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LIVE REPORT

Japanese

Lucky Kilimanjaro

Skream! マガジン 2021年05月号掲載

2021.04.04 @日比谷野外大音楽堂

Writer 稲垣 遥 Photo by 田中聖太郎

私たちが踊るのは、音楽が大好きだからだ。文字にすると至極当たり前なことだが、それを身に沁みて思う情景を、目の当たりにした一夜だった。

Lucky Kilimanjaro初の野外ワンマンであり、この時点でバンド最大キャパの日比谷野外大音楽堂公演。当日は夕方から雨予報だったが、そんななかでも、この4日前にリリースされたアルバム『DAILY BOP』の完成度の高さも手伝ってか、前日にチケットは完売。多くのオーディエンスが会場に集っていた。

開場中のBGMとして「雨に唄えば」が流れ、雨に備えレインウェアを身につけたオーディエンスが笑顔を咲かせるなどするなか、祝祭感溢れる民族的な音楽が大音量で流れると、メンバーがステージに姿を現していく。最後に熊木幸丸(Vo)が登場し、センターで勢い良く左腕を斜めに突き上げると同時に「太陽」がスタート。"今日みんな楽しみにしてくれたんでしょ?"熊木らしい口ぶりで宴に誘い出すと、大迫力の"踊れや!ほいやっさ!"のコーラスに冒頭から大盛り上がりだ。

続けて『DAILY BOP』のオープナー「Superfine Morning Routing」へ。不思議なエレピのフレーズが全身を柔らかく包み込むなか、縦ノリのサビにぶち上がる。イントロで手拍子が自然発生した「Drawing!」は音源以上にローが強く、ディスコ感強め。そのアウトロからラミ(Per)と柴田昌輝(Dr)のセッションへ。さらに「雨が降るなら踊ればいいじゃない」と、まだほとんど雨は降っていなかったが、みんなが共通して胸に抱いてこの場所まで来たであろう想いを冠した、この日のテーマ・ソングと言える1曲をここで投下。メロウなサウンドに身を任せフロアが気持ち良く揺れるなか、"回って回って"の部分では、メンバー全員でリズムに乗りながらその場でぐるりと回ってみせる、お茶目な動きもキュートで楽しい。そうして、もはや"雨どんとこい"な状態に仕上がったのとほぼ同時に、しとしとと雨粒が空から降り始めたもんだから、"もってる"としか言いようがない。

2ステップが新鮮な「初恋」、格段にロマンチックな「とろける」、「Sweet Supermarket」と彩り豊かなナンバーを挟み、最新作から洒落の効いた軽やかな1曲「ペペロンチーノ」を披露。"一緒に演奏するみたいな気持ちで"と熊木が促したクラップと、"うまくいかなくてもいいよ 作ろう"、"マッチベターベターベター"という歌詞が相応じ、気持ちがひとつになったグルーヴをみんなで作り上げていく様。演奏をストップし、全員が手を打つ音だけが響く瞬間。ライヴならではの途轍もない幸福感で心が満たされていく。

クラブのような狂騒モードを促した「ON」から、アウトロのフレーズをループさせてなだれ込んだ「春はもうすぐそこ」への繋ぎでも魅せ、「アドベンチャー」、「Do Do Do」と勇壮で力強く、葛藤と戦う者の気持ちを奮い起こすトラックを畳み掛ける。ハッピーに踊るのももちろん最高だが、こういったメッセージが前面に出たナンバーも、生だとより胸の深いところに突き刺さる。

ここで演奏が止み、熊木が改めて感謝の言葉を述べた。そういえばもう13曲MCの時間はなく、間奏などで熊木がひと言伝えるのみでノンストップで進行していた、とバンドのタフさに気づく。"今日、いろんな人がいると思います。東京にいる人とか、地方から来てくれた人とか、失恋した人とか、はたまたカップルで来てるとか、なんか新年度めっちゃ仕事やだなぁとか、ストレス解消するために来てくれた人とか。それぞれの物語を僕らの音楽に乗せて明日から踊れるようにしますんで、そうなるように歌いますので、みなさん楽しんでいってください"と思いやりのある言葉を届けたあと、"みんな踊ってる?"と熊木が言うと、"私が言わなきゃ始まらないでしょ。野音、踊れてる?"とまおたきこと大瀧真央(Syn)がお決まりの台詞を発したのを合図に、キラーチューン「Burning Friday Night」、「エモめの夏」と続ける。本降りになってきた雨の粒を照明が照らし、光がキラキラと反射している。自然を味方につけたスペシャルなダンスホールのできあがりだ。その下で踊り続けるオーディエンスも含めて、なんと美しいことか。

"『DAILY BOP』で一番気に入ってる曲"(熊木)と鳴らした「KIDS」。大人になるにつれて築いてきた"自分らしさ"に縛られてないか? と何かを始めるときの気持ちを思い出させてくれるこのナンバーを歌う熊木の姿は、真に迫るものがあった。また「ひとりの夜を抜け」も出色の出来で、いろいろと我慢を強いられることが多い今、生で鳴らされる飛びっきりのダンス・ミュージックに乗せた"好きな自分を諦めたくはないな"の一節に、自身を重ね合わせ、勇気を貰った人も多かったと思う。"ひとり"に寄り添う包容力と温かさに目頭が熱くなった。

素敵な夜もいよいよ大詰め。ファンからの愛されっぷりをフロアの反応から瞬時に実感した「HOUSE」から、神秘的な愛の歌「MOONLIGHT」へ。クラシカルなミュージカル風のサウンドとミラーボールの組み合わせは格別で、瞼の裏に焼きつく、うっとりする光景だった。そして、アルバムのストーリー通りに「おやすみね」を奏でる。"せっかくなので"と熊木が観客にスマホのライトを照らすよう促すと、人の数だけきらめく光の幻想的できれいなこと。熊木、ラミ、山浦聖司(Ba)、松崎浩二(Gt)、柴田と自身のパートの演奏が終わったメンバーから順にステージを去る。最後にシンセサイザーの一音を鳴らした大瀧は手で涙をぬぐいながら走っていった。

大きなアンコールに応えて、6人が改めて登場。熊木が"楽しかった? まおたきなんてめっちゃ泣いてんの(笑)"と大瀧を悪戯っぽくイジりつつ、"本当に楽しかったです! もっとすごい景色を見せたいなと思いました。本当にありがとう!"と重ねてお礼を伝え、オーディエンスも長い拍手で返す。ラスト・パートは、昨年の緊急事態宣言下で発表した「光はわたしのなか」を"今も戦い続けてる人のために"と演奏。"憧れのリキッドルームはおあずけ"という歯がゆかった歌詞を、"憧れの日比谷野音で歌うよ"に換えたのも粋だった。最後の最後の1曲として贈ったのは「君が踊り出すのを待ってる」。Lucky Kilimanjaroは、今この瞬間の楽しさをくれるだけじゃない。大事なのはその先だと、明日からの毎日を自らの意志で踊りながら生きていくための活力をくれるバンドだ。ステージをゆっくりと端から端まで歩きながら観客を見つめ、"待ってる"と届けた熊木と、それを盤石の演奏で支えた5人からは、その想いを確かに感じた。


[Setlist]
1. 太陽
2. Superfine Morning Routing
3. Drawing!
4. FRESH
5. 雨が降るなら踊ればいいじゃない
6. 初恋
7. とろける
8. Sweet Supermarket
9. ペペロンチーノ
10. ON
11. 春はもうすぐそこ
12. アドベンチャー
13. Do Do Do
14. Burning Friday Night
15. エモめの夏
16. KIDS
17. 夜とシンセサイザー
18. ひとりの夜を抜け
19. SuperStar
20. 350ml Galaxy
21. HOUSE
22. MOONLIGHT
23. おやすみね
En1. 光はわたしのなか
En2. 君が踊り出すのを待ってる

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