Japanese
amazarashi
Writer 金子 厚武
今年3月に発表されたフル・アルバム『ボイコット』は、メジャー・デビューから10年を迎える、時代精神の中軸を担うようになったと言っても過言ではないamazarashiが、聴き手、作り手それぞれの人生を肯定し、新しい時代の始まりを告げる記念碑的な作品だった。"ボイコット"="拒絶"というテーマは、自らを縛る固定観念からの解放を意味し、amazarashiと同様にインターネット/SNSを介して世に出た、すべての同朋へと呼び掛けると同時に、様々な境遇で生きる人々に向けて、"君は君のままでいい"と訴え掛けた。"ネット発"と呼ばれる若手アーティストが多数台頭するなか、『ボイコット』こそが新時代の到来を確信に変える、非常に意味のある作品だったように思う。
しかし、アルバム・リリース日の3月11日と前後して、世の中のあり方は大きく変わってしまった。6月に弾き語りの映像が配信された「令和二年」で、"封切りの映画 新譜のツアー/中止の入学式 令和二年"と歌われているように、amazarashi自身も4月から始まる予定だったリリース・ツアー("amazarashi Live Tour 2020「ボイコット」")が延期となり、今も開催の目途は立っていない。東京オリンピックの開催とともに華々しく始まるはずだった"令和"という新時代は、かくも困難な始まりへとガラリと姿を変えてしまった。
ただ、amazarashiという名前はそもそも"日常に降りかかる悲しみや苦しみを雨に例え、僕らは雨曝だが「それでも」"という意味合いで付けられていて、12月に開催される初のオンライン・ライヴ"amazarashi Online Live 末法独唱 雨天決行"に対して、秋田は"やむにやまれぬ歌から始まったamazarashiの十周年を迎えるのが、やむにやまれぬライブであるのは必然なんだと感じています"とコメントしている。つまり、これまでもamazarashiは困難の多い現実に対して歌い続けてきたのであり、様々な社会の価値観が見直されている今、"拒絶"のメッセージはよりリアルに響くと言ってもいい。だからこその"令和二年、雨天決行"なのであり、本作は明確に『ボイコット』の延長線上にある作品だと言える。
もう少し『ボイコット』の話をさせてもらうと、アルバムの中には「マスクチルドレン」という非常に示唆的な楽曲が収録されていた。もちろん、この"マスク"はウイルスの感染を防ぐ目的のマスクではない。「マスクチルドレン」という曲は、マスクで表情を隠すことで、いつのまにか自分の本心すら隠しながら生きてきた"僕"の再生を描いた、アルバムの中でも随一と言っていい感動的な名曲だ。そして、マスクをして暮らすことが日常となった現在は、誰しも心の中に抱える生きづらさが、マスクというアイテムを通じて可視化されたような印象を受ける。テレビのニュースでよく見かける、マスクをした人々でごった返す通勤、通学の光景は、そのままボイコットの集会をイメージさせるかのようだ。
『令和二年、雨天決行』の1曲目は、前述した「令和二年」。"君の鼻歌 今日ばかりは この町の BGM みたい/頼りなさげなマスク越し"というラインでは、「マスクチルドレン」で歌われた"僕"の精神性が、世の中の通奏低音になってしまった現在を歌う。しかし、曲調は決してシリアスではなく、柔らかな四つ打ちとアコースティックなサウンドの組み合わせはむしろ晴れやかで、それが逆に現在の悲しみを引き立てつつ、同時に少しだけポジティヴなムードを生んでもいる。この両面性は、やはり音楽ならではの魅力だ。
ざらついたギター・サウンドで始まる「世界の解像度」も、明確に現在とのリンクを感じさせ、異例の事態となり、これまでぼんやりとしていた世界の、社会の解像度が上がるなかにあって、それぞれの生き方を問い掛ける1曲。ループするリズム・パターンは序盤こそ重い足取りを連想させるが、楽曲が進むにつれて、世界の解像度が上がるにつれて、徐々に激しく、疾走感を増していき、終盤でのカタルシスを生み出す。こうしたストーリー・テリングとアレンジの密着度は、『ボイコット』以降さらに研ぎ澄まされている。
ポスト・ロックとビート・ミュージックを横断するドラマチックなサウンドスケープに乗せて、ポエトリー・リーディングをする「太陽の羽化」に続いて、フォーキーに綴られる「馬鹿騒ぎはもう終わり」も非常に印象的。この曲を聴いて、僕はandymoriの「パーティーは終わった」という曲を思い出した。東日本大震災に見舞われた2011年の夏、"SUMMER SONIC"出演時に新曲として披露されたこの曲は、"パーティーは終わった"という一見後ろ向きな歌詞を、ポップなメロディに乗せて何度も繰り返すことによって、新たな始まりへと意味を転化させる魔法のような1曲。馬鹿騒ぎのあとにはそれぞれの人生が待っていることを歌う「馬鹿騒ぎはもう終わり」は、その時代背景も含めて、「パーティーは終わった」ととても近いフィーリングを持っているように思う。
ちなみに、元andymoriの小山田壮平(Vo/Gt)は今年ソロとしての1stアルバムを発表し、彼を慕う下の世代から大きな歓迎を受けたのが印象に残っているのだが、ともに00年代末にデビューした秋田ひろむと小山田壮平は、どちらもカウンターとしてのパンクとフォークをルーツに持ち、自身の活動姿勢を貫くことによって、後進に多大な影響を与えたという意味でよく似ている。青森と福岡、現在はそれぞれの地元を拠点としながら、時代の指針となり得る作品を発表する、このふたりの存在の大きさを強く感じた2020年でもあった。
『令和二年、雨天決行』のラストは、ポエトリー・リーディングで社会へのいら立ちや漠然とした不安を綴っていく「曇天」。秋田はラップこそしないものの、ヒップホップが国内外で表舞台に立っている時代感には確実に感化されていて、「曇天」でも韻を踏みながら言葉を転がし、そのドスの効いた声質も含め、どこかTHA BLUE HERBのよう。"「暑いからマスクはしなくたっていいさ」 不安なく言えるのはまだ先か その未来は"というラインは、THE BLUE HEARTSの名曲「未来は僕等の手の中」のオマージュである「未来は俺等の手の中」を連想させ、ここにもパンクとヒップホップを繋ぐカウンター精神が息づいている。そう、カウンターとは、拒絶とは、自分自身を貫くことに他ならない。
最後には"やるせない令和に この空こそふさわしい 騒がしい巷に雲行き怪しい暮らし"と、空模様と心模様を重ね合わせて作品を締めくくる(小山田壮平もよく使う手法だ)。"曇天の空に光が射しこむ"というような、希望的観測で終わっていないからこそ、秋田ひろむの言葉は信頼ができるし、"それでも"と心を奮い立たせることに繋がる。令和二年、雨天決行。僕らの手でもう一度、新しい時代を手繰り寄せる。
▼リリース情報
amazarashi
ニューEP
『令和二年、雨天決行』
2020.12.16 ON SALE
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【初回生産限定盤】(CD+DVD+ステッカーセット)
AICL-3990~2/¥2,800(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[CD]
1. 令和二年
2. 世界の解像度
3. 太陽の羽化
4. 馬鹿騒ぎはもう終わり
5. 曇天
6. 令和二年 acoustic version
7. 積み木 acoustic version
8. 東京 acoustic version
[DVD]
amazarashi LIVE selection 2012 ~ 2019
~「0.7」~
空っぽの空に潰される
カルマ
~「あまざらし 千分の一夜物語 スターライト」~
古いSF 映画
スターライト
~「amazarashi Live Tour 2016 世界分岐二〇一六」~
収束
季節は次々死んでいく
しらふ
~「amazarashi 360° LIVE「虚無病」」~
虚無病
僕が死のうと思ったのは
~「amazarashi LIVE「理論武装解除」」~
フィロソフィー
悲しみ一つも残さないで
~「amazarashi LIVE「朗読演奏実験空間『新言語秩序』」~
ワードプロセッサー
リビングデッド
独白
~「amazarashi Live Tour 2019 未来になれなかった全ての夜に」~
命にふさわしい
未来になれなかったあの夜に
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【通常盤】(CD)
AICL-3993/¥1,800(税別)
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[CD]
1. 令和二年
2. 世界の解像度
3. 太陽の羽化
4. 馬鹿騒ぎはもう終わり
5. 曇天
「令和二年」先行配信はこちら
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