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INTERVIEW

Japanese

ビッケブランカ

2021年03月号掲載

ビッケブランカ

Interviewer:吉羽 さおり

高校デビューや大学デビューに近い変化が、今世の中に起きているから、こんな変わりたい放題のチャンスはないと思う


-1周したからこそ、芳醇なものになった。また、このドラムが打ち込みであるというのは最初からイメージしていたんですか?

もともとは生ドラムでという意識はあったんです。自分で作ったデモは生ドラムで打っていたんですよ。あと春の歌ということで、アコギはどちらにせよ入れたかったんですね。ただアコギと生ドラムってなると、ちょっといなたさが出て。それはそれでいい曲になるんですけど、そのいなたさがビッケブランカに合わなかったんですよね。こいつ(ビッケブランカ)の歌ってちょっと都会的でないと成立しなくて(笑)。というところで、それは本間さんにも言いましたね。いなたいから、打ち込みでいい感じに作れませんかって。そう言ったらもう本間さんは手練れですから、すっと出してきてくれました。

-歌もキーが普段よりも低めで、この打ち込みのビートのノリも相まって、いいライトさがある。やりすぎてないから、聞こえてくるものがあるという感覚ですね。

僕としては曲作りの進歩なんですよね。すごい進歩で。どんどん、どんどん削がれていくわけじゃないですか。無駄な要素が削がれて、精密になっていくという過程の、大きな1歩だなと思いますね。この曲は自分にとって、削いで残った芯が見えつつある曲だと感じます。

-昨年11月から、なんとなくそのモード感があったということですが、その当時ってどんな音楽を聴いていた感じですか?

聴いているのは、ダンス・ミュージックも聴いていたし、いろんなものを聴いてはいたんですけど。テンポが遅かったですね。速いテンポのものは聴かなかった、聴く気になれなかったから。心拍数よりも遅いのが大前提みたいな。

-ゆったりとした日常感、レイドバック感というのを欲していたし作るものも結果的にそうなっていったと。で、その対極と言えるのがもう1曲の「天」なのですが、これはいつ頃の曲なんですか。

「天」は結構前にありました。1年は経っていると思いますね。

-この1年でもだいぶテンションの差がありますね。

だから、「ポニーテイル」と「天」が並ぶのがすごく面白いんですよね。で、この「天」を作ったのも自分の言葉や、気持ちを素直に出すというところに目を向けている時期だったのは覚えているんです。それが1年経ってここ(「ポニーテイル」)まできてるという進化の過程に僕は見えて。「ポニーテイル」では歌詞の横文字なくなったねとか、そういう細かい気づきもあったりして、僕は面白いんですけど。

-歌詞の世界観は違うんですが、歌詞が持っているムードや、チアフルな雰囲気は共通していて。それを音でふんだんにやっているのが「天」で、歌としてやっているのが「ポニーテイル」という感触です。

そうですね。たしかに「天」は音でやってる、「ポニーテイル」は言葉でやってるみたいな感じがあります。

-「天」はストリングスや、エレキ・ギターなど重厚な音や、エレクトロな音響が使われていて、ボリューム感のあるサウンドですが、どんなサウンド・イメージがありましたか?

これは冒頭にあるリズムが最後までずっと続いているんですよ。このリズムの繰り返しが1個テーマではありました。それをやっちゃった時点で、J-POPにはならないんですよね。リズムが立っちゃった時点でJ-POPにはならなくて。偏見ですけど、J-POPはリズムが立っちゃダメだから。でも、しっかり言葉が届くものにすることで、いい塩梅に落ち着くのかなっていう、当てずっぽうで投げている感じですよね。

-そのビート感が'80sポップス的な雰囲気を出していますよね。

そうですね。これはAメロがあってBメロがあって、サビがあって、またAメロがきて次に間奏がくるんですよ。この構成はすごく面白いなって自分で思った。Aメロで一番言いたいことを言えてるし、頭の"そうですね"っていう入り方はすごく自分でも好きで。聴いている人を、"え?"ってさせることができるし。歌詞を読んでいていても楽しいと感じますしね。このAメロにフォーカスを当てられているというのは、Aメロのあとに間奏があるからだと思うし。楽しく聴けるのはそういう構成の妙だったりもしますね。

-その間奏のエレキ・ギターのソロもかなり濃いめです(笑)。

はい(笑)。ダサくていいやつ。どこまでダサくなれるかが大事なフレーズね。

-はい(笑)。そういう遊びがふんだんで。この曲を作っていた頃は、結構実験的な感じではあったんですか。

そこだけではなかったですけどね。どんな言葉を書けるかのほうに重きを置いていたと思うんですけど。でも、イケイケだったんじゃないですかね。曲作りに対して、勢いがある瞬間だったんだと思うんです。だから、アイディアが止まらなかったし。で、曲ができるのって偶然なんですよね。たまたまこれは、このタイミングでこのアイディアが残っていて、うまく組み合わさったということだと思うんです。

-アルバム『Devil』(2020年3月)のリリース以降、この1年は自身の中で大きな変動、変遷があった感じでしょうかね。

いろいろ変わった気がしますね。でも、わからないですね......結局ライヴをやらないと着地ができない感じがあって。

-たしかに。今年の2月23日からいよいよ[Devil Tour "Promised"]がスタートしましたが、『Devil』のアルバム・ツアーができないままの1年は、やっぱり作品を完結できないような感覚があったんですね。

ありました。Devilがまだ終わってないというのは、スッキリしないですけどね。

-ツアーはファンの方も待ち遠しいところであるし、且つこれからへの新しい期待もあるというライヴになりそうですね。

新曲出してるしっていう(笑)。こういう状況下でもリリースが止まらなかったのは良かったなと思いますね。

-ライヴがないのは、具体的にどういう心境だったんですか?

暇ですね。すごい暇。ライヴがないと、区切りがないから。ぽやんとしてしまいますね。

-自分はステージに立って、見せる側であるんだなというのも意識しますか?

そういうふうには繋がらないんですけど。普通に、スッキリしない。暇。これに尽きるんですよ(笑)。退屈なんですよね。

-これまでのインタビューで聞いている限りでも、ものすごく多趣味なビッケブランカさんですら、これだけの時間があると退屈だとなってしまう。

やっぱり活動が軸にあってこそだから。あれをやってから、怠けるのが気持ちいいわけで。あれがなく怠けているのは、ただの怠けているだけですからね。気持ちいい怠惰にならないんですよ。

-(笑)たしかにそうですね。そのぶん、こういうアウトプットをしなきゃじゃないですが、発信するプレッシャーみたいなものってありましたか?

何かしなきゃっていう焦燥感は、一度もなかったです。ただ、軟体になった感じ(笑)。やりたいことが絶対にできない状況で、もう抗ってもしょうがないから、水のように......という感じでしたね。だから、正直すごく楽といえば楽だったんです。力を抜いてるだけでよかったから。幸いにも周りの人は賢いから、このタイミングでこれをやろう、あれをやろうって言ってくれて。最小限のエネルギーで、ちゃんとそこに力をドンっと込めるだけで、物事がキープできたり、キープ以上の効果が出るようなことを組んでくれたから、助けられた感じはあります。そのぶん、ここからは俺が身を粉にして頑張っていかなきゃいけないですね。

-返さないといけませんね(笑)。ツアーも楽しみですし、今回は曲ももちろん、桜井日奈子さん出演のMVやとんだ林 蘭さんが手掛けるアートワークも含めて、よりフレッシュな印象にもなったので。ここからの展開も期待しています。

もともと変化が怖くないし、変化していたほうが楽しいという感じなんですよ。且つ、高校デビューや大学デビュー、または社会に出るみたいな、それに近い変化が、今世の中に起きているから。変わりたい放題っていうか。こんなチャンスはないと思いますね。