Japanese
folca
Skream! マガジン 2017年07月号掲載
2017.05.25 @渋谷TSUTAYA O-Crest
Writer 石角 友香
アルカラ主催レーベル"くだけねこレコーズ"発のロック・バンドで、2ndアルバム『DOMINANT』は一聴してはいたが、正直、確たるイメージを掴めていないまま、本作のリリース・ツアー・ファイナルの会場である渋谷TSUTAYA O-Crestに向かった。しかし、ライヴ終了後には"アンコール含めて10曲だけなんて少なすぎる、folcaの世界観に足を取られたばかりなのに!"という渇望が逆に残るほど、代替不可能なバンドであることがわかった。
直前の発表となった"スペシャル・オープニング・ゲスト"はアルカラ。folcaのヴォーカル 山下英将とアルカラの稲村太佑は、個人的にすでに13年以上の付き合いがあるという仲らしいが、レーベルの社長が後輩のツアー・ファイナルを盛り上げる意味もありつつ、そこはやはりバンド同士。今のアルカラを凝縮しすぎてめちゃくちゃ濃い味になってしまったようなアクトを見せつけて、とっとと去るという、口切り役を果たして見事だった。この日のゲスト・バンドのドラマーは全員、folcaのある時期を担っていて、奇しくも"folcaの歴代ドラマー祭り"でもあるという、今でも良好な関係性がなければ実現しないラインナップでもあったのだ。
続いては2014年までfolcaに在籍していたマーが現在所属する3ピース・バンド、The cold tommy。初期BLANKEY JET CITYやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを想起させるロッキン・ソウルが頼もしい。そして2ピース・バンドの石井卓とジョン中村。グランジもオルタナもエクスペリメンタルな要素も含んだ轟音アンサンブルでありつつ、石井が歌うメロディのポップさが耳に残る。ジョン中村もfolcaにゆかりのあるドラマーだ。
この日、出演バンド以外の歴代folcaドラマーも結集していたようで、フロアから飛ぶエールやヤジも相まって、ステージへのいい意味でのプレッシャーと祝福の役目も果たしている。そんななか、いよいよ主役のfolcaがサウンド・チェックからそのままオン・ステージで演奏をスタート。"日本のロック・バンド、folcaです。遊ぼうぜ!"という山下の第一声から、アルバム『DOMINANT』のラストを飾る「regulation」を投下。緩急を抑えた藤田健二(Ba)と、サポート・ドラマーで、現在は主にGRAND FAMILY ORCHESTRAで活動するピクミン(Dr)の重いのに跳ねるビートがなんとも強靭。その上で、フュージョンにも近いテクニカルなアレンジで縦横無尽にイメージを拡張する為川裕也(Gt)。続く「クレイジーショウタイム」の地を這うようなフレージングなど、混沌とした感情や妖しいムードなど、特定のジャンルに収まりきらない音楽的な語彙の多さは為川が担っている印象を受けた。しかも、山下のヴォーカルの発語が明快で、ライヴで聴いてもかなりストレートに耳から心へ、そして感覚を揺さぶる。ソリッドでノイジーなカッティングでダンス・ビートを作り出し、その上をギターとヴォーカル双方がセクシーでセンシュアルな表現を乗せるというのもかなりユニーク。生身の4人から届くものとしてはかなりの情報量の多さだ。
後半にはアーバンなファンク・テイストがしっくりくる「秘密」など、バンドの奥行きの深さも体現。この曲では瞬間的に、安全地帯~椿屋四重奏~9mm Parabellum Bulletなど連綿と続く、艶っぽい日本のロック・バンドの血脈を思い起こさせたし、単に轟音で圧があるだけでは成り立たない、"何を歌いたいのか?"というバンドにとっての芯も、こうしたメロディアスな曲で実感することができた。人間の深層に迫り、自分を曝け出し、しかもそれが嫌味にならない。努力で手に入れるというより、フロントマンの気持ちと人間性で決まってしまう部分だと思う。それがいやらしくないのは貴重だと思う。
ラストはアグレッシヴな2ビートと繊細なクリーン・トーンという、これまたユニークなAメロにセンスを感じた「Gradient」。間奏では為川が弾きまくるのだが、だからこそカタルシスも生まれる。為川と山下のアンサンブルもシュアなもので、勢いで走らず繊細な表現を最後まで貫くフロントのふたり。ミュージシャンとしての信用をあくまでも演奏で貫く、そんな姿勢が冒頭の"もっと聴いていたい"と思わせた理由だ。アンコールで山下は、"ロックをやるのに資格はいると思う。それはロックに真摯に立ち向かうことだ"と言い切った。それは根性論じゃなくて、実際にロックを成立させるために必要なものだ。ロック・バンドは時代の趨勢でなくなるようなものじゃない。彼ら自身、もっと広いフィールドでそれを証明してくれるだろう。
[Setlist]
■アルカラ
1. マゾスティック檸檬爆弾
2. 夢見る少女でいたい。
3. さ・あ・な
4. ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
5. 振り返れば奴が蹴り上げる
6. メランコリア
■The cold tommy
1. Smoky pink world
2. Misery's machinegun
3. ヒステリック
4. Hey hey pay money
5. シロサイは穴掘り
6. パスコード
7. アカツキ
■石井卓とジョン中村
1. World's owner
2. My Friend
3. 馬鹿、たれ
4. Fly High
5. Perfect Circle
6. sweat runner
7. youth
■folca
1. regulation
2. クレイジーショウタイム
3. FALL OUT
4. Strain
5. キミのせい
6. シリアスミステリアス
7. 3:04
8. 秘密
9. Gradient
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