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INTERVIEW

Japanese

ラックライフ

2023年02月号掲載

ラックライフ

Member:PON(Vo/Gt)

Interviewer:藤坂 綾

あなたのおかげで、あなたのせいで、ここまで続いてしまっている


-思い浮かぶ大切な人たちがいたからまたできたと。

ほんまにそう。だからいい出会いをしてきたんだな、そういうためにやってるんやなって改めて実感したというか。歌で何かを伝えたいとか、元気になってほしいっていうのももちろんあるけど、結局俺がみんなに会いたいだけで、会いに行くための手段でしかないんやろうなと。でもそれってめっちゃええやんって思うし、それでええし、そのために歌うしって。会ってみてからじゃないと何も生まれないじゃないですか。歌いに行って、そこで何が生まれるか。だから会うことが第一歩やなって。だからまさにそうやって浮かんでしまう人たちと出会ってきたことが僕にとっての"しるし"やし、しんどいことがあっても繋ぎ止めてくれてた人ひとりひとりが僕にくれた"しるし"なんですよね......ってなんと素晴らしいまとめ(笑)!

-あはははは(笑)、ありがとうございます。「℃」についてもお話聞かせてください。

"ツルネ"は弓道の部活の話なんですけど、実はこれもあんまり考えていなくて。監督と打ち合わせをさせてもらったとき、スピード感がある感じにしたいって僕が言ったんです。そしたらそれはすごくいいとおっしゃったんです。

-監督からのオーダーはなかったんですか。

監督からは、"つながりの一射(ツルネ -つながりの一射-)"なので他者との"つながり"を歌にしてもらえたらということだったから、じゃあ僕にとっての"つながり"はなんだろうって。それを考えたらメンバー、事務所、レーベル、友達のバンド、先輩、後輩、そして何よりも僕らのライヴを観てくれてる人たち全部"つながり"なんですよ。ってことは何を歌っても"つながり"になるっていうことじゃないですか。

-はい。

ってことはもうなんでもええわと思いつつそこからじっくり考えていったら、前にラックライフで握手会をやらせてもらったときのことを思い出して。そんとき冬の屋外やったから、待ってる間にみんなちょっと冷えてしまってたんですよ。そしたら握手した人が"PONさん手ぇあったかいですね"って言うから"あんたの手ぇ冷たいな。あったかくして寝ぇや"って、そんなやりとりしたなって。そこから"つながり"、手を繋ぐ、握手みたいな連想ゲームをするうちにまたみんなのことを思い出したりしたんです。で、自分の手があったかいってことはひとりやとわかんないじゃないですか。人の手を握ったときに"あ、冷た"って感じるのと同時に自分の手は今あったかいんや、みたいな。自分のことを知るって結局誰かがいないとわかんないんですよね。人のことを見ていいなって思ったときとか、ダサいなって思ったときとか、それって全部自分に返ってきてて、自分らしさを知るきっかけになってるんですよ、そういう人とのつながり全部。同じ人なんておらへんから、俺とあなたは絶対違うから、あなたを知ることで自分を知ることになる、このぐるぐる回っていくエネルギーというか。そんなことを歌にしようと思ったのが「℃」です。

-なるほど。

僕めっちゃ体温高いんですけど、それって気づかないですよね。平熱って言うけど平熱って何? って感じじゃないですか。それを知らずに生きてて36度9分が平熱やと思ってたら、違ったっていう。

-それは高いです。

僕、高めなんです。ごはん食べたらすぐ熱が出るんですけど(笑)。

-あはははは(笑)、ごはん食べたら身体あったまりますよね。

で、すぐ眠くなるっていうね。そういうのも人によって違うじゃないですか。それがらしさやし、大事にしていきたいなって、だからこそ手を繋ぐんだよって。違うからこそ、一緒に頑張ろうって手を繋ぐのが素敵なんやなと。同じ気持ちなんてないんですよ、絶対。これは昔からずっと歌ってますけど、同じ気持ちになることなんかなくて、こうやってなんぼしゃべって、なんぼ文字にしたかて、僕の気持ちを100パーセント理解してもらえることはないと思ってるんです。だってそれは僕の気持ちやから。それくらい人と人は違うからこそ、ギュッとしたとき強いと思うんです。内容とか温度とか熱量とか背景とかいろんなものがみんな違うなかでグッと手と手を握る瞬間、繋がなくてもいいときの繋いだときのパワーっていうんですかね。

-というのは?

ライヴでもよく思うんですけど、音楽ってなくてもいいじゃないですか。音楽なくても生きていけるし、ライヴハウスなんて来なくてもいいし、人生に必要じゃない。だからそこにわざわざ来てくれることや俺らが歌いに行くことって、どっちもなくていいんですよ。このご時世、歌なんて歌わなくてもやっていける道はあるし、なんなら歌なんて歌わなくても生きていける、俺は。でも歌いたい、ライヴハウスで歌いたい、だから歌う。みんなもライヴハウスなんか行かんくてもいいけど、ライヴハウスで歌が聴きたい、PONの歌が聴きたい、だから行く。ここで繋いだ手ってめっちゃ強いと思うんですよ。

-あー、すごい、たしかにそうかもしれないです。

必要じゃないもの、なくてもいいものをお互いがギュッとしたときの強さ。そういう強さって僕はあると思うんですよね。でもそれってどっちかが離したら終わりで、俺歌うのやーめたって言ったら俺の歌は聴けんくなるし、ライヴ行くのやーめた、ラックライフ聴くのやーめたって言って手を離したら、僕らはその人に歌を届ける術がなくなる。お互い離したらパッとなくなる関係をギュッて握るからめっちゃ強いってことを、去年回った"TeToTeToTe"ツアー("ラックライフ Presents 2MAN TOUR 2022〜TeToTeToTe~")で改めて思ったけど、すごいよなって感動してしまって。だから、なるべく俺らは手を離さないようにするから、あなたも離さないでいてくださいって、そういう気持ちですよね。

-そうやって握った手って、何にも変えられないですよね。

そうなんですよ。だって別に必要ないんです。なんとなくYouTubeで満足できたりもするじゃないですか。サブスク聴いたらそれでいいし、高い金払ってライヴハウスに行くこともないし。

-だからもう奇跡ですよね、その握った手は。

そう、ほんまにそう。わざわざライヴハウスに来てくれるってすごいエネルギー使うと思うんですよ。言ってみれば、アニメの主題歌聴いてライヴハウス行こうって思ったことないじゃないですか。

-私はないです。

僕もないんですよ。アニメから調べてYouTubeに飛ぶのはまだありとしましょう。そこからさらにSNS、HPに飛んで、"近所のライヴハウス来るやん。意外とキャパ小さいしチケットもこんなもんか。ほな行こか"ってなるエネルギーってエグないですか?

-はい。すごいと思います。

まじですごいですよ。だからほんとに感謝してます。音楽を見つけてくれて、掘り起こしてくれて、引っ張り上げてくれたのは間違いなくそこにいてくれる人やから、それはやっぱり大事にしたいし、そういう人に向けて歌いたいと思うんですよ。

-そういう人たちに歌った2曲であり、そこから次のツアーが"Because of you(ラックライフ Presents TOUR 2023 「Because of you」)"というタイトルで、今のお話を聞いて改めてラックライフらしいなと思いました。

"Because of you"、もうほんまに"あなたのおかげで"ですよ。でもこれ"あなたのせいで"っていう意味もあって、そう思われても全然いいし、ほんまそうやもんなって(笑)。だから発表するときのMCでも"あなたのおかげですっていう想いで付けたけど、半分はあなたのせいで続けてます"って言いました。僕がやめたいって思ったときにあなたたちが頭によぎったせいで、みたいな。今まで15年やっててめっちゃいろいろあったし、人のライヴ観て、俺なんかじゃ無理なんじゃないかって何度も思ったし、それでも好きって言ってくれる人の顔が浮かぶんですよ。また来いよって言ってくれたライヴハウスとか、また一緒にやろうなって言ってくれた先輩とか、そういうのをひとつひとつ思い出して、やめてたほうがストレートな人生に戻れたやろなって(笑)。僕、たぶん歌を歌わんでも生きていけると思うんですよ。歌とか音楽以外のところでもサラリーマンとか普通に仕事して生きていける。そういう生き方でもしあわせになれると思うけど、歌うほうがしあわせだって思うから歌ってるんです。このバランスが崩れたら俺はきっとやめるし、これが15年間も続いてるっていうのはやっぱりみんながいてくれるからこそで、あなたのおかげで、あなたのせいで、ここまで続いてしまっているっていう感じなんです。

-"あなたのせいで"も愛があるからこそ素敵な言葉になりますね。

だからお互いに思っていたいんですよ。あなたが歌ってくれるせいでって思ってくれたら最高やし、そういう軽口を叩き合っていたいというか、照れ隠ししながら、でもまっすぐの関係でありたいなって思いますね。

-素敵な関係だし、ファンの方も思ってると思います。

そうだと嬉しい。あいつも頑張ってるんだなって思いながら日々を生きてくれたら最高やし、日常で俺らの顔が浮かぶとか、俺らの音楽が流れるってことがあればそれは俺らにとって最高にしあわせなことやから、これからもそういうふうに聴いてくれる人の人生に片足突っ込んで生きていきたいですね。