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INTERVIEW

Japanese

amazarashi

2017年12月号掲載

amazarashi

Member:秋田 ひろむ(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-1曲目からバンド・サウンドのオケとポエトリー・リーディングだったので意外性とインパクトがありました。「ワードプロセッサー」は"サバービアのメメント・モリ"という言葉も入っていますが、オープナーの役割を想定して作られた楽曲なのでしょうか。

始めはライヴの1曲目をイメージしてました。自己紹介的な曲というのもあって。でも勢いもあるし、かっこいいからアルバムも1曲目でいいかって決めました。ポエトリー・リーディング曲はインタールード的なものを想定して、いつも最後の最後に作るんですけど、今回はタイトルが決まってから作ったので、アルバムの意味合いを引き締めるタイプの曲になったと思います。

-"サバービア"は軽蔑的な言葉だと聞きましたが、なぜこの言葉を用いたのでしょうか。

GREEN DAYの「Jesus Of Suburbia」っていう曲があって、郊外の鬱屈とかをテーマにした曲だと思うんですが、そこから"地方都市"っていう切り取り方もあるかってヒントを貰いました。MVもかっこいいです。

-"歌うなと言われた歌を歌う"という言葉はかなりシンボリックでした。amazarashiがそういうバンドだったようにも思います。もしそういう意味を含んでいる場合、なぜ秋田さんはそれを続けてこれたのでしょう。

自信があったからだと思います。この曲は絶対かっこいい、みたいな。でも同時に万人に好かれるとは思ってなかったので、あまりいい反応がない場合は耐えて続けるしかないのかなぁと思います。辞めたらあとがないっていうのも大きかったかもしれません。

-「空洞空洞」はアレンジも相まってこれまでにない雰囲気の倦怠感がある曲だと思いました。厭世観もありつつ、ポジティヴな側面もあるという不安定さにリアリティも感じます。

なんか本当にやる気がなくなって空しくなってしまう時期がたまにあって、そういうときに作りました。いつも空しさをテーマにした曲も生真面目に作ってしまうんですけど、今回はできるだけ不真面目に作ろうと思いました。でも今聴くとまだ真面目だなぁと思います。

-「水槽」は切迫感もありました。"エアーポンプの電源"のくだりなど、様々な受け取り方ができます。

このポエトリー・リーディング曲も最後の最後に作ったんですけど、青森の1日の情景を切り取った曲です。息苦しい場所なんだけど、そこにずっといる人には息苦しさすらわからない、みたいなちょっと皮肉の部分もあるんですけど、だからといって好きとか嫌いとかじゃなく、淡々と切り取ることを意識して作りました。


歌詞も音楽も比喩の連続だし、だからこそ楽しい


-秋田さんは前回のインタビューで"音楽はあくまでやりたいことをやるのが目的なので、人を救いたいとか、たくさんの人に認められたいとかは二の次"とおっしゃっていましたが、聴き手がどう受け取るかは聴き手に任せているところもありますか?

はい。解釈は聴く人の自由だと思います。あまりに逆方向に捻じ曲げられるとつらいところもありますけど。例えば明確なメッセージ・ソングとかだと。でも歌詞も音楽も比喩の連続だし、だからこそ楽しいと思うので、人によって受け取り方が違うのはしょうがない部分もあります。

-「ハルキオンザロード」からアルバムのカラーが変わる印象もありました。この曲や「バケモノ」、「ぼくら対せかい」と夏の描写のある曲も多いですが、意図的なものでしょうか。amazarashiには「夏を待っていました」(2010年リリースのメジャー1st EP『爆弾の作り方』収録曲)など、夏の曲も多い印象があります。

夏の描写が多いのはあまり意識してませんでした。ちょうど夏ごろ作った曲たちかもしれません。最近は夏が好きですね。思ったんですけど今年って日照時間が異様に少ないですよね? なんかそういうのも曲作りに反映されてる気がします。このアルバムの雰囲気もちょっと曇りっぽい気がします。

-amazarashiの楽曲には季節をモチーフにした曲や、季節を用いた曲が多いとも思います。

歌詞を書き始めるときに、情景描写から始めることが多いからかもしれません。時間と場所をはっきりさせたいっていう手癖みたいなものかもしれないです。

-「ハルキオンザロード」と「悲しみ一つも残さないで」には"夢"という言葉が出てきます。「たられば」も"叶わなかった夢"を歌っていらっしゃいましたが、いまamazarashiが"夢"を歌うことにはどんな理由がありますか?

ひょっとしたら"夢"は僕にとっては過ぎ去ったものかもしれません。人生においては重要なものですし。特に10代20代はそれがすべてと言っても言いすぎじゃないくらいに。いまそれを歌うことは自然なことのような気がします。僕の場合、懐かしさを持ってですけど。

-「バケモノ」には"嘘"という言葉が出てきます。この言葉もamazarashiの曲にはよく使われると思います。

この曲は"どうせみんな嘘をついて生きてるんだから"っていう結末なんですが、僕自身もそう思ってます。騙すことも騙されることもそんなに悪いことではないと思います。人を傷つけなければ。

-「リタ」はひとつひとつの言葉が丁寧に響く曲だと感じました。実際に"君"のような方がいらっしゃったのでしょうか。

そうですね、実際の失恋をもとに作りました。僕は自分勝手に音楽ばっかりやってきたので、大抵こういう失恋の仕方でした。

-この曲は"笑う"と"泣く"という行為がとてもあたたかい意味で描かれていると感じました。

あまり泣いたりしなそうな、笑顔のイメージしかない人が泣くとびっくりしますよね。そういうイメージで書きました。

-「ぼくら対せかい」は幻想的で彷徨うような感覚があり、だけど確固たる意志がある曲だとも感じました。

上でも書いた"このアルバムは生活者の賛歌にしたい"っていうのもあってこの曲を作りました。きっかけは青森のライヴで古い友人と再会したり、高校時代の友達と話したりしたことなんですけど、昔も今もみんな戦ってて、もちろん僕もそうですけど。世界と戦ってるのは変わらないんですけど、世界の意味合いは確実に変わってて、そういうことを歌にしたかったんです。学生時代は対大人だったり思春期の憤りだったり、今は生活を守るためであったり、対社会だったり、そういう戦ってる人たちの歌です。

-"世界"も長きに渡りamazarashiの楽曲のキーワードでもあると思います。いろんな世界を描いてきた秋田さんですが、いまのご自分を構成する"世界"や、今後進んでいきたい、また、広げていきたい世界はありますか?

どうなんでしょうか。あまり世界を広げたいとは思ってないです。世界の隅っこでこっそり音楽やってたいです。それで生きていけたら最高なのになって思ってます。

-歌詞や、ヴォーカルを引き立てるアレンジや、心に迫ってくるサウンドスケープも『地方都市のメメント・モリ』の特徴だと思います。リリース・ツアーもいいものになりそうですね。

今回のアルバムはライヴ映えしそうな曲が多いので今から楽しみです。今は弾き語りライヴ(※12月6日、7日に舞浜アンフィシアターで開催する"amazarashi 秋田ひろむ 引き語りライブ「理論武装解除」")の準備中で、ひとりでやってるんですけど、やっぱり寂しいので、ツアーはまたメンバーみんなでわいわいやりたくてしょうがありません。