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INTERVIEW

Japanese

Lucky Kilimanjaro

Lucky Kilimanjaro

Member:熊木 幸丸(Vo)

Interviewer:TAISHI IWAMI

-「風になる」はハウスを軸としたなかで、ループの面白さが特に際立っています。

最初にメインとなるシンセのリフができあがった段階で、いい曲になりそうな感触がありました。でもそのリフのインパクトが強くて、さっきも話しましたが言いたいこともはっきりあったから、あまり長い曲、感覚的には4分半とかにすると、ちょっとくどいと思ったんです。まずはサクッと、このシンセのリフと"風になる"という言葉が刺さればいいんじゃないかと。だから、あえて展開を加えて厚くすることもできたんですけど、ループをレイヤーで変えていって、3分で終わらせました。

-まさに、最初はシンセのリフと"風になる"という言葉の繰り返しが鮮明に入ってきてクセになる。でも曲が短いから、ちょっと物足りなくて、繰り返し聴いてしまうんです。

そうなんです。本当はもう1周2周あったんですけど、3分に収めてちょっと物足りないくらいにしたほうがいいと思って、削ったんです。

-そして、何度も聴いていると歌詞の面白さが見えてきて、もうすっかり虜です。

なら良かったです。これ以上長くしてたら、僕自身も変に満足してたというか、お腹いっぱいになってたかも。

-"戦略ベース"ではなく"興味ベース"で曲を作っていると仰っていましたが、ここまでシンプルにループする曲を、サビの強度が重要だとされるドメスティックなポップスのフィールドに放つことに関しては、どう考えていたのですか?

僕が曲を作ってバンドをやっていることには明確な世界観やヴィジョンがあるから、そういうことは日を追うごとに、むしろメジャーに入ってからのほうが考えなくなってます。みんなそれぞれ、自分自身が楽しいと思えることや目標としていることに没頭できるようになってほしいから、そこに対してどうアクションするかが何よりも大切なことなんです。

-その純度が高まってきてるんですね。

だから商業的な目線や実績から見て、サビが弱いとか、展開がどうとか、そういうことじゃないんです。

-周りの出来事を気にしだすと、本末転倒になりますよね。

はい。メッセージが伝わる形はいくらでもある。そのなかで自分たちが本当にやりたいことを切り取って、それが聴いた人の生活の一部となったときに、初めて"ポップ"として成り立つと思っています。

-だからなのか、メジャーに入ってからのほうが、自由で力が抜けているように思います。

今の流行とかは、まったく気にしてないですね。新しい音楽を聴くこと自体は好きなので、要素としては入ってくるんですけど、作為的にそうはしない。曲がそれを必要としているかどうかなんです。

-曲に対する目的意識が先にあると。

それは曲によります。「風になる」は軽快でいい感じのリフとビートができたから、ここに今一番伝えたいメッセージを乗せるのがベストなんじゃないかと思ったんです。そうではなく、興味の赴くままに作ったトラックがあって、あとで歌詞を考えていくこともありますし。

-カップリングの「君が踊り出すのを待ってる」も、ある意味「風になる」以上に強いメッセージ性を感じます。まず"素敵なダンスミュージック/ここ日本にも溢れ/ところで君は踊れてる?"という問い掛けにドキッとしました。

最近の日本の音楽って、踊れるビートの音楽が多くてすごく面白い。今までのノリって、スネアありきのものが多かったと思うんですけど、BPMに対して倍とか半分とか、ハイハットとキックで楽しめるような曲が、かなり増えてきたように感じています。海外との誤差とかよく言われますけど、もうそこに"日本だから"という区切りはないんじゃないかと。

-はい。

でも、音楽としてそういうものはたくさんあるけど、それが世の中に浸透しているのかどうかとなると、また別の話で。学校や会社からの帰り道に踊るようなことがあってもいい。もっと気楽に踊ってもいい。そういう身体的なこともありますし、そこから、もっとみんなの心が躍る世の中になればいいなって、そういう思いもあります。

-情報に対して、"あるべき論を並べるが/なんのための「あるべき」なのわからない"というフレーズは、ここまでに話されたLucky Kilimanjaro流の提案としては、結構ギリギリの手厳しさがあるように感じたのですが、いかがですか?

そうですよね。僕は、人の冷笑的な感じがあまり好きじゃないんです。斜めに見続けていると、自分の素直ささえ失うような気がして。SNSにはいいこともたくさんある反面、何かと叩きやすい空気もある。そこには僕個人の価値観として、異論を唱えたいと思ったんです。人に対してどうこう言う前に、自分はどうなんだって。僕自身も常に突き詰めようと思っていることなんです。