Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

石井卓とジョン中村

2016年09月号掲載

石井卓とジョン中村

Member:石井 卓(Vo/Gt) ジョン中村(Dr/Cho)

Interviewer:山口 智男

ギターとドラムというミニマムな編成を逆手にとって、ある意味マキシマムな表現に挑んでいる石井卓とジョン中村。活動休止中のロック・バンド、Jeeptaのフロントマンが凄腕ドラマーと2013年に結成したこの2ピース・バンドは、前作から1年3ヶ月ぶりにリリースする2ndアルバム『Fine,thank you,and you?』でもとことん自由だ。2ピース・バンドはミニマムなものという固定観念のみならず、あらゆる限界を超えたところで奏でたい音楽を奏でようとしているふたりが"攻め"のアルバムを引っ提げ、現代のミュージック・シーンに殴り込む。

-7月に会場限定のシングルとしてもリリースしたTrack.1の「World's owner」を聴き、ライヴでお客さんと一緒に拳を振り上げられるようなバンドの新しいテーマ曲になると感じました。

石井:攻めのアルバムを作ろうっていう考えはあったので、そういう意味では、「World's owner」は代表曲になるんじゃないかって思います。音源にする前からライヴでは評判が良かったんですよ。だから、リリース前からアルバムを盛り上げる何かいい作戦はないかって考えたとき、「World's owner」をシングルにして持っていったらいいじゃないかって話にもなったんです。いろいろなところにライヴをしに行って、そのシングルを手売りしたら自分たちの存在を知ってもらえると思ったんですよ。

ジョン:今回のアルバムに入っている「Fly High」(Track.3)かこれか迷ったんですけどね。

石井:たぶん「Fly High」の方が新しいエッセンスを感じてもらえると思うんですけど。

ジョン:あぁ、今までの曲とはちょっと違うからね。

-その「Fly High」も「World's owner」同様、新たな所信表明と受け止めました。前作をリリース後、活動を続ける中でバンドに取り組む気持ちがちょっと変わってきたところもあるんですか?

石井:もっと広まればいいんですけどねぇ(笑)。それはそれとして、ふたりでやっている意味を突き詰める気持ちは前よりも出てきたのかな。

ジョン:ふたりでしかできないこともあるし、3、4人のバンドにも負けたくない。

石井:ライヴの対バンも基本的に3~5人編成のバンドばかりなんですよ。でも、その中でやるから面白い。2ピースばかりのイベントはわりと断ってしまうんですけど(笑)。音、世界観も含め、新しい見せ方をしたいなという思いは前のアルバムから継続してありますけど、今回はもしかしたらそれがより出ているかもしれないです。

-"攻めのアルバム"とおっしゃいましたが、今回、具体的にはどんな作品にしたいと考えたんでしょうか?

石井:大きなコンセプトがあったわけではないんですけど、ふたりでやってきたことにさらに磨きをかけて、よりかっこよく、より面白いものにしようって感じで大枠を作っていって。曲調もアッパーで、サウンドも結構ひりついていて、そういうもっと感情的なところを音に乗せたかったんですよ。

ジョン:時代の波に乗っていないところがいいよね。

石井:そういうところも攻めていると思います。

ジョン:現代のミュージック・シーンに殴り込む、みたいなね(笑)。

石井:結局、僕らがやっている音楽って、90年代オルタナがわりとコアになったようなところがあるんですよ。もちろんポップスも好きで聴いてきましたけど――90年代のバンドの、全然飾ってないけど気持ちが音に乗っかっていると言うか、きれいすぎないと言うか、逆に人間味が出ていてそれがかっこいいよねってところが未だに変わらずにある。そういう意味では王道じゃなくて、そこも含めて攻めている。それをふたりでやっているバンドってあまりいないんじゃないかな。

-今回の7曲は、前作の1stアルバム『How low,my friend?』発表後に作ったものなんでしょうか?

石井:前作を出したあとに作り溜めたものです。

ジョン:前作を作る前から作ってた曲もあるよね?

石井:あるね。このバンド、3年ぐらいやってるのかな。曲数がものすごく多いわけではないんですけど、いろいろとライヴのオファーをもらう中でロング・セットのライヴもあるから、コンスタントに曲は作っていて。CDには収録してないけど、ライヴではやってるって曲もあるんですよ。そこを軸にしながら、新作のリリース日がだいたい見えてきてから、"こういう曲も欲しいね"って感じでまた作って。でもそれは、アルバムのことだけを考えて作るわけではなくて、"ライヴでこういう曲が欲しいね"って作るときもあるし。

-前作を作ったとき、サウンド面では試行錯誤の部分が多かったとおっしゃっていましたが、今回、サウンドが固まった手応えはありましたか?

石井:そんなに変えてはいないんですけど、前作を改めて聴き直したうえで、ギターの音はこうしたいから、こういうふうに録るのはどうかなってアンプを変えることも含め、狙いははっきりしていたんですよ。エンジニアさんも前作と同じ方なので、"次はこういうふうにしたい"という話もしていたんです。だからわりとスムーズにいきましたね。

ジョン:前回は一発でドンッと録ったんですよ。

石井:ライヴと一緒でした。でも、そうやって録っても実際のライヴとは結構違うんですよ。ライヴで空気を挟んでダーッて来る音と、デジタルを通して出る音は結構違う。前作はそういう部分がミックスで苦労したんです。今回はそこを踏まえて、音が潰し合っちゃうようなところはルート音を別に入れたり、ギターを変えて違う音像にして重ねたりとか、ところどころで工夫もして。