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INTERVIEW

Japanese

シナリオアート

2016年07月号掲載

シナリオアート

Member:ハヤシコウスケ(Gt/Vo/Prog)

Interviewer:石角 友香

-そういう曲を作りたいと思ったんですか?

そうですね。また新しい自分に挑戦していきたいというか。もともとが内向的だからこそ、今回のような明るい曲であること自体が冒険なんです。まず最初にざっくり"明るい曲を作ってみよう"って、何もないところからそのテーマで始めて。やっぱりもともと切ない音楽が好きで感動するので、自分から出てくる曲もそういうものが多かったんですけど、感情的なものってすごくそっちに引っ張られるんですよね。音を出したり、作ったりすると、どうしても気が沈んでくるというか。それも音楽の力なんですけどね。"逆に明るい音楽を作ったら気持ちが明るくなっていくんかな?"という好奇心もあったし。だからワクワクしながら作りましたね。

-これまでのシナリオアートの中に"明るい曲を作ろう"というテーマ自体がなかった?

うん。なかったですね。

-"明るい曲なんていくらでもあるから"っていう感じですか(笑)?

そういうところもあるし、根が明るくない人たちやからこそ、そういうものは自然に出てこなかったのかなと。

-"自然に出てこない"(笑)。仕上がりは音楽隊的なアレンジになってますけど、最初はどういうところからできていったんですか?

明るいイメージで、"セカンド・ライン"というワードが重要になったんですけど、陽気に歩いていくパレードみたいな感じが合うんじゃないか?って話になって。"セカンド・ライン"を調べていくと、"お葬式"とか出てきたんです。

-あぁ、アメリカ南部の。(※セカンド・ライン:ルイジアナ州ニューオーリンズの葬儀で行われる伝統的なパレード)

お葬式で演奏されるというか。その行進にも展開があって、最初はおとなしくて悲しい音楽から、最後にいくにつれて徐々に陽気なセカンド・ライン・ビートを鳴らしたりして。最終的には、ただ悲しむんじゃなくて残された人たちが悲しまないような音楽に変わって終わっていくんですけど。その陽気な雰囲気も合うし、"それだけじゃない陽気になりたい"という願いがあるリズムなんかなと思って。そういうのを活かしていけたらいいんじゃないかな、というところから。あとは、"パレード"というワードから管楽器を入れてみようとも思いました。

-シナリオアートがセカンド・ラインのビートにインスパイアされている時点で、すごく新しいと思います。それで、いろんな管楽器なども生で入れていこうと?

はい。ほとんど生で入れましたね。

-これまでのシナリオアートの同期やシンセのイメージからガラッと変わるけど、この曲も仕上がりは端正な印象ですね。

レコーディングの雰囲気も良かったですね。"明るい曲を明るい雰囲気で収録していく"というのはテーマだったので。

-シングル・リリースされた曲じゃなくても、ファンのみなさんはこれまでの曲も代表曲として聴いてるものはあると思うんです。でもどうしても実質的に今作は"シナリオアートの1stシングル"って言われるわけで。そうなるとこれからの代表曲になっていくのかな?という気もしますね。

1stシングル......何かすげぇ大切な気はしますね。今ってシングルを出すことが大変な時代になってるじゃないですか。シングルぐらいなら配信にしちゃうというアーティストもいるし。だから"この2曲でシングルを出せる"ってこと自体が嬉しいですね。

-なるほど。歌詞では、何気ないことが幸せなことだと気づけなかったこれまでも含めて書いていますね。でも人間っていつまでたっても"ないものねだり"をしてしまう生き物じゃないですか?

しちゃいますね。だけど、まず"あるものに気づけることって、すごいスキルなんじゃないかな?"って思うんですよね。ないものに次々逃げていくことより、"今の時代に合ってる幸福論なんじゃないかな"と思うんです。自分が思うこれからの時代というか、目の前にあるものでどう幸せを感じていけるかというか。なんか、いろんなものがどんどん縮小していくと思うんですけど、そういうことに変な抗い方をしたくないなと。ただむやみに夢を見る方法が今まで自分の価値観としてあったなら、また違う価値観を見いだしていきたいなという。この些細なものに幸せを感じられるスキルがあれば、もっともっと豊かになれるんじゃないかなと思うんですよね。

-みんながみんな、ひとつの成功パターンを成功と思うわけじゃないとか、そういうことですか?

そうですね。もっといろんな成功の形があっていいと思うし。