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INTERVIEW

Japanese

 

鶴

Member:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ウキウキベース) 笠井“どん”快樹(ドラム)

Interviewer:秦 理絵

-鶴が面白いのは、秋野さんを中心に、メンバーも全員が作詞作曲を手掛けてるのに、その整合性がとれていることだと思うんですよね。

神田:それは同級生で17年間やってきたからですよね。

秋野:なんとなくメンバーも今はこんなテンションだろうなっていうのはわかるから。

笠井:逆に、いつかコンセプトを決めたアルバムを作ってみたいけどね。

神田:タイトルは、"コンセプト"で(笑)。

-(笑)"鶴フェス"を終えた状態のレコーディングは、これまでとの違いはありましたか?

秋野:神田君が、最近ちょこちょこ言うけど、脳みそが柔らかくなったんですよ。

神田:キャパが広がった感じですよね。キャパが狭い頑固者って、ちょっと面倒くさいじゃないですか。でも、1個芯があることも大事だと思うんですよ。その両方を持つことで、みんなの感覚を理解できるから、今回はかなり新しいことをやれましたね。

神田:"鶴フェス"をやったっていう新しい経験値で広がったのもあると思うし、あと、単純に年齢的なところ、人生の経験値が上がってきたのもあると思うし。音楽はそういうのが増えれば増えるほど、面白いことになると思うんですよ。30代って、体力と脳みそのバランスが入れ替わる交差点じゃないですか。この先、体力はどんどん落ちていくけど、脳は発達していく。そういう意味で柔らかい脳で作れたと思います。

-秋野さんは、どうですか?

秋野:自信はありましたよね。作品を作るときって、常に"どこまでやっていいのかな?"とか、"これは喜んでもらえるかな?"っていうのが、脳みその片隅にはあるので。でも、今回は"ここまでやっちゃっても大丈夫だ"って思えた。それは、"鶴フェス"とか、全県を何周もすることで、鶴のことを好きでいてくれる人との間に信頼関係ができているってことを、確信に変えることができたからだと思うんです。それで、今回は無制限なんですよ。"打ち込みっぽい曲を作ろう"って思ったら、"やっちゃおう!"って言えるような雰囲気になってるんです。

-ん? 打ち込みっぽい曲っていうと......。

秋野:実際にそういう曲はないんですけどね。

-ですよね(笑)。そういう意味では、「36.1℃」とかは、生の演奏をマシーンでループするサウンド・アプローチを取り入れてますよね? 新しいなと思ました。

神田:あれは一緒にやってる松本ジュン君のアイディアですね。"こういうのがあるんだけど"って教えてもらって、"面白い! やろう"っていう感じで。

秋野:何をやっても鶴になっちゃうし、ライヴもなんとかなるでしょっていう感じなんで。

神田:あとはジュン君への信頼感もあるよね。

笠井:やっぱり年下のアイディアって刺激的で面白いんです。今回はシンプルにやってみたいなと思ったことを、ブレーキかけずにやっちゃいましたね。

-中でも、一切ブレーキをかけずに突っ走ってるのは、神田さんが手掛けた「Waiting Mother」。テンポ・チェンジはあるし、演奏も歪みまくってるなかで、"お父さん、お母さん、大好き!"って(笑)。カオスでした。

神田:あはは(笑)。あれは大人が脳みそだけ子供になって遊んだ感じですよね。人生2曲目の作品なんですけど。"ちょっと古めのAEROSMITHをやりたい"って言ったんですよ。

笠井:結果的にそうなったとは思えないですけど(笑)。

神田:もともと"Waiting Mother"っていう言葉は決まってたんです。そのフレーズから広がっていったんですけど。これを考えるときに、俺のiPhoneから、シャッフルでAEROSMITHが流れてきたんですよ。で、"これだ!"と思って、"Hey Siri"で録音して。

笠井:(神田の"Hey Siri"に、笠井のiPhoneが反応)うわ、こっちが反応したよ!

一同:あははははは(笑)!

-(笑)これ、この曲調なのに、お母さんへの感謝の曲ですよね?

神田:ジャンルとしては、海援隊の「母に捧げるバラード」と同じタイプの曲です(笑)。

笠井:今まで、こういう曲で母に捧げた人はいないですよ。

神田:うちの母親に、"どう?"って聞かせたら、ふふ......とだけ。言葉はなかったですね。

-(笑)世界観を振り切ってるという意味では、「冬の魔物」も素敵でした。「夏の魔物」(2008年リリースのシングル表題曲)の続編的なウィンター・ソングという感じで。

神田:"魔物"4部作の第2弾です。

秋野:「夏の魔物」は、2008年の夏だから、12年越しですよ。

笠井:次は12年後です。

神田:干支が1周してるよ。

秋野:GUNS N' ROSESの新作ぐらいのスパンですね(笑)。

-なぜ、このタイミングでシリーズ続編を作ろうと思ったんですか?

神田:これは、もともと地元埼玉の(ラジオ局)NACK5の番組のための冬のキャンペーン・ソングを依頼されて書いたんです。THE冬というよりは、ウィンター・アロハのイメージ。"バカンスっぽい感じがいいです"って言われて、書き始めたんです。全部書き終えたあとに、タイトルどうしようかなぁ? っていうので、ふざけて、仮タイトルで"冬の魔物"って付けたんですよ。そしたら、それ以外出てこなくなっちゃって。

-続編になったのは後付けだったんですね。

秋野:「夏の魔物」は、夏が持つ独特の空気感にやられてしまう胸キュンを書いたけど、これも、冬独特の胸キュンを書けたし。面白いから、"これでいっか"って感じですね。

笠井:今回のアルバムは新しさも詰め込んだんですけど、この「冬の魔物」みたいに、なんて言うんですかね......原点に戻るというか。いろいろな時期を経て、鶴が持ち合わせていたポップでキラキラとした部分も出てきてるのかなって思いますね。

-ええ、楽曲の幅が本当に広いなと思いました。

秋野:だから、13曲ってボリュームは多めなんですけど、聴いてみると、あっと言う間に終わる感じがするんですよ。1曲ずつはコンパクトにまとまってて、それがすごく新鮮で。「What's Up Myself」とかも感動的な後味なんですけど、実は3分ぐらいなんです。年々、曲の長さは短くなってて。最短で最高地点に持っていく術を身につけたのかなと思いますね。でも、無駄に長くやるのもかっこ良くて好きだから、「結局そういうことでした」は、エンディング長くない? みたいな感じなんですけど。

笠井:「歩く this way」もエンディングが長いよね。