Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

ハルカトミユキ

2015年12月号掲載

ハルカトミユキ

Member:ハルカ(Vo/Gt) ミユキ(Key/Cho)

Interviewer:金子 厚武

-トランス状態だったんだろうね(笑)。でも、ハルカさんがそうやってフィジカルに解放されて行ってるぶん、ミユキさんはちゃんと音で自分を表現しようとしているように感じました。

ミユキ:そこがまさに今の課題です。ハルカは感情むき出しで暴れてもらっていいんです。でもだからこそ、私はちゃんとお客さんを見て、一緒に楽しめる場を作る立場になりたいなって思ってます。ハルカは走り回ってすごかったから、あれでいいんです(笑)。

-ハルカさんは当日のことってどれくらい記憶してるんですか?

ハルカ:記憶して......あんまりしてない(笑)。

ミユキ:ちょうど前の週にエレファントカシマシさんの野音を観に行かせていただいて、その影響も大きかったのかなって。

ハルカ:実は、さいたまスーパーアリーナでのライヴも観させてもらってて、これは絶対目撃せねばならんと思って、野音を襲撃しました(笑)。宮本(浩次/Vo/Gt)さんはステージを走り回るどころか、スピーカーの裏とか、"そこって行けるの?"みたいなところまで行ったりしてて(笑)、野音のステージは無限の広さだなって思いました。

-あとで冷静になって野音での自分を振り返ったときは、どんなことを思いましたか?

ハルカ:ダイジェスト映像を観たときに、とにかく自分が一生懸命で、気合いが入ってるし、興奮してるのもわかるんだけど、結構めちゃくちゃだった(笑)。緊張と緩和のバランスがグチャグチャで、必死ではあるんだけどコントロールできてないなって。なので、"もっとちゃんと歌え!"って思うところなんですけど、必死に伝えようとしてた感じがあったのは自分でも嬉しかったし、良かったと思いました。

-歌い方は昔よりもすごくエモーショナルになってて、それもやっぱりフィジカルに解放されていったからなのかなって。

ハルカ:でも、宮本さんってあんなに暴れても歌すごいじゃないですか? 走り回って、ギャーって叫んだあとに、すごく上手く歌うから、あれはもうバケモノだなって(笑)。感情が高ぶってるからといって、グチャグチャにはならない。あれはひとつの目標というか、ああいうライヴをできるようになりたいと思いましたね。

-じゃあ、来年は金髪ショートから黒髪ロングにして、白シャツにしないとね(笑)。

ミユキ:暴れすぎて蹴ったりとかしないでね(笑)。

-ミユキさんは当日の映像を振り返って、どう思いましたか?

ミユキ:正直、演奏ヤバいな(笑)って。あとは当日ステージに立ってるとわからなかったプロジェクションマッピングとか、フリー・ライヴで、あんなに素敵なライヴを作ってくれたスタッフへの感謝の気持ちが改めて湧いて、来年の野音は今年よりもっと成長して絶対成功させたいと思いました。あの日が"はじめまして"だった人には、私が変わろうとしてることなんて関係ないじゃないですか。もっともっと頑張らないとなって思いました。

-野音のライヴのタイトルは"ひとり×3000"で、"孤独を肯定する"という側面があったように思います。ハルカトミユキのライヴの在り方という意味では、どんなことを思いましたか?

ハルカ:私たちの音楽の成り立ち自体、マスに向けたものじゃないじゃないですか。やっぱり1対1というか、"私からあなた"がたくさん集まるというか、そういう関係性で伝える歌詞でありメロディだなって思ってるんですよね。10万人のうちの3,000人じゃなくて、ひとりひとりを重ねていっての3,000人。伝え方はあくまで1対1でしかないんだけど、それがどんどん積み重なって10万人に辿り着くかもしれない。それが私たちのやり方なんだって。歌もライヴもそういうふうに拡がっていけたら嬉しいです。

-今年1年のいろんな取材を振り返ると、"同調圧力"や"全体主義"について話すことが多かったんですね。今はフェスの現場でもSNSの中でも"繋がる"っていうことが重要視されているけど、ひとりでいることもすごく重要で、それは自分らしくあれるっていうことだと思う。たぶん、ふたりとも学生時代は同調圧力を強く感じていて、そこに抗う曲を作ってきてたと思うんですけど、今こそそういう曲が必要だなって感じています。

ハルカ:学生のときとか卒業してすぐとかは、そこに対する嫌悪感みたいなものが歌詞にもある種ストレートに出てたと思うんですけど。プロとして活動して、実世界の中に放り込まれて、"これって自分の方が変なのかな?"って。一度疑問が生じちゃうと、もうストレートには言えなくなっちゃうんですよね。昔は孤立してりゃ良かったんだけど、今はすぐ隣に言わば多数派の人が普通にいる、しかも味方としていたりする。自分たちの音楽って何の意味があるんだ、とか、これって一体誰が聴いてくれるんだろう、とか、わからなくなる瞬間があった。ま、それで私、1回壊れちゃうんですけど(笑)。今はこうやって、私たちはあくまで1対1なんですよ、と言い張っても、理解してくれる人が出てきたっていうのは、少しずつ時代も変わって来てるんですかね。

-野音ではさっき言ってくれたようにお客さんと"1対1"の関係性になっていて、だからそれぞれは違うんだけど、でも一体感はたしかにあるっていう、"共感"や"共有"ではなく"共鳴"の場所になっていたように思います。

ミユキ:私は昔からそういう概念すらなくて、ただ自分を頑固に貫いてきたんです。でも、最近自分はみんなが好きになるようなものがもともと好きだったなってことに気づいたんですよね。昔はちょっとかっこつけてそっちに行かないようにしてたけど、もともとみんなで盛り上がることも好きだから、今は変に自分だけ楽しんだりしないで、みんなを盛り上げたいと思うようになったんです。ただ、ひとりが長かったから、そのやり方がわからない(笑)。