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INTERVIEW

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ビッケブランカ

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インタビュアー:吉羽 さおり

武器を増やすし、新しい扉を開いていく。だから、目的は定めずに今やれることだけをやろう


-一聴するととても美しい曲で、しかも、サビが二段構えでグッとくるドラマ性もある曲ですが、ひもとくとたくさんの要素が絡んだ濃い味のものになっていて、どこから切っても、新たな側面が見える面白い曲になっていると思います。歌詞についても、自分の美学や、真実を追い求める難しさや不透明さ、それでも突き詰めていくロマンをエモーショナルにかきたてる内容で、より踏み込んだ思いが伝わる曲だとも思います。

そこは意外とさらっと書いているところではあるんですよね。ドラマのメッセージと、それを受け取ったうえで、今まで自分が培ってきた人生の中で、自然と選ぶべくして選ぶ言葉があるというだけなんです。実は、あまり歌詞に関してはああでもない、こうでもないというのは、考えていないんですよ。

-ドラマの書き下ろし曲で、それも結構前に書いた曲ということでしたが、今の世の中が置かれている状況にもシンクロしているようにも聞こえてくるのは、音楽のマジカルなところでもあります。

そうなんですよね。そういう曲は、多いなと思いますね。なんでかわからないけれど、根底に悲しみがあるというか。それがあるから、例えば2018年にリリースした「ウララ」という曲でも、"おもひでひとつ大人になって/去年のことは忘れませんか"という歌詞なんて、来年歌ったら超ドンピシャになると思うし。そういう悲しいこととかつらい状況、災難のあとにぴたりときてしまう曲はなぜか多いなと思うんです。それはきっと日常的にそういうことを感じているから、歌詞にも過ぎた悲しい出来事とか、過ぎた絶望とか、人間なんて一生絶望だみたいなものが乗り移っているんじゃないかなって。だから、こういう今のような状況にも合ってしまうんだと思います。

-ちょっと気になる部分があって。曲のクライマックスと言える後半の、"だからダメなんだって思う"というフレーズのところで高音の、ちょっと違和感のあるコーラスが重なりますね。パッと聞いたときにもかなり耳を引く部分ではあるんですが、どんな意図があったものですか?

これは、なんかを見たときに思ったことがあって。真剣に歌っている人の後ろで、何かふざけたことが起きたんです。その瞬間に、この人本当に真剣なんだなって思ったんです。真剣な演技をしているんじゃないなって感じたんですよ。そういうことで、自分が一番言いたいところ──この"だからダメなんだって思う"って、僕自身も経験があるし、きっと大勢の人に経験があるようなことだと思うんです。そこにより奥行きを出すことでメッセージの強さが出るんじゃないかと考えて、試しにですけど、やってみたものだったんですよね。

-そうだったんですね。そうした遊びもふんだんにあって、タイアップだからこそできる面白さや、作家としてどれだけのものを提供できるかというのを、すごく楽しんでいるというのもわかります。

ポンとハードルを出されるとワクワクする感覚がありますね。出されたハードルをギリギリじゃなく、楽々超える喜びみたいなものがあって。"こんな楽々超えちゃうの?"って言われたいんですよね(笑)。驚かせたいし、頼んで良かったと思わせたいし。

-そのぶんアイディアの豊富さ、引き出しの多さが問われるところでもあり、腕の見せどころですね。

そこはたまたま昔からそういう癖がついているので、放っておいても引き出しは埋まったままなんです。中身の入れ替わりはあるにしろ。あとは、変わらずに自分を保つこと、自分の考え方とか、姿勢を変に揺らさずにいればできるという感覚なんです。

-初めのほうで話していましたが、世の中が落ち着かなくざわついていても、自分の日常を変えることなく過ごすことにも通じますね。

あまり変わっても、仕方ないという感じもありますしね。できることしかできないから。そういう感覚が根っこにある気がします。いろんなことに一喜一憂したり、振り回されたりせずに、デーンとしていれば、相手なり状況なり世間というのがいずれ戻ってきてくれるから。それを待っていればいいかなと思うんです。

-3月7日にはスタジオからのライヴ配信を行いました。ライヴの感触はどうでしたか?

こういうふうにやれるんだなっていうのはありました。もともと時々ゲーム配信をしているので、リアルタイムでのコメントを読むことができる癖がついているんですよ。なので、そんなに困ることなく、実際にライヴにいるかのような、リアルタイムでのコミュニケーションも取れたほうなんじゃないかなと思いましたね。

-配信ライヴっていうのはまた考えていたりも?

配信ライヴについては、できるということはわかったしいいんですけど、亜流な感じ、省エネの感覚がしっくりこないというか。もちろん楽しみにしてくれている人に提供したい気持ちはあるんですけど、"今はライヴができない状況なので、ミニ・ライヴします"というのは嫌だなって感じで。ライヴや、自分の歌は、フル・パフォーマンスできることが重要だと思うので。聴いてくれる人が実際に目の前にいてくれて、その人に向けて歌うことがフル・パフォーマンスじゃないですか。それができないから、ネットを通じてちょっと迫力ないけど、やりますみたいな中途半端な感じが嫌なんですよね。というので、この前オンライン・フェス("LIVE HUMAN 2020")に出るとなったときに、そこで弾き語りをして、"今はこんな感じで小規模でやってます"という半端なことをするんだったら、爆音でDJやっちゃおうと。で、DJで新曲「Little Summer」を披露したんです。

-「Little Summer」のMVはそれを形にしたものでもありますね。

あれは、配信ライヴというところでできるフル・パフォーマンスなんですよ。生バンドを率いて、生歌を歌う"フル"の状態はやっぱりライヴ会場じゃないといけないし、そうじゃないところで中途半端なことをやるんだったら、新しいチャレンジとか、新曲の披露とか、そういう意味を持たせた違うベクトルのフル・パフォーマンスをしたいっていうことで、DJをしたんです。めちゃくちゃ楽しかったですよ。DJの機材買って、勉強し始めて1週間後ですからね。

-そうだったんですか!

1回目で事故るのは怖いから、データ作ってやってるフリでいいからっていう声もあったんですけど、いや、それじゃ意味がないんだよっていう。結果的に、すごく楽しかったですしね。何もできないと言われている、このコロナ禍で新しい扉が開けたのもあるし、極端な話ですけど、今の状況が終わったときに、中国とか韓国とか海外のクラブからDJしに来てくれっていう話だって貰えるような、扉をひとつ開けたというのもあって。

-臆せずに、武器は増やすべきですね。

ビッケブランカになるかならないかの時期には、武器が多いことを揶揄されたこともあったんですけどね。すごく親身になって担当してくれた方と、"武器を増やそうとばかりしてメインの武器がない"、"いろんな音楽も作れるしいろんなこともできるけど、結局歌で何を歌っているのかわからない"という真剣な話をしていたなかで、でも、そういう生き方をしてきたからなって思ったんですよ。色とりどりの武器を持つことが好きだし、もう持っちゃってるし。ひとつのことをしたいなら、最初から1個の刀を磨いてきたと思うんです。でも、もういろんなものを持っているわけだから、いろんなものを持つものの頂点に行かなきゃっていう考え方になってるので、武器を増やすし、新しい扉を開いていく。だから、目的は定めずに今やれることだけをやろうという。その一個一個が本物であれば、レオナルド・ダ・ヴィンチのようになれるんじゃないかって思うんです。