Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

BiSH

BiSH

Member:セントチヒロ・チッチ アイナ・ジ・エンド モモコグミカンパニー

Interviewer:宮﨑 大樹

「LETTERS」は歌い上げるっていうよりは手紙を読んでいるような聴こえ方が良かった


-まさにBiSHが止まらないことで、当初のシングル・リリースの予定を変更しメジャー3.5thアルバム『LETTERS』が完成しました。どんなアルバムかと言うと、リリースを発表したときのBiSHのみなさんからの手紙がすべてという気もしますけど、改めてどんな作品になりましたか?

チッチ:このアルバムを作るときにBiSHチームとBiSHの想いが一緒だということに気づけたのがすごく嬉しくて。手紙のような1枚を作って、それを目の前にいる"あなた"に届けたいっていう意識が強くありました。それがまっすぐに出た歌詞が多いので、受け取った人は自分宛の手紙だと思って、一曲一曲聴いてもらえたらすごく嬉しいなと思っています。本当にストレートに飾らず、弱いところを見せて書いている歌詞たちが多いんです。温かくて優しくて、みたいなイメージが私にはありますね。本当にお手紙みたいな感じ。

モモコ:『LETTERS』は、受け取ってくれる人がいる前提で出した私たちからの手紙っていう感じなんですけど、私たちとの思い出がない人にも届いてほしいなって。私は自粛期間で不安を感じて、ソワソワしている時期があったんですけど、『LETTERS』の曲を聴いていたら心から安心できたんです。このアルバムを聴いていれば大丈夫っていうくらいなので、いろんな人に届いてほしいなって思いますね。

アイナ:メンバーの歌詞からすごく成長が感じられたというか、そういうところから刺激を受けたりリスペクトを感じられたりするっていうのはすごく幸せですし、そんなアルバムを届けられることも幸せです。だから早く聴いてほしいなという気持ちですね。

-表題曲の「LETTERS」は普段と曲の聴き方、受け取り方がまったく違ったんですよ。手紙を読むときにその文章を分析しないように、曲の良し悪しとか、分析的な視点を置いて、心で受け取るような、まさに手紙という印象でした。

モモコ:"カッコ悪い"くらい素直な歌詞を、松隈(ケンタ/サウンド・プロデューサー)さんと渡辺さんが書いていることが"カッコいい"って思いました。ビックリするくらいまっすぐで、初めて聴いたときに松隈さんと渡辺さんのすべてを曝け出す覚悟というか、この時代にWACKとして、BiSHとしてこういう闘い方をするべきだっていう背中を見せつけられた気がして。こういう世界だからこそ、すべてを曝け出すことで安心する人もいるだろうし、カッコつけないようにしようと思いましたね。

-そういうまっすぐでカッコつけない感じは歌唱にも表れていますよね。あまり細かくディレクションし過ぎていない、ナチュラルな歌い方というか。

アイナ:本当にその通りです。「LETTERS」はAメロ1番がリンリン始まりで、次にハシヤスメが来るんですけど、Bメロにもハシヤスメが来るんですよ。これって前代未聞なんですけど、それには理由があって。この曲は、歌い上げるっていうよりは手紙を読んでいるような聴こえ方が良かったらしいんです。リンリンとハシヤスメは喋っているような感じで歌えていたので、こういう歌割になったって松隈さんが仰っていました。なのでディレクションを細かくというよりは、素直な、手紙を読む系の歌い方をしています。

-サビはユニゾンですよね? 松隈さんはユニゾンを好まないイメージだったので意外でした。

アイナ:そうですね、3人ずつ歌ってます。

チッチ:松隈さんは、もしライヴでこの曲をやるとしたら、みんなで歌いたい曲だった気がするんですよね。ディレクションではないかもしれないですけど"ひとりで歌っているっていうよりは、みんなで歌っているような感じで歌ってみて"って話をされたので、そういう気持ちがあったのかなと思います。ひとりじゃなくみんなで歌うっていうことが、手を繋ぎ合って何かを届けているみたいな感じがして、そこが私はすごく好きですね。守りたいものを守ろうとしている感じがすごく好きなんです。

-レコーディングのときからユニゾンになることは知っていたんですか?

モモコ:完成した曲を聴いたときに初めて知りました。個人的に、一緒に歌っていないのに、完成形で一緒に歌っているっていうのがこの曲を表しているのかなと思っていて。自粛期間中はメンバーとも距離があったんですよ。でも歌詞で"絶対距離は遠くないんだ"って言っていて。遠くで別々に歌っていても一緒の気持ちで歌っていたんだなと思いました。声が重なっているのを聴いたときは嬉しかったですね。

-泣ける話をするじゃないですか......。

モモコ:完全に個人的な気持ちですけどね(笑)。どういう意図があったのかはわからないですけど。

-「ロケンロー」では初の外部アーティストとして東京スカパラダイスオーケストラのホーン・セクションを招いてます。スカパラとはトリビュートで「カナリヤ鳴く空」を歌唱、対バンもしている間柄ですね。

アイナ:スカパラさんが他の人たちと違うなって決定的に思うことがあって。"自分たちが一番になりたい"とか、"こうなりたい"、"あぁなりたい"っていうのがライヴ中に全然見えないんです。見えてくるのは"お客さんを楽しませたい"とか、"みんなが唯一無二だよ"って言ってくれている、包み込んでくれるような大きい愛で。"俺たちが一番だ"っていうバンドもめっちゃカッコいいと思うし、どっちも好きなんですけど、スカパラさんとやることでBiSHが安心して委ねられるというか。それはスカパラさんにしかない感覚なので、そういう人たちを初のゲストとして招いて音楽をやらせていただくっていうのは本当に感慨深いです。安心して楽しんで、お客さんのことも楽しませられるような気がしています。

-スカパラの存在感を大きく感じさせつつも、松隈さんのメロディ、SCRAMBLESのアレンジもあり、BiSHとスカパラの調和の取れた融合感がありますね。

モモコ:アルバムを全部聴いてみて「ロケンロー」が一番"希望"だなと思いました。ライヴでやったら絶対楽しいし、ライヴの想像ができる楽曲なのかなって。"この先も行きたい"というか、BiSHの先のワクワク感を表している曲に感じました。

チッチ:このアルバムの中でBiSHの新しい一面を一番見せてくれた曲だし、最初に貰ったデモよりもスカパラさんのホーン隊が入ったことによって全然顔が違った曲になりましたね。できあがって私もワクワクしたし、この曲は他の曲よりも強気なんですよ。優しく未来を願っている言葉たちがアルバムにたくさんあるなかで、この曲は"先に行ってやんぞ"っていう感じがするので、BiSHのことも引っ張っていってくれる曲かなと思います。

-新しい一面を見せたっていうのはその通りですよね。そういう意味では、歌うにあたってのヴォーカルのディレクションや意識にも変化がありましたか?

アイナ:違っていましたね。"こころはロケンロー"って言っているところがあるんですけど、"笑ゥせぇるすまん"みたいな感じでめちゃくちゃ低く歌っているんですよ。早くそれをライヴでやりたい(笑)。

モモコ:聴きたいわぁ~それ(笑)。いつも楽屋でやってくれるんですよ。

アイナ:モモカン(モモコグミカンパニー)とアユニ(アユニ・D)だけ笑ってくれるんです。

-たしかにチッチさんは笑ってないですね。

チッチ:(※真顔)

-(笑)チッチさん、モモコさんのレコーディングはどうでした?

チッチ:私は後半組のレコーディングだったんですけど、松隈さんに"アイナとアユニが癖癖ガンガンで来てるから、それに寄った感じで歌ってみてくれない?"みたいな感じで言われたので、癖っぽく歌ったっていうのはありますね。癖のある歌い方ができる人たちに刺激を貰っていろんな歌い方ができたので、このレコーディングは"BiSHって面白いな"っていう瞬間がいっぱいありました。他のメンバーの歌を聴いての、ひさしぶりの感覚でしたね。

モモコ:私は"癖強め"とかは言われなかったです。いい意味でいつも通りでしたね。でも、こういうふうに声を出したらこうなるんだっていうのが、昔よりちょっとずつわかり始めていて。自分の中で、今回のレコーディングは今までよりちょっと楽しかったなって思います。

アイナ:(※小さく拍手)

-逆に今までは苦手意識があったということですね。

モモコ:う~ん、行きたくない塾に行かされてるような......(笑)。歌詞を書くのは好きだったけど、歌うのはよくわからないなっていう感じで。でも今回はそうじゃなかったです。歌えて嬉しいっていう感じで。

チッチ:レコーディングがモモコと同じグループだったんですけど、確実に言えるのは肺活量がめっちゃ上がったということで。本当に声が大きくなったんですよ。歌っているときとかに、ちょっと自信なさげだった感じが今はなくて、楽しんでやっているなっていうのは見ていて思います。あとは滑舌が良くなったなっていうのはすごく感じてますね。自分でボイトレに行ったりして、自分なりに何かしているっていうのがわかっていたから、そういう成長をお母さんみたいに嬉しく思っています。