Japanese
ラックライフ
Skream! マガジン 2020年03月号掲載
2020.01.25 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 蜂須賀 ちなみ Photo by 佐藤祐介
※以下のテキストでは一部演奏曲のタイトルを表記しております。ご了承のうえ、お読みください。
"旗を掲げろ"と題した再出発ツアーの初日公演。ラックライフは昨年夏に事務所を移籍した。その際、バンドを続けるか否かというレベルまで掘り下げて自分たちの将来を考えたという。結果、考えうる中で最もチャレンジングな選択を採ることになったそうだが、諸々のリスクよりも"誰と一緒に音楽を作りたいか"を優先したところにこのバンドの性格が表れているように思う。
昨年12月に発売したミニ・アルバム『Unbreakable』は葛藤を経たバンドの覚悟が詰まった作品だった。そんなアルバムに伴って開催されたツアーはバンドにとって重要な意味を持つ。1曲目から気合が漲り、まるでクライマックスのようだったのはそのためだろう。ゆえに若干の固さもあったが、自らの曲に背を押される形でバンドのサウンドが色づき始める。ステージ上の緊張感が解けていく。メンバーはアイコンタクトを取りながら時折オカズ的なフレーズを挟み、音楽の上で戯れ合っている。ikoma(Gt/Cho)のソロの裏でたく(Ba)のウォーキング・ベースが冴えわたるなど、聴いているこちらも楽しくなる場面が続出。音自体が開放的になってくると、PON(Vo/Gt)が身振り手振りを交えながら歌ったり、ikomaが楽器を掲げてかき鳴らしたり、LOVE大石(Dr)がスティックを高く投げてみせたりと、身体的なアクションも増えてきた。
PONが"みんなで歌ったら素敵になるなって思って作った"と言っていた「理想像」をはじめ、『Unbreakable』の曲には観客がシンガロングできるパートが設けられている曲が多い。この日メンバーは"折れなかったのはあなた(ファン)のおかげ"という趣旨のことを何度も語っていたが、だからこそ、あのアルバムにはライヴハウスの光景をイメージして作った曲が多いのかもしれない。「けんけんぱ」では、イントロのキメに合わせて手拍子&声出しする"パンパパンゲーム"なるものも実施。テンポが変化する仕様で何気に難易度が高く、真面目に取り組む観客の姿が可笑しく愛おしく感じられたのか、PONは思わず笑い出してしまっていた。
一方、バンドが音を止めヴォーカルのみになるアレンジを施した曲が多く、大事なことは正面切って伝えようというバンドの意志も読み取れた。今の自分たちにとっては、上手に演奏することよりも"あなたに届ける"ことが大事なのだ、と語るPON。不意に剥き出しになる歌声はどの瞬間でも芯が太く、ビリビリとした気迫を纏っている。
"自分たちは無理なんじゃないかと思う瞬間は今まで何度もありました。でもそういう瞬間に出くわすたびに俺はライヴハウスでのこの景色を思い出したよ。あなたが思うよりずっと、俺らはあなたに支えられてます。あなたが思うよりずっと、俺らはあなたに救われています"
終盤には、閉店したホームのライヴハウス 高槻RASPBERRYへの想いを語るMCもあったが、今度は代わりに自分たちがヒーローになるのだ、責任を持って"大丈夫"と叫ぶ役割を担うのだ、という覚悟が今の彼らを駆り立てているのではないだろうか。この日のライヴでは『Unbreakable』の曲がこの上ない説得力でもって鳴らされていただけでなく、過去に発表した曲の強度がさらに増したことも証明されていた。それは、彼らの12年間が、これまで都度都度選んできた道が、間違っていなかったという証でもある。自分たちにとって大切なもの、自分たちのすべきことをひとつずつ確かめ、初のホール・ワンマン、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演へと向かうこのツアー。きっとバンドにとってかけがえのないものになるはずだ。
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