Japanese
BiSH
Skream! マガジン 2016年11月号掲載
2016.10.08 @日比谷野外大音楽堂
Writer 沖 さやこ
今年5月にメジャー・デビューしたBiSHが、6月頭に5人態勢でスタートさせた全国ツアー"Less than SEX TOUR"。そのツアー期間中である8月にアユニ・Dが加入、9月には1stフル・アルバム『KiLLER BiSH』をiTunes限定で先行配信し総合1位を獲得、10月にはパッケージでリリースし、週間7位を獲得するなど、彼女たちは息つく間もなくこのツアー・ファイナル"帝王切開"まで走り続けた。開演前、マネージャーの渡辺淳之介がステージに現れ、"僕の(担当する)アーティストの中で、野音でワンマンやるの(BiSHが)初めてなんですよ。やりたくてやりたくて仕方なかったんだけど、いつもできなくて。だから今日、この満員のお客さんの前にBiSHが立てるのは、本当に......嬉しいっす(笑)"と感慨深そうに話す。"今日みんながここにいたことを自慢できるステージにBiSHがします"と続けると、会場は大きく沸いた。
日も落ちて、あたりがだいぶ暗くなった野音に"ツァラトゥストラはかく語りき"がSEとして流れると、曲のクライマックスでステージ上のたまご型の風船が破裂。その中からメンバー6人が登場し、会場から一気に大歓声と拍手が沸いた。「BiSH-星が瞬く夜に-」でスタートを切ると、観客も6人と同じダンスをし、彼女たちのヴォーカルにコールを挟んでいく。これでも完璧だと思うほどに熱狂的なのに、アイナ・ジ・エンドが"もっと!"と煽ると、客席はさらにヒート・アップ。1曲目からステージと客席の境目をなくすほどに、会場中の全員がグルーヴを作り上げていった。
続く「ファーストキッチンライフ」は歌詞に合わせて表情を変えてゆくセントチヒロ・チッチに釘づけ。アイナが客席を見ながら耳に手を当てると観客の声もさらに大きくなり、ダンスのクオリティやヴォーカリゼーションも含め、現体制のBiSHの牽引役としての存在感を見せつけた。モモコグミカンパニーははにかむような表情と小柄な身体を動かす姿がキュートで、リンリンはワンピースにツインテールでありながらも金切り声を上げるなどのギャップで魅了。ハシヤスメ・アツコは黒でタイトにまとめた衣装で大人の雰囲気を醸し出し、アユニ・Dはとにかくひたむきに歌とダンスにぶつかっていく、フレッシュなパフォーマンスを繰り広げる。
アユニ・Dが作詞をした「本当本気」は、白いサイリウムの灯りが一面に広がった。実はこれ、清掃員(※BiSHファン)の有志による企画で、全席にサイリウムが配布されていたのであった。普段BiSHのライヴは、ライヴハウスだとモッシュやリフト、ダイブが起こることが多いため、彼女たちのパフォーマンスとともに秋の夜空の下でサイリウムが広がる光景を味わうというのはとても貴重な経験だった。アユニを歓迎する想いを光に託すというのも、とてもロマンチックである。
ヘドバンやシャウトが炸裂するヘヴィな「IDOL is SHiT」から一転、明るくキャッチーなロック・ナンバー「デパーチャーズ」や「DA DANCE!!」では6人全員が天真爛漫な雰囲気を作り出す。女子が揃って楽しそうに、笑顔で悠々と全身で歌を届ける姿は正義だな......と同性ながらに陶酔。「DEADMAN」はひとりひとりが自由に感情を解放している様子が爽快で、短尺ながらに強烈なインパクトを残す、まさしくキラー・チューンへと進化していた。
「Primitive」、「Is this call??」、「スパーク」と真摯なヴォーカルでバラードやミディアム・ナンバーを届けたあとは、MCという名の「Hey gate」へ繋ぐ小芝居。野音が広すぎて力が出ないというアツコに向かって、あとの5人が緊張をほぐすためそれぞれイケメンをイメージさせるという内容なのだが、どのイケメンもハゲという、ハゲで落とす内容である。アイナが"まだまだ声出せますか!?"と叫ぶとラストスパート。「サラバかな」ではステージにも客席にも力強い拳が上がり、「MONSTERS」はヘドバン乱れ打ち、「OTNK」でリンリンのシャウトを筆頭に熱の入った歌を届けると、祝祭感たっぷりの「beautifulさ」で本編を締めくくった。
アンコールはストリングス隊が登場し「オーケストラ」を披露。優雅に舞う鳥のようにまっすぐ歌を届けていく6人。「本当本気」に続き、清掃員によるサイリウム企画が行われ、アイナが歌う落ちサビで、客席が放射状に6色に輝いた。その景色にアイナはたいそう驚き感動したのか、歌いながら涙を流す。6人がこのツアー中のことや歌詞をひと言ひと言、噛み締めるように歌ったラストの「ALL YOU NEED IS LOVE」は客席も肩を組んで盛大にシンガロング。チッチも歌いながら涙を流し、歌い終えるとアユニは涙が抑えきれず泣き続け、その様子を見ていてこちらももらい泣きをしてしまった。アイナも"光るやつびっくりした! ありがとう! アイナ、ハゲの人大好きやからね!"と号泣しながら叫び、6人はステージをあとにした。それでもダブル・アンコールを求める拍手は鳴り止まない。彼女たちとともに渡辺もステージに現れ、"もうこの子たちも満身創痍だから"と渡辺が諭すと、ラストは会場全体で"ハゲ~!!"と大声で叫び、この日の幕は閉じられた。
奇抜なヴィジュアルや活動が取り沙汰されることが多い彼女たちだが、曲ごとにひたむきにまっすぐぶつかっていく6人の姿はとても力強かった。この6人だから頑張れる、歌が好き、ダンスが好き、観客とともに新しい景色を見ていきたいという彼女たちの極めてシンプルで純粋な熱い想いは、自分が若かりしころに部活などに青春を捧げたときのことを思い出させた。年明けには再び全国ツアーも決定している。彼女たちはまだまだ全速力で走り続けるだろう。
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