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LIVE REPORT

Japanese

ラックライフ

2014.11.22 @TSUTAYA O-Crest

Writer 蜂須賀 ちなみ

PON(Vo/Gt)は自分たちとファンとの関係について"切ったら切れる仲"と言っていた。確かにその通りで、コミュニケーションをとることをやめれば人と人との関係が途切れるのと同じように、音楽の発信と受信がなくなればバンドとオーディエンスとの関係だって簡単に途切れてしまう。でも、だからこそ彼らは、今自分たちの音楽を求めてこの場所へ集まっている人たちのことを大切に思っている。だから全身全霊で演奏をする。彼らにとってライヴとは、オーディエンスとの繋がりを確かめ、より一層堅くするための場所だ。


4thアルバム『正しい僕の作り方。』を引っ提げた東名阪ツアーの東京・渋谷TSUTAYA O-Crest公演、ラックライフpresents"正しい僕の作り方。~GOOD LUCK vol.30~"。SEが流れると、誰もいないステージを照らす真っ白な光に迎えられる形でイコマ(Gt/Cho)、たく(Ba)、LOVE大石(Dr)、そしてグッズのタオルを掲げたPON(Vo/Gt)が登場。大石のドラム・セットを中心にメンバーが集まり4つの拳を合わせてから各々の立ち位置に戻り、演奏を始める。1曲目は「君のこと」。時間をたっぷりと使いながら、エレキ・ギターの弾き語りでPONが冒頭を唄い終えると、彼のカッティングを合図にして、フロアからはハンド・クラップが発生。そして一気に4人の音が溢れ出す。"明るい僕たちの夢を見よう♪ 夢を見ようぜー!""嘘なんてついた事ないってゆう嘘♪ 嘘は唄わないタイプです!"など、曲上の歌詞をはみ出しながら、たくさん言葉を詰めていくPON。"大阪、高槻から来ましたラックライフです。ワンマン・ライヴ始めます、てか始まってますから!イェーイ!"とそのまま「フールズ」に突入すれば、バンドの演奏は一気にアグレッシヴに。頭を振り乱したり何度もステージ前方へ踏み出したりしながら演奏するイコマとたく。大石も全身で振りかぶるような形で楽器を叩いている。続く「雨空」のあとに軽めのMCを挟んですぐに演奏は再開。「ハートイズ」「未来」と曲数を重ねるごとにさらにアンサンブルは加熱していく。まるで自分の一部を切り取ったかのような楽曲が並んでいるという『正しい僕の作り方。』。その楽曲を、そこに詰まっているこれまでの自分の生き様をまざまざと表現するように、激しく、熱く。一方、「僕と月の話」や「くじら雲」といったバラード曲では雰囲気は一転、少ない音数の中で丁寧な演奏を重ねていく。オーディエンスひとりひとりの目を見ながらアンサンブルを紡いでいく4人。じんわり沁み込むような温かい音。PON曰くラックライフの楽曲は"AメロでもBメロでも躓いていて、サビでもまだ挫けていて、大サビでやっと光が射してくるものばかり"だが、楽曲自身にそういう飾らない魅力があるからこそライヴで披露されれば聴き手ひとりひとりに寄り添ってくれるような、とても優しい音楽になっていく。


演奏に集中力を費やした反動なのかMCは終始和やかな雰囲気で、こういう人懐っこさもまた彼らの魅力のひとつだろう。あるときは突発的にラップ合戦が始まったり、あるときはPONとたくによる愛猫自慢が繰り広げられたり、というMCタイム(こういうときにゆる~くツッコミを入れるのは決まってイコマの役目である)を挟みつつ、あっという間にライヴは終盤に。「タイムライト」「Link」など、バンドの衝動をそのまま剥き出しにした状態で次々とオーディエンスの元へ届けられていく。CD音源よりも、というよりかは今までのライヴの中でも圧倒的に生々しい音とパフォーマンス。ひとつひとつの出会いが自分を構成していると語るアルバム『正しい僕の作り方。』を作ったバンドだからこそ、人に何かを伝えるには莫大なエネルギーが必要だということを知っている。だからPONはその透き通った声を濁らせながら叫ぶように唄い、それを支えるバンドのサウンドも天井知らずに熱量を上げていくのだった。特に「ハルカヒカリ」の終盤で4人+オーディエンスが合唱をしていた箇所、そして本編ラストの「plain」で、会場がひとつになっていく様子はとても感動的だった。鳴りやまない拍手に応えてアンコールに登場すると、「ローグ」を演奏。そしてダブルアンコールの「story」でライヴは終了した。


"音楽には世界を変える力があると信じてて。いきなり世界を変えることはできないかもしれないけど、ひとりひとりの世界は変えられる。あなたの明日からが明るくなったりして、そうやってひとりひとりの世界が変わることで、最終的に世界が変わると思ってます。なので、今日はあなたの世界を変えます"というPONの言葉が印象に残った。世界を変えるなんてそう簡単ではないことを知っているからこそ、そしてそれが不可能ではないということを信じているからこそ、彼らは演奏のなかにありったけの想いを込め続ける。そんな意識があり続ける限り、ラックライフというバンドはどんどん逞しくなっていくだろう。

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