTO'S
Age Factory
bokula.
ぜんぶ君のせいだ。
moon drop
コレサワ
TOKYOてふてふ
RADWIMPS
SIX LOUNGE
リリカル / みじんこらっく / とにもかくにも / ティプシーズ / 台所きっちん
SUPER BEAVER
Laura day romance
WtB
Omoinotake
"LIVE AZUMA 2025"
Cody・Lee(李)
ビレッジマンズストア
SPRISE
伊東歌詞太郎
浪漫革命
LUCKY TAPES
ハンブレッダーズ / KANA-BOON / キュウソネコカミ / マカロニえんぴつ ほか
ネクライトーキー×ポップしなないで
Keishi Tanaka × 村松 拓
ナナヲアカリ
"ASAGIRI JAM'25"
高岩 遼
Sou
森 翼
SCANDAL
パピプペポは難しい
osage
星野源
PIGGS
- 2025.10.20
-
打首獄門同好会
ASIAN KUNG-FU GENERATION × ASH
TOKYOてふてふ
TenTwenty
- 2025.10.21
-
The fin.
神聖かまってちゃん
ASIAN KUNG-FU GENERATION × ASH
RELEASE INFO
- 2025.10.08
- 2025.10.09
- 2025.10.10
- 2025.10.11
- 2025.10.12
- 2025.10.13
- 2025.10.14
- 2025.10.15
- 2025.10.17
- 2025.10.19
- 2025.10.22
- 2025.10.24
- 2025.10.26
- 2025.10.29
- 2025.10.30
- 2025.10.31
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
OASIS
Skream! 2025年09月号