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INTERVIEW

Japanese

ハルカトミユキ

2015年10月号掲載

ハルカトミユキ

Member:ハルカ(Vo/Gt) ミユキ(Key/Cho)

Interviewer:天野 史彬

今年初めに開示されたマニフェスト通りにいけば、次はフル・アルバムのはず......だったのだが、ミニ・アルバム『世界』からたった5ヶ月、ハルカトミユキから届けられたのは、またもやミニ・アルバムとなる『LIFE』だった。聞けば、本作は10月3日に行われる日比谷野外大音楽堂でのフリー・ライヴを念頭に置いた、予定外の緊急リリース。それゆえに本作に収録された7曲には、変わりゆく自分たちの中から新たに生み出される音と言葉を抑えきれない――そんな衝動が生々しく刻まれている。こちらの想像を遥かに超えて進化を続けるハルカトミユキ。今の彼女たちには、どうしても、あなたに伝えたいことがあるのだ。

-新作『LIFE』は、前作『世界』からまた1歩前進した作品という印象を受けたんですけど、あれから5ヶ月しか経っていないんですよね。『世界』から今までの5ヶ月間は、振り返ってみてどんな期間でしたか?

ハルカ:6月に『世界』のワンマンをやったんですけど、あのワンマンの時点で、また新たに"まだまだだ、もっと先へ!"っていう想いが出てきたんです。"もっと表現しなきゃいけない"という葛藤というか......試行錯誤というか。"どうしたらもっと届くんだろう?""自分の理想とする歌を歌うにはどうしたらいいんだろう?"という、まだまだ自分の中の"足りない!"という気持ちがある中で、毎月の新曲レコーディングを進めていって。

-具体的に、『世界』のワンマンで見えた自分たちの足りない部分って、どんなものだったんでしょうか?

ハルカ:お客さんは、『世界』を聴いて、少なくとも私たちが何か変わろうとしているってことは感じてくれていたと思うし、ライヴにも期待してくれたと思うし。私自身も、進化していく自分を見せたいと思っていたんです。それでも、まだ開き切れていない自分がいる。例えば、本当に、もっと泣いているような歌が歌えたはずなのになって......。でも、あの時点ではそれをどう表現したらいいのか、わからなくて。技術的な部分でないところに足りないものがあったような気がしたんです。それが何なのかをすごく考えていました。それは今も考えてますけど。

-『世界』って、泣いている自分もいれば笑っている自分もいるっていう、その振れ幅自体を許容した作品だったと思うんです。でも本当は、その感情の振れ幅の極端な部分をもっと表現したかったということですかね? 感情表現としての歌を究めるというか。

ハルカ:感情......うん......もっと崩れていてもいいし、実際はもっとボロボロで汚いのに、どこかできれいに見られたい自分がいたというか。壊れてて、汚ない自分をどこか隠して、どこか守ったままライヴをしているんじゃないか。そこに苛立ってましたね。あのころは意識的に"変わろう"としていた。それは口にも出していたしヴィジュアルにも出していたんですけど、今は意識的に変わろうとしているというよりも、ライヴを通して、実感として"もっとこう言いたいのに"とか"もっとこういうふうに伝えたいのに"という想いが出てきたんです。だから今は"変わる"というより、"進む"とか"のぼる"とかの方が当てはまるのかなって思います。

-なるほど。ミユキさんは、この5ヶ月間はどうでしたか?

ミユキ:年明けに発表したマニフェストとしては、ミニ・アルバムとフル・アルバムが1枚ずつだったので、今度はフル・アルバムに向けてっていう気持ちで曲を作っていたんです。でもこのまま淡々と12ヶ月やったところで変わりきれないんじゃないか?っていう想いもあって。『世界』ができたときに、"あ、ちょっと変われた"と思った瞬間はあったんです。でも正直、私もライヴの現場で"まだ足りないんだな"って気づいて。観に来ている人がもっと感情を表現していたり、もっと人がいっぱいいる空間を想像していました。でも現実はそうじゃなかった。まだ壁があるのか、それともきっかけがないのか......原因としては両方あると思うんですけど、とにかく、もっと聴いてもらわなきゃいけないんだなって思ったんです。なので、制作をしつつアコースティック・ライヴを地方でやったり、路上でやったりしていて。その中で、野音のフリー・ライヴも急に決まったんです。

-やっぱり、10月3日の野音フリー・ライヴが決まったことは、この期間のカンフル剤になりましたか?

ミユキ:野音が決まったときはすごく不安だったんです。普通に考えると今の自分たちにとって、野音ってのは、絶対に無理な挑戦で、友達からも"バカなことはやめろ"的な意見もありましたしね......ハルカと違って、私はなかなか決断できなかったときもあって。でも、路上ライヴをすることで、例え人数は少なくても、確実に私たちを知ってくれている人はいるって思えたんです。どんどんお客さんとの距離感も近くなっていて。だから今はすごく前向きに、"何がなんでも人を集めてやる!"っていうモードです。

ハルカ:野音に向けての動きが加速していく中で、野音のイメージが自分の中にも生まれてくるようになって。それに合わせて野外が似合うような、空が似合うような曲を作っていった結果、それを1枚のミニ・アルバムとして出そうということになったのが、今回の『LIFE』なんです。なので、作品を作っていったというよりは、もっとライヴ寄りのフィジカルな感覚で制作が進んでいたという感じでしたね。レコーディング自体も、作品のためにガッと録ったというよりは、動きながら作っている感覚でした。

-『LIFE』に関しては、Track.1「肯定する」が何よりもハルカトミユキにとって革新的な曲だし、今、とにかく言いたいことがこの曲には詰め込まれているんだろうなと思うんですね。「肯定する」は、どういうふうに生まれた曲なんですか?

ハルカ:"肯定する"というテーマ自体はすごく前から、それこそ去年からあったんですけど、全然曲として結論を出せなかった。あのころは、自分自身の中に"肯定されたい"とか"認められたい"という気持ちが強くあるのに、否定されてしまっている......その状況がすごくつらかったんです。"私だけはあなたを肯定する"っていう言葉を詩として残してはいたんですけど、曲にすることはできず、ずっとそのまま置いてあって。でも、このタイミングで歌にしたいなと思って改めて書き始めたんですけど、やっぱり悩んで。テーマを歌詞として昇華させなければならないと思えば思うほど、どう言葉にすればいいのか......"肯定する"以外の言葉が見つからなかったんです。