Japanese
Lucky Kilimanjaro
Skream! マガジン 2022年07月号掲載
2022.06.19 @パシフィコ横浜
Writer 稲垣 遥 Photo by 田中聖太郎
昨年11月の[Lucky Kilimanjaro presents. TOUR "21 Dancers"]ファイナルの、倍以上の客席数を誇るLucky Kilimanjaro史上最大規模、海辺の波風が心地いいパシフィコ横浜でのワンマン。バンドにとって挑戦だったであろうこの公演に集まったのは、最新フル・アルバム『TOUGH PLAY』に掬い上げられ、生でその音を浴びに来た人や、春フェスで彼らに誘われ踊りに来た人、すでに別の場所で本ツアーを体感し、その最後も見届けに来た人など様々だ。そして今回、親子での参加というのもよく目にした。この半年での活動ひとつひとつできっちりリスナーの心を掴み、明らかに層が厚くなったオーディエンスが大きなコンサート・ホールの客席を埋めていく――と、場内アナウンスが。注意事項を伝える通常のアナウンスかと思いきや、それを行っているのはメンバーの大瀧真央(Syn)であることが告げられ、客席が反応する。そうしたサプライズでも観客の気持ちを高めるなか、いよいよショーが始まった。
アルバムでは最後に据えられた楽曲「プレイ」がSE的に流れ、フロア中央に注がれた照明。フロントマン、熊木幸丸と思しき鼻歌も重なり、彼が歌いながら外へ出るための支度をするような場面を想像させると、「I'm NOT Dead」のドゥーワップが聴こえてきた。すると音に合わせてコミカルに足並みを揃えた6人のメンバーがステージ両サイドから登場。カラフルな衣装も相まってポップな始まりは、間口をより広げ、初めて彼らを観る人はもちろん、大人から子供まで誰しもを満遍なく楽しませたいという意志の表れのようにも思えた。そして熊木が"踊らないと!/踊らないと!"と広いステージを端から端まで走りながら歌ってフロアを焚きつけ、"ツアー・ファイナル、とても楽しみにしてました。みなさん今日は自由に楽しんでってください!"と「踊りの合図」へ繋いだのだった。
ボサノヴァのリズムを取り入れた同曲から、日本のお祭りやトライバルな空気を纏う「太陽」と、フィジカルに訴え掛けるナンバーを続けた幕開けのあとは、スロー・テンポなR&Bチューン「楽園」を鳴らす。グルーヴィなエレキ・ベースも効いていたし、照明を落とした中でピンクと青のライトが時折メンバーを照らすムーディな演出も功を奏し、恍惚として聴き入ってしまった。その流れで始まった「足りない夜にまかせて」では、真夜中のクラブでひとり、孤独を抱えながら洗練された音に身を任せるような没入感。さらに、そんなダウナーな"夜"を乗り越えるかのようにパッとフロアを明るく照らした「ひとりの夜を抜け」と、最新曲と従来の曲を、物語性を感じさせる展開で織り交ぜて聴かせるのが見事だった。
隙間のあるサウンドとパーカッションの強弱が心地いい、久々の披露となった「SAUNA SONG」、熊木がファルセットを聴かせる飛び切り甘い新境地「ぜんぶあなたのもの」など、メロウな空気を作り上げた中盤では、"ここに来てくれているみなさんに愛の歌を"(熊木)と「MOONLIGHT」を披露した。クラシカルで幻想的な音作りは、この温かなムードのホールという会場にもぴったり。"君がいることで僕がより煌く/僕も君にとってそうあれればいいな"の歌詞が観客の想いと重なるようで、美しい場面を作り上げた。
「Burning Friday Night」でフロア全体をサイドステップさせ、カラフルな照明とともに楽しい空間に仕立てたあとは、「ON」、「KIDS」と前アルバム『DAILY BOP』から強力なメッセージが乗ったナンバーをシームレスに届ける。このアグレッシヴなダンス・チューンに合わせ、フロアには鋭いレーザー・ビームが容赦なく注ぎ、大きなミラーボールからも光が反射、高い天井にもライトでアートが描かれた。先ほどの落ち着いた雰囲気が一転、会場が一気に煌めきに包まれたディスコへと生まれ変わり、驚きとともに思わず声が出そうになる。
かと思えば、いつの間にか用意されていたステージ中央のハイチェアに熊木が腰掛けて歌った「無理」では、ダウナーな歌唱も含めグッと大人な雰囲気に。シンプルに見せながら、シンセサイザーの大瀧が片手でバッキングを弾きつつ、もう片方の手でリードを弾くという玄人ぶりも印象的だった。続く「Headlight」ではリスナーに1対1で語り掛けるような距離感で、アルバムに込めた"好きを大事にしてほしい"という想いを、スポットライトを浴びながら歌う熊木の姿が胸を打つ。
ここまでですでに20曲を、緩急をつけながら、相変わらずMCパートなしのぶっ続けで鳴らし続けてきたラッキリだが、"ひと足先に最高の夏を! パシフィコー!"と熊木が叫びなだれ込んだ「エモめの夏」からは、その盛り上がりはまたひと回り大きくなった。そしてそのアウトロに"1でも2でも3でも4でも5でも6でもない"というフレーズが重なっていき、「週休8日」へ突入すると、いっそう揺れるフロア。我々の生活に向けラッキリ節全開で"休んでよ"と歌われるこの曲が、新曲でありながらどれだけ聴き手の心を掴んでいるかが伝わる。さらにこの曲ラストの"リラックス"の言葉がループしていくと"HOUSE"へと韻を踏む形で移り変わり「HOUSE」へ! "みなさん、あんだけ休んでって言ったのにまだ踊り足りないんですか?"なんて熊木の雄弁なMCもあり、ノンストップなだけでなく、ユーモラスな繋ぎ方で観客を笑顔にした。熊木のダンスにつられ、フロアも型にハマらない各々のダンスを踊り、ここで大団円......でもいいと思ったくらいだったが、なおトラックはループ。「果てることないダンス」で後ろまで飛び跳ねさせ、ゲーム音楽的なイントロから「人生踊れば丸儲け」をお見舞いしたのだった。
アンコールの拍手を受け、おなじみとなってきた、メンバーがジョッキを持って登場し乾杯するシーンから「350ml Galaxy」、初期の楽曲「SuperStar」とハッピーできらきらしたナンバーを2曲投下。なお伸びやかな歌唱を届けた熊木の体力にも驚きだが、それを受け踊り続けるフロアもかなり"タフ"だ。
この日初めて音が止んだ場面で、"本当にありがとう"と感謝を述べた熊木は、"僕たちは明日からみんなが踊り出せるように音楽をやっています。最後、一番自由に!"と「君が踊り出すのを待ってる」を披露。明るく照らされた客席に向かい、端からゆっくりとステージを歩きながら、ひとりひとりの目を見てエネルギーを受け渡すように歌う姿は包容力に溢れていた。
熊木はこのライヴ中、"喜びだけじゃなくて、悲しみや苦しみも踊りに変えられる"と発した。そんなふうに日常の中で抱えた様々な感情を昇華させる術を、誘い出すように教えてくれるLucky Kilimanjaroの音楽。その軸は結成時からずっと変わらないものの、この最大キャパのコンサート・ホール公演を経て、さらにその先が見えたような気がした宴だった。
そして彼らはまだまだ歩みを止める気などないようで、7月13日に新たな夏ソングを収めたシングル『ファジーサマー』をリリースし、その後また新たなツアーへ出発するとのこと。ラッキリの夏が、今年も始まる。
[Setlist]
1. I'm NOT Dead
2. 踊りの合図
3. 太陽
4. ZUBUZUBULOVE
5. 楽園
6. 足りない夜にまかせて
7. ひとりの夜を抜け
8. Drawing!
9. 雨が降るなら踊ればいいじゃない
10. SAUNA SONG
11. ぜんぶあなたのもの
12. 初恋
13. MOONLIGHT
14. Do Do Do
15. 無敵16. Burning Friday Night
17. ON
18. KIDS
19. 無理
20. Headlight
21. 夜とシンセサイザー
22. エモめの夏
23. 週休8日
24. HOUSE
25. 果てることないダンス
26. 人生踊れば丸儲け
En1. 350ml Galaxy
En2. SuperStar
En3. 君が踊り出すのを待ってる
Lucky Kilimanjaro
RELEASE INFORMATION
デジタル・シングル
『ファジーサマー』
2022.07.13 ON SALE
1. ファジーサマー
2. 地獄の踊り場
TOUR INFORMATION
[Lucky Kilimanjaro presents.TOUR "YAMAODORI 2022"]
9月11日(日)大阪城音楽堂
9月18日(日)KT Zepp Yokohama
10月1日(土)石川 金沢 Eight Hall
11月3日(木・祝)北海道 札幌ペニーレーン24
11月6日(日)宮城 仙台Rensa
11月12日(土)福岡 DRUM LOGOS
11月13日(日)HIROSHIMA CLUB QUATTRO
11月18日(金)Zepp Nagoya
11月25日(金)東京LINE CUBE SHIBUYA
[チケット]
■"LKDC β"先行予約(抽選):~7月4日(月)23:59
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