Japanese
Lucky Kilimanjaro
Skream! マガジン 2024年02月号掲載
2024.01.08 @東京国際フォーラム ホールA
Writer : 蜂須賀 ちなみ Photographer:石阪 大輔
Lucky Kilimanjaroが全国9都市を巡った秋のツアー"YAMAODORI 2023"。年を跨ぎ、1月8日に開催されたツアー・ファイナル。個人的にはこの日初めてLucky Kilimanjaroのライヴを体験したが、生バンドならではの肉体的な音像(打楽器2台体制でのビルドアップ~ドロップには高揚せざるを得ない)、クラブ・イベントさながらのシームレスな繋ぎでもって、観客の血を沸かせ肉を躍らせる、噂に違わぬ超ダンサブル空間だった。アンコールでは熊木幸丸(Vo)が"(東京)国際フォーラム、こんなに踊らせたバンドいる?"と言っていたが、たしかに、ひとりひとりがこれほど自由に踊りまくっているフロアは見たことがない。ポジティヴな感情もネガティヴな感情も抱えながら躍動するフロアは生命力に満ちていて、熱狂も祈りも詰まっているという意味で祭りのようだと感じた。
2024年一発目、そして2023年の集大成的な位置づけのライヴということで、この日バンドは、2023年リリースのシングル『後光』、『無限さ』収録の4曲すべてを披露したほか、「Burning Friday Night」では特大のシンガロングを巻き起こし、TikTokを中心に起きた同曲のバズを歓迎。"自由に"や"それぞれの踊り方で"といった声掛けと共にオーディエンスを誘いつつ、新しい曲にも長い付き合いの曲にも最新のバンドのモードを反映させながら、計27曲を演奏した。
心のハイライトは十人十色だろう。「Drawing!」からの「350ml Galaxy」というぶち上がり必至のオープニング。柴田昌輝(Dr)、ラミ(Per)のリズムを打ち出したアレンジの「後光」から、山浦聖司(Ba)のリフのみが残って「ひとりの夜を抜け」を導く展開。最高のライヴ・アンセムと化した「Burning Friday Night」では、松崎浩二(Gt)が熱量高いソロを披露し、観客をさらに熱狂させた。
また、曲間のインタールードに唸らせられた「エモめの夏」~「新しい靴」~「千鳥足でゆけ」で、付点のリズムを生かした「KIDS」~「太陽」を経て「ファジーサマー」でさらに盛り上がるのも、原曲のアップリフティング感はそのままにバンド・アレンジに昇華させた「初恋」~「靄晴らす」もいい。
大瀧真央(Syn)の音色がバンドのサウンドを重層的にさせるなかでの「山粧う」や、ほぼ暗転のなかで披露された「MOONLIGHT」は神秘的な佇まい。そして「I'm NOT Dead」から「無限さ」まで8曲を一気に演奏したクライマックスへ。本編ラストの「Kimochy」は、メンバーが前に出てきて、マイクを通さずに観客と共に歌うエンディングも心に残った。MCで出た"トライアンドエラー"というフレーズを引き継いで、アンコール1曲目「ペペロンチーノ」が始まる流れもスマートで心憎い。
ライヴ冒頭で熊木が"今日いろいろな感情を抱えて、ここに足を運んでくれたと思います。それぞれの感情があります。それぞれの人生があります。自分の気持ちのまま、2024年、踊りだしてほしいです"と伝えていたように、また、アンコールで大瀧が涙に声を詰まらせながら"今日ここでライヴできることが当たり前じゃないんだと思いました。今大変な状況の人たちにもパワーを送れたらと思います"と想いを打ち明けていたように、今年は元日から人々の生命と生活を引き裂く出来事があった。バンドがこの日最後に演奏したのは「君が踊り出すのを待ってる」。そして、4月21日に日比谷公園大音楽堂でバンド結成10周年を記念したワンマン・ライヴ"Lucky Kilimanjaro YAON DANCERS 2024 supported by ジャックダニエル"開催の発表もあった。音楽は逃げていかないし、Lucky Kilimanjaroとオーディエンスが10年かけて作り上げたダンス・フロアは揺るぎない。そのメッセージは会場の外にいる人にも向けられていたはずだ。
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