Japanese
amazarashi
2017年09月号掲載
Member:秋田 ひろむ(Vo/Gt)
Interviewer:沖 さやこ
amazarashiは現在、自分たちの目指すものに向かって走り出し、加速している最中である。それはこの秋田ひろむのメール・インタビューの力強い回答の数々を読んでもらえれば容易にわかるはずだ。昨年10月にミニ・アルバム『虚無病』をリリースし、それを幕張メッセの360度ライヴで表現し大作を完成させたのも束の間、今年の2月にPS4ゲーム"NieR:Automata"とのコラボレーション・シングル『命にふさわしい』を、3月には新曲「ヒーロー」を含むベスト・アルバム『メッセージボトル』をリリース。その後はベスト・アルバムのリリース・ツアーを行った(※ファイナルは2017年10月19日の中野サンプラザ公演)。2017年、彼らは過去の集大成を築く一方で、感慨に耽るどころかどんどん前へ前へと進んでいる。今作『空に歌えば』はそんな彼らの姿が大いに反映されているのではないだろうか。今回のメール・インタビューでは、根本的なソングライティングの面はもちろん、『メッセージボトル』のリリース・ツアーや、タイアップ曲の書き下ろしに関して思うことなどの質問も投げ掛けた。それに対する彼の返答に、自分を曲げない強さや、自分を認める言葉が多かったところからも、"失意の濁流を抜けて 曇天から射す一条の光/その時、既にもう 雨は上がっていた"という「空に歌えば」の歌詞に現在の彼らが反映されていることを感じられるのではないだろうか。
-『虚無病』をリリースなさってから、幕張メッセでのワンマン"amazarashi LIVE 360°「虚無病」"や全国ツアー、『命にふさわしい』や『メッセージボトル』の新曲制作、リリースなどで精力的な活動をなさっていましたが、秋田さんにとってどんな期間になりましたか?
幕張メッセでのライヴ"虚無病"でひとつの物語が終わった感じがあって、その後のいろいろなライヴやリリースはまだ次に向けての制作過程という感じです。ベスト・アルバムも出して、タイアップなんかもあって恵まれたチャンスもあったんですが、amazarashiの新しい作品を出したぞ、という感覚ではまだありません。
-『メッセージボトル』のリリース・ツアーはどんなツアーになりましたか?
ツアーが始まる前は、集大成的なライヴにしようと思って、それ相応の準備もリハもしっかりしてたんですが、ずっと一緒にやっているサポート・メンバーの故障があって、精神的にも体力的にもとてもしんどいツアーになりました。今までで一番大変なツアーでした。僕と豊川(真奈美/Key)のアーティストとしての底力を試されていたような気がします。青森公演はやはり楽しかったです。ようやくamazarashiと僕の普段の生活が地続きだと実感できました。古い友達、音楽仲間、昔お世話になった先輩の顔を見て、amazarashiの形は必然なんだと確信しました。
-ベスト盤をリリースなさってそのツアーを回るということで、歴史を振り返る機会も多かったのではないかと思ったのですが、amazarashiというバンドの遍歴をご自身でどう見ていらっしゃいますか?
昔の曲ほど、気持ちは遠くなってる気がしました。でも根本は変わってないので、歌詞を見直しながら"自分が言いそうだな"と思います。変わるというよりは、初期のころが懐かしい思い出になりつつある感覚です。音楽的にはだいぶ成長したと思います。今回初めてのミュージシャンと短い準備期間でライヴをやる、という機会がいくつかあって、昔だったら無理だったろうなと思いました。
-『空に歌えば』の制作はいつごろ行われたのでしょうか?
曲自体の断片は去年くらいからあって、完成してなくていつか曲にしたいアイディアのストックの中のひとつでした。タイアップにあたって歌詞を書き直したり、展開を変えたりして完成させたのが今年の春くらいだと思います。
-「空に歌えば」はTVアニメ"僕のヒーローアカデミア"のオープニング・テーマです。秋田さんは公式コメントで、"僕らのようなバンドが少年漫画の王道的作品である『僕のヒーローアカデミア』の主題歌を歌えるのかと、はじめは戸惑いました"とおっしゃっていましたね。
単純に、"合うのかな?"と思いました。ジャンプの少年漫画のイメージとamazarashiはとても遠い気がしましたし。僕らでいいのかな、と思いながら曲を完成させて聴いてもらいました。でも、"僕のヒーローアカデミア"は熱い物語で、意外と男好きする漫画なんだなと思いながら、原作を一気に読んでしまいました。あと"努力と勝利"とか、"仲間"とか"戦う"とか、amazarashiがいつも歌ってることと近いなと。そもそもamazarashiが少年漫画的なのかもなって思ったりしました。
-これまでにamazarashiはドラマ、アニメ、ゲームのタイアップ曲を書き下ろしていらっしゃいますが、タイアップ曲の書き下ろしで大事にしていることとは?
まず自分の歌として成立してないと今後も歌えないので、それだけはちゃんと考えます。なので、その作品と自分との共通項を探すところから始めてます。amazarashiの歌だけどその作品の歌でもある、っていうのが理想です。それができてるかはわからないですが、少なくともamazarashiの歌であるというのは間違いないです。多少制約がある場合が作品によってあるんですけど、それを楽しめるほど器用じゃないです。タイアップに関してはありがたいけど、選んでもらえたらラッキーくらいの気持ちでいます。
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初期の楽曲が秋田ひろむ(Vo/Gt)個人の心情が反映されたものだとしたら、この4thフル・アルバムは、amazarashiの活動を精力的に続けている秋田の生活のすべてが反映されているのではなかろうか。どの曲も無理がなくナチュラルで、肩肘を張らないからこそのしなやかさや躍動感がある。彼の作る言葉やメロディを支えるアレンジメントも同様で、壮大というよりは"バンド"という集団、何よりも本メンバーである秋田と豊川真奈美(Key)の結束を感じるものが多い。メール・インタビューでも秋田は"世界の隅っこでこっそり音楽やってたいです。それで生きていけたら最高なのに"と語っていたが、彼が身の回りの出来事ひとつひとつを大事にしていることを言葉からも音からも感じられる。切なさや悲しみもあたたかく響く。(沖 さやこ)
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ソングライターの秋田ひろむ(Vo/Gt)はメール・インタビューで"タイアップ曲の書き下ろしでの制約を楽しめるほど器用じゃない"という旨の回答をしてくれたが、「空に歌えば」で彼が元来胸に持っていた純粋な情熱や力強さを恐れることなく突きつけることができたのは、TVアニメ"僕のヒーローアカデミア"のOP曲の書き下ろしだったからでは。がむしゃらに駆け抜けるギター・ロック×繊細なピアノとストリングスが作るスリリングなサウンドスケープは彼らの歴史を走馬灯のように見せる。熱量の高い秋田のヴォーカルが勢いよく飛び込んでくる曲の冒頭や、歌詞中の"蒼天"、"雨は上がっていた"という言葉にも表れているとおり、ここから新しい物語が始まることを予感させる。同時に今後新しい物語を切り拓く力を生む曲にもなりそうだ。(沖 さやこ)
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昨年10月15日に幕張メッセにて一夜限りのライヴとして開催された"amazarashi 360°LIVE「虚無病」"の映像化作品。ステージの360度を透過性LEDで囲み、タイポグラフィやアニメーションが映し出されたライヴは、秋田ひろむ(Vo/Gt)の書き下ろしによる小説の朗読と演奏とが交互に繰り返されるストーリー仕立てで進んでいく。これまでのamazarashiの楽曲を挟みながら、"虚無病"という架空の病に翻弄される人間たちの物語を描くライヴは、"人間らしい生き方とは何なのか?"という問いを受け手に強く投げかけてくる。小説、ライヴ、映像が三位一体となって作り上げた完璧なステージはamazarashi以外には作り上げることができないエンターテイメントだ。なお、今作には新たに小説の第6章が追加され、物語の本当のエンディングを読むことができる。(秦 理絵)
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秋田ひろむを中心としたamazarashiによる初めてのベスト・アルバム。CD2枚組/全26曲には、アップデートしながらも、言葉の力とメロディの美しさは断固として崩さずに活動してきた彼らの軌跡が表れている。そして、完全生産限定盤と初回生産限定盤は、秋田の地元・青森で"あまざらし"名義で活動していた時代にリリースされたミニ・アルバム『光、再考』を完全収録したCDと、"「メッセージボトル」Special Movies"と題されたDVDがセットになっている。さらに完全生産限定盤は、amazarashi詩全集やamazarashiの過去が綴られた小説"メッセージボトル"なども収められた、布張りの特殊パッケージ。総合芸術家と言えるamazarashiのベストに相応しい作品となっている。(高橋 美穂)
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ストリングスを編成に加え、すべての楽曲がアンプラグド・アレンジで秋田ひろむが書き下ろしたストーリーの朗読と共に行われた2014年のライヴ"千分の一夜物語 スターライト"以降、彼らの表現の幅は制作面でもライヴ面でも拡大し続けている。今作は同名の小説をもとに制作した楽曲と中島美嘉に提供した楽曲のセルフ・カバーを収録。全曲が小説ありき or 他者に提供した曲という普段のamazarashiとは異なる視点で制作されたこともあり、パズル的に言葉を組み合わせた歌詞が聴き手のイメージを刺激するTrack.4やヒップホップの手法を取り入れたTrack.5などもソングライティングが新鮮だ。すべての曲の向こう側に音楽を楽しむ秋田の姿を確かに感じられる。(沖 さやこ)
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秋田ひろむが世界へ抱く"失望"と"期待"を音楽に投じた1年4ヶ月ぶり、通算3枚目のフル・アルバム。メール・インタビューで彼は"僕は好き勝手に言いたいこと言ってるのがいいと思ってます"と回答しているが、今作は過去最高にメッセージ性が強い。リード・トラック「多数決」は広い世界へ警鐘を鳴らす意味合いも含み、柔らかなミディアム・ナンバー「ライフイズビューティフル」はいち個人の生活の喜びや尊さを歌う。今作はそれに加えて非常にドラマ性も高い。ファンタジーとリアリティが融合した物語性の高い歌詞や、ポエトリー・リーディングを用いるなど、曲ごとに情景を変えるサウンドスケープは聴き手のイメージに働きかける。聴き終えたときに彼と腹を割って対話をしたような感覚になるのは、筆者だけだろうか。(沖 さやこ)
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まさしく"スピードと摩擦"。緊迫感と感傷が交錯する巧みなアレンジは、秋田ひろむの綴る言葉をそのまま音像化したようだ。歌詞も序盤は普段我々が目にする情景を淡々と描くも、彼は徐々にとある"街"へとリスナーを誘う。この街とは秋田ひろむの見る現実世界だろうか。"夕景""焼ける""火花""焦がす"など、熱や火を彷彿とさせる言葉に"摩擦"という言葉が作用。そこに赤い"血"という言葉を重ねることで、痛烈なまでに"生"を描いている。生きにくい世の中で命をじりじりと焦がしながら、ときに逃避し、ときに戦う人の歌。生を求めていたamazarashiが、生と対峙した歌だ。流麗なメロディをフィーチャーした「風邪」、切々と"君"に語り掛ける「名前」、気魄溢れる表題の弾き語りver、すべて必聴である。(沖 さやこ)
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昨年12月の渋谷公会堂単独公演で"現在のamazarashiは過去の楽曲に新たな意味と輝きを持たせることができるようになった"と思ったのだが、そのきっかけになったのはこの作品の原案となった同年9月のアンプラグド・ライヴ"千分の一夜物語 スターライト"だったのだろうな、と今になって思う。初期曲をストリングスやグランド・ピアノを加えてリアレンジして、新たな輝きを放ったことがきっと、秋田ひろむにとってもamazarashiにとっても代え難い喜びだったのだろう。現にそれ以降のamazarashiはバンドとしてもエンタテインメントとしても非常にダイナミックで面白く、この先を考えると胸が躍る。音楽を楽しむ素直な気持ちや充実を如実に物語る、amazarashiの過去と今と未来を繋ぐ作品だ。(沖 さやこ)
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amazarashiは秋田ひろむの心情吐露とも言える、非常に私的な世界だった。だがステージの前の紗幕と映像でできた壁の先にいる観客たちに歌を歌い続けることで、ひとりぼっちだった彼のもとに他者が齎した優しさという光が浮かぶようになることは必然だった。その象徴がTrack.2「スターライト」。amazarashi始動前からある、銀河鉄道の夜がモチーフになっている楽曲である。このアルバムに収録された12曲は、彼のこれまでの人生で育まれた喜怒哀楽から生まれる物語であり、夢であり、願いだ。彼はずっと音楽でそれを表現したかったのかもしれない。そういう意味でもこの『夕日信仰ヒガシズム』は原点回帰であり、ひとつの大きな到達点。子供のころ寝る前に読んだ絵本のような胸の高鳴りと切なさ、ぬくもりに包まれる。(沖 さやこ)
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amazarashi初のビデオ・クリップ集。YKBXによるアニメーションならではの壮大なスペクタクルや、Perfumeやサカナクションの映像作品を手掛ける関和 亮や映画監督である寒竹ゆりによる肉体的な実写映像など、どのMVもamazarashiの音楽の世界を画という観点で美しく描き出す。MVはアルバムやシングルの初回盤に付属するDVDで出されるというパターンが主流となる今日に、ひとつの作品でリリースすることに大きな意味を感じさせる重厚感のある内容だ。特典映像として収録されるZepp DiverCityで開催された『あんたへ』のリリース・ツアー追加公演のライヴ映像も、紗幕の向こうにいるメンバーの手元などが撮影されており、音と同期する映像と照明の演出も含めて必見である。(沖 さやこ)
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前作『ねえママ あなたの言うとおり』から約7ヶ月というスパンでリリースされるミニ・アルバム。昨年リリースされたライヴDVD『0.7』にのみアコースティックで収録された「終わりと始まり」、初の長編ポエトリー・リーディング「冷凍睡眠」、彼の現在を歌ったというひりついたグルーヴの「匿名希望」、過去曲である「あんたへ」「ドブネズミ」など8曲を収録している。過去曲と現在の楽曲の親和性の高さからも、秋田ひろむが歌っている内容や根本は変わっていない。だが当時は自らに向けて歌っていたものが、"これからのあんたへ捧ぐ"というフレーズに象徴されるように、このアルバムでは明らかにリスナーに宛てて歌われている。RSRやイベント出演、楽曲提供などを経た、彼らの変化の第一歩を体感できる作品だ。(沖 さやこ)
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雪が解けて、冬から春になる瞬間をそのまま音にしたらきっとこうなんだろう――そんなことを思った。花びらが舞うように繊細に響くギターとキーボードが互いを支え、音が陽だまりのようにあたたかく、優しく広がる。時間の流れを鮮やかに取り込んだ音は、より言葉を映えさせる。秋田ひろむが綴るように、耳を塞ぎたくなるようなつらい現実はたくさんあり、内に塞ぎ込み、攻撃的になってしまうこともあるだろう。だが彼は同時に、喜びや幸せはすぐ足元に転がっていることも教えてくれる。amazarashiが発する両極端な感情の狭間で揺れる不安定さは生々しく、その人間臭さにどうしようもなく心を寄せてしまうのだ。ラストを飾る「パーフェクト・ライフ」は現時点でのその本質と言っても過言ではない。(沖 さやこ)
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