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INTERVIEW

Japanese

Brian the Sun

2020年03月号掲載

Brian the Sun

Member:森 良太(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-復唱になりますが、私としては君や誰かを求めているニュアンスが多い印象を受けました。「サーチライト」然り。

20代でいろんな経験をさせてもらって、アメリカにも行かせてもらって広い世界を見たことで、国外と国内の違いは言葉と文化だけやなと思った。海外は日本より音楽という形のないものにお金を使う価値観はあるけれど、海外のミュージシャンも見つけてもらうために日々戦っていて。でも、見つかるか見つからへんかギリギリのラインの音楽を聴く優越感もあるし、自分のためだけのものやと思える音楽がこの世にひとつくらいあってもいいかもしれんし。聴いてくれる人にとって、ミュージシャンが食っていきやすくなるとか、見つかっていくとか、まったく関係のない話やないですか。

-そうですね。最近はそこを過剰に気にする人が増えているかなとは思います。ただ、好きな音楽を作る人を応援したいという気持ちは理解できるし、SNSが発達した現代ではそうなるのも必然なのかなと。

まったくその国のことを知らない人がフラットな状態でいろんな種類の音楽を聴いて、その中で一番いい曲を選べと言われたとして、必ずヒット曲を選ぶということはないと思うんです。でも、そういうフラットな見方をこの国ではできないようになっている。だからこそ、自分がいいと思う音楽がある人は幸せやと思います。そういう音楽が存在することがめちゃくちゃ幸福。

-Brian the Sunのようにいろんなジャンルを飲み込んでいて、対極のものが共存している音楽を必要とする人もいるし、必要なんだけど、まだ出会っていない人もいるんだろうなとは思います。Brian the Sunは心の奥にあるものを音楽にしようとしているから、カテゴリにハマる音楽にもならないのだろうし。ただ、文章に落とし込むのがすごく難しいので、ライター泣かせではあるんですけど(笑)。

あははは(笑)。"自分が思ってることってこんなに人に伝わらへんねや"と感じたきっかけは、インタビューやったかもしれない。やっぱり文字の制約があるからひと言でまとめなあかんし、誤解なく伝えるために喋りすぎた自分が帰り道とかにめっちゃ恥ずかしくなる。でも、人と対するってそういうことやな、書き手は書き手で戦ってんねやなというところに今は落ち着いてます。曲に対しても"自分が作ったものやから、誰にも触らせたくない"と思うこともあるし......でも、命を懸けて守りたいこだわりみたいなものは、まだないかもしれない。もっと成熟していかなあかんなと思ってます。今年30歳になるし、それなりにこれまでを凝縮したものを作っていかないとなとも思うし。

-何年か前に森さんがライヴのMCで"なんでこんなにひねくれているかというと、本当の自分は何を求めているかずっと探しているから。だから音楽をやっているし、いつも不安。自分の信じるものがないんだ"と言っていたんですけど。

うんうん。俺は昨日のMCすら覚えてないんで(笑)。

-(笑)そのあとに"そんな俺が愛しかないと思うから、これは核心に近いと思う"と言っていたんですよね。「スローダンサー」を聴いていて、そのMCを思い出したんですよ。今おっしゃった、"命を懸けて守りたいこだわりみたいなものはまだないかも"という言葉とも、繋がってくる気がして。

あー......そのMCで言ってることは、今も変わらないかな。

-「白い部屋」(2014年リリースの2ndフル・アルバム『Brian the Sun』収録曲)然り「月の子供」(2017年リリースのメジャー1stフル・アルバム『パトスとエートス』収録曲)然り、こういうディープ・サイドの曲は森さんの弾き語りありきの印象もあったんですけど、それをこれだけバンドで鳴らせてるというのは、新しいフェーズなのかなとも思って。

重たい感じの音でね。もっと重たくしたかったです(笑)。

-長く聴き続けている人間からすると、Brian the Sunがこういう面を持っている人たちであることを、もっと世の中に知ってもらいたい気持ちもありますが。

うちのライヴに来てくれてるお客さんもそう思ってるとは思うんですけど、「スローダンサー」を押し出して一点突破した結果に何が待ち受けているのか? と考えると、いろんなことが明確ですよね。物事はエスカレートしていくから、振り切っていくと世界が難しくなっていく気がする。......それを強く突き進めた先にあるものはBrian the Sunじゃないと思う。

-ソロ・プロジェクトを始めたのも、それが理由ですか?

そうっすね。ソロでやってることをBrian the Sunでやろうとは思わない。Brian the Sunという枠の中に自分が収まろうとしたときに、行きすぎたことはできないという感覚はあるから。ポップでもロックでも"この方向性をやりすぎた結果どうなるか?"というのは各方面で考えますよ。

-じゃあ、森さんはどうしたいんですか?

それがわかった瞬間が、ブランディングができるときなんでしょうね。"Brian the Sunってこういうバンドだよね"とひと言で言えないから、ブランディングができない(笑)。でも、ブランディングできることを望んでいるのかと考えると――ずっとそのふたつを行き来してる感じがするから、そういう意味ではなかなか難しいなぁと。世間に対する自分たちの見せ方は、考えれば考えるほどやりたくないっすね......。でも、やらないかんときもあるし。もう全曲MVにできたらいいんですけどね(笑)。

-たしかに、今作は5曲ともキャラがばらばらですしね。

だから、沖さんはしっかり、"「スローダンサー」にBrian the Sunの本質がある気がする"と書いてください(笑)。

-えぇっ、何それ(笑)。イメージを振り切りたくないみたいな話をしてたのに!

沖さんが感じたことを書いてくれて、それを読んだ人が"そうなんや!"と思ってくれるのは全然嫌じゃないんです。マジでそうやって広がっていったほうがいいと思うんですよ。でなければ沖さんがインタビューする意味なくなっちゃいますもんね。沖さんのカラーを出していただくからこそ読者も読む意味があるってもんじゃないですか。

-心強いお言葉ありがとうございます。最初の話に戻るんですけど、『orbit』の5曲を書いて以降、曲をコンスタントに書くようになって、森さんの中に変化などはありますか?

んー、そんなに感じてはいないんですけど(笑)、"とにかく曲をいっぱい書き尽くして、自分の中になんもなくなったときに出てくるものを見てみたいな"とも思っているので、いっぱい書きたいなと考えているところですね。山ほどアイディアはあるけど、それを置いといて腐らせてしまうことばっかりやった気がするんですよ。そのアイディアをちゃんと一個一個作品として作っていかないと、先に見えてくるものはそろそろないぞ? と思ってるところですね。内に向かってパワーを高めていくことでしか外には放てないですから。"ちゃんとやろ"って思ってます。俺は音楽家なので、ちゃんと音楽をやりたい。自分で痺れたい。"あー、かっけー!"って思いたいっすね。