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INTERVIEW

Japanese

Lucky Kilimanjaro

Lucky Kilimanjaro

Member:熊木 幸丸(Vo)

Interviewer:TAISHI IWAMI

-SNSが発達して、誰でも思ったことを第三者に向けて発信できる時代になって10年は経ちました。そこで今、歌が果たせる役割についてどう思いますか?

質問の趣旨に沿っているかはわからないんですけど、SNSが発達したことで、正解の数が増えたと思うんです。そうなると、今度は何が正解なのかわからなくなる。そして、とりあえず身近な人たちの価値観とか雰囲気に合わせていくように。でも、もっとパーソナルな、それぞれの個性があるわけです。だから、周囲の流れがどうだとか、SNSでこんな話があったとか、そこで自分がどうあるべきかを考えることもひとつかもしれないけど、これだけたくさん正解があるなら、自分が正解でもいい。そう思ってほしくて歌ってる部分はありますね。

-そこからの第2弾が「HOUSE」。落差が(笑)。

緩い曲ができましたね。これは完全にガス抜きです(笑)。「風になる」のあとにできた曲だったので、反動もあったんでしょうね。でも、そこまで強いメッセージがあるわけではないにせよ、歌詞は結構書き直しました。家にこもって寝まくったり、ひとりで好きなことに没頭したりしているのは、僕から見たたくさんの人たちなのか僕自身なのか......とか考えて、最終的に自分のことにしました。

-「風になる」と同じハウスが着想になってはいますが、こちらはループがクセになる感じよりも、全体の展開やコード感が心地よい曲になっています。

メロディアスにはなってますね。それは「風になる」があってのバリエーションとかではなくたまたまです。唯一考えたことといえば、一切カッコつけないで、ジャンルとかトレンドとかも置いといて、ダメな感じが出ればいいやって。まずアイディア・ベースで曲があって、そこに歌詞もガチガチなテーマを設けず乗せた、拡散的な思考で作った曲です。

-この曲のカップリング「車のかげでキスを」は、クラシックな方向を向きつつ、そこに新鮮な要素が。

コード感やキーボードを使うあたりはクラシックな要素で、低音の使い方を極端にしたり、808(リズム・マシン"Roland TR-808")っぽいベースをちょっと入れてみたり、余計なキックを加えてみたり、そこは今っぽいのかなと。ちょっと古いんだけど古くないようなことをするのが好きなんです。

-少し甘酸っぱくて切ない曲だと感じました。

夏っぽい曲が作りたかったんです。子供の頃、親によくキャンプに連れて行ってもらってたんで、そのときの思い出とか。あとは大学生くらいになって男女でどっかに行くといろいろあるじゃないですか。

-熊木さんの中にある青さを感じてほっこりしました。

"車のかげでキスを"と言いつつ、僕、免許持ってないんですけどね(笑)。

-Bill WithersとVan McCoyをプレイリストに入れたアーティストとして歌ったのはなぜですか?

Bill Withersの「Lovely Day」は、「君が踊り出すのを待ってる」のイメージのひとつとしてあったくらい好きなんです。Van McCoyの「The Hustle」は、フルートを使っているからその繋がりですね。アーティストの位置的にもちょうどいい感じがして。

-"ちょうどいい"とは? Van McCoyは熊木さんにとってどのような存在なのでしょうか。

肩の力が抜けていて、ただ楽しんでるだけの感じ。こんなにも素直に音楽をやっている人ってなかなかいないと思うんです。すごく価値がある。

-今回の話は、その素直さが鍵だと思うんですけど、そこにはカッコいいと思われたいとか、そういった願望はありますか?

別にどうでもいいと言ったら嘘になりますけど、そうなると僕のことばかり表現することになる。Lucky Kilimanjaroは"世界中の毎日をおどらせる"というテーマがあって、それは新しい価値観やライフスタイルの提案でもあるんです。だから自分がどう思われるかは、できるだけ排除しようと思ってます。

-新しい価値観やライフスタイル、そこは突き詰めて話を聞きたいです。

今って自分が好きなものに人が集まってくる世の中だと思うんです。そうじゃないことはコンピューターができるから。例えば、やたら文房具を集めてる人がいたとして、普通に考えたら無駄じゃないですか。でも、その人にしかわからない価値観がそこにあるから、話を聞きたくなる。生活に必要な物を整理して集めたらコンピューターのほうが優れてるわけで、そこが発達すればするほど、誰かの"好き"に興味が湧くんです。要するに、自分にどれだけ何かに対する偏愛があるかが大事になる。そこをみんなにも追求してほしいし、そういう世の中になってほしいなって。そこをLucky Kilimanjaroの音楽で表して繋げていけたらいいなと、思ってます。

-なるほど。改めてすごく腑に落ちる話です。

自分の"好き"って孤立すると怖いじゃないですか。でも、好きだと思ったことには理由がある。そこの追及をみんながやめちゃうと、社会的なストレスにもなりますし。

-"孤立すると怖い"と言ってくれる、熊木さんの優しさが好きです。

僕がそうですから。人ですから好き嫌いはある。でも嫌われる可能性を恐れて止めるのはもったいない。むしろ嫌いって、あるべき感情。好きと相対することがあってこそ面白い。そこは優しく言っていきたいですね。