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amazarashi

 

amazarashi

Writer 沖 さやこ

『amazarashi Live Tour 2016 世界分岐二〇一六』は、2012年11月にリリースされた『0.7』、2015年5月にリリースされたDVD盤『あまざらし 千分の一夜物語 スターライト』に続くライヴ映像作品である。この4年弱の間でamazarashiというバンドも、amazarashiにとってライヴが持つ意味も、大きく変わったと思う。その要因は、バンドの中心人物である秋田ひろむの変化が大きいだろう。自分のために自分の心情を吐き出すことが多かった彼が、2014年10月にリリースされた2ndフル・アルバム『夕日信仰ヒガシズム』で自分の生活について歌うようになる。彼の身の周りにいる人々や聴き手に対して伝えたい気持ちが詰まったものだった。
 
amazarashiは『夕日信仰ヒガシズム』の制作と並行して、小説"スターライト"の世界を音楽と映像と朗読で表現したアコースティック・ライヴ"千分の一夜物語 スターライト"を行う。過去曲を新しい解釈で表現することは、音楽家にとっても新たな刺激になっただろう。『夕日信仰ヒガシズム』と"スターライト"、このふたつは現在のamazarashiを語るうえで欠かせない、いわばターニング・ポイントではないだろうか。同年12月の"夕日信仰ヒガシズム"追加公演はその証明とも言うべき圧巻のライヴで、彼の歌声や紗幕の向こうにうっすらと見える立ち姿から、彼の笑顔が伝わってくるような感覚もあった。
 
今年2月にリリースされたアルバム『世界収束二一一六』は"100年後、世界はどうなるか?"ということをテーマに、最悪のケースを描いたものだという。自分の手の届く範囲の小さくも愛おしい世界と、地球全土という意味での世界、このふたつは当然のことながら同じ世界だ。『夕日信仰ヒガシズム』で自身の生活を歌った秋田にとっては、『世界収束二一一六』で描いていることも、根本的には同じことなのだと思う。TVのニュースに映る凄惨な世界は別次元の出来事ではない。100年後の世界がどうなるか――その行き先を決める分岐点に、今、我々人間は立っている。
 
『世界収束二一一六』リリース時に秋田にメール・インタビューをしたとき、"このアルバムは警鐘を鳴らしているのではないか"と問うた。それに対し彼は"大勢に音楽を届ける立場、とか意識しちゃうと重荷にしかならないので、僕は好き勝手に言いたいこと言ってるのがいいと思ってます"という回答をくれた。とは言っても、今の彼は大勢の人々に伝えたいことがあるからこそ、ギターを抱えて歌っていると思う。だからこそ、観客を前に演奏する"ライヴ"は、今のamazarashiにとって非常に意味の深いものなのだ。
 
2016年1月より8公演に渡り行われた全国ツアー"世界分岐二〇一六"のファイナル、中野サンプラザ公演は、秋田がこの日のために作ったストーリーの朗読とともに進行し、他にはないプレミアムな内容になった。ライヴで培ってきたバンドの演奏の表現力、"千分の一夜物語 スターライト"で得た方法論でもある朗読、楽曲とシンクロする映像でもって、2016年の彼が見ている現実世界を壮大に描く。『0.7』リリース時よりも確実に、amazarashiが今伝えたいことを映像チームが以前よりも深く理解していることに加え、バンド側にも映像とともに音楽を届けるという意志が感じられる。昔は壁として存在していた紗幕と映像が、amazarashiの表現の一部になったのだ。演奏するメンバーの上を包む大きな傘にゆっくり水滴が落ちる「雨男」、秋田の鬼気迫るポエトリー・リーディングを青色の照明とふわりと浮かぶ煙草の煙で演出した「しらふ」、動き回る格子に歌詞が1字ずつリアルタイムで映し出される「多数決」など、昔よりもシンプルな映像でありながらダイナミズムが格段に増している。すなわち、バンド側が強い芯のある音楽を鳴らせているから、映像で必要以上に武装する必要がないということだ。
 
そして"音楽×映像"に加わった"朗読"。これが随所に入ることで、amazarashiのメッセージがより物語として多角的に届けられるようになった。映像も朗読も、彼らの音楽のイメージをより豊かに伝えるものである。客席から自然と大きな歓声が湧くようになったのもここ2年強の話だ。バンドと観客のコミュニケーションの濃度は高まり続けている。
 
1本の美しい作品でありながら、amazarashiが今抱えている喜怒哀楽が克明に記された"世界分岐二〇一六"。終盤、秋田はMCでこう語っていた。"全国行ってライヴして、みんなにもメンバーにもスタッフのみなさんにも、きれいなものをいっぱいもらいました。また青森に帰って形にしたいと思います"――彼はこの時点で次の始まりを見つけている。この先いったいどんな音楽が生まれるのか、期待して待ちたい。
 


 

amazarashi
ライヴDVD&BD
『amazarashi Live Tour 2016 「世界分岐二〇一六」』
2016.06.22 ON SALE
[Sony Music Associated Records]
 
【初回生産限定盤】

[DVD] AIBL-9361 ¥4,900(税別)
amazon | TOWER RECORDS | HMV

[Blu-ray] AIXL-79 ¥5,600(税別)
amazon | TOWER RECORDS | HMV
※スリーブ、デジパック仕様、ブックレット封入、ステッカー、MUSIC VIDEO3曲入り
 
【通常盤】

[DVD] AIBL-9362 ¥4,300(税別)
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[Blu-ray] AIXL-80 ¥5,000(税別)
amazon | TOWER RECORDS | HMV
※初回仕様ステッカー封入
 
<収録楽曲>
"世界分岐二〇一六"at Nakano Sunplaza 2016.03.06
 
世界分岐二〇一六 episode1
 収束
 季節は次々死んでいく
 タクシードライバー
 性善説
 雨男
 
世界分岐二〇一六 episode2
 ラブソング
 スピードと摩擦
 コンビニ傘
 百年経ったら
 花は誰かの死体に咲く
 
世界分岐二〇一六 epidsode3
 夏を待っていました
 スターライト
 しらふ
 美しき思い出
 
世界分岐二〇一六 episode4
 多数決
 エンディングテーマ
 
世界分岐二〇一六 episode5
 ライフイズビューティフル
 
MUSIC VIDEO ※DVD&BD初回盤のみ封入
 多数決
 エンディングテーマ
 ライフイズビューティフル

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