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INTERVIEW

Japanese

そこに鳴る

2018年05月号掲載

そこに鳴る

Member:鈴木 重厚(Gt/Vo) 藤原 美咲(Ba/Vo)

Interviewer:山口 智男

そこに鳴るらしいやり方でメタルにアプローチして、物議を醸した『METALIN』から約1年3ヶ月。緻密なアンサンブルと超絶テクを誇る彼らが早くも4作目のミニ・アルバム『ゼロ』をリリースする。前2作で、新たな扉を開けてきた彼らが今回挑んだのは、いかに作為なく本来のそこに鳴るらしさを表現するかだった。"ゼロ"というタイトルは原点回帰を思わせるかもしれない。しかし、今回の挑戦は単なる原点回帰で終わらず、新たなそこに鳴るの指針になったようだ。"4作目だけど、これが基準になるのかな"と語る鈴木重厚と藤原美咲にその理由を訊いた。

-作為を持たずに自分の想いに対して、どれだけピュアに作れるか。今回の作品は、そういう作品なんだそうですね。

鈴木:前作の『METALIN』(2017年リリースの3rdミニ・アルバム)は意図を持って作った曲が多かったんですよ。それは、そこに鳴るが進む道として、そのとき選んだ最善の手段だったんですけど、作っている側と聴いてくれる側の間に価値観のギャップがあったようで、聴いている側は案外、(前作のような作品を)求めていないんだってことがわかったんです。前作のリリース・ツアー(2017年3月から4月にかけて開催した"そこに鳴る「METALIN」RELEASE TOUR 2017")のときに"どの曲が好きですか?"、"どのアルバムが好きですか?"とお客さんに聞いてみたら、総じて1stミニ・アルバム(2015年リリースの『I'm NOT a pirolian』)の曲だったり、2ndミニ・アルバム(2016年リリースの『YAMINABE』)に入っている昔の曲の再録だったんです。前作を作った当時の自分の感覚からすると、1stや昔の曲っていうのは稚拙というか、何も考えずに作っていたので、"これ、ええんやろか?"ってところが結構あったんですけど、結局お客さんが求めているのはそういうところなのかなっていうのがあって。だから、こんな曲を作ろうという作為というか、そういった意図をできるだけ排除して、無の境地で作った方がいいかな、と。今回の収録曲の中で「掌で踊る」が最初にできたんですけど、前作の取材に行く途中、車の中で思いついて。車内でナンバーガールを聴いていたんですけど、やっぱオルタナやなって(笑)。そのときはオルタナっぽいことがしたいという感じで作っていたんですけど、結果的にそれが(僕たちの)素に近かった。自分の根底にあるのがオルタナ寄りなんで、「掌で踊る」を作ったことで、そういう作為をなくそうって方向に意識が向いたんだと思います。

-作為をなくして、できるだけ無の境地で作ろうって、言葉で言うのは簡単でも、実際やるとなると難しいんじゃないかと思うんですけど、実際作ってみていかがでしたか?

鈴木:「physical destrudo」は昔の曲なんですね。3rdデモに入っている曲だったんですけど、そのときはほんまに何も考えてなくて、だからほんまに無作為なんですよ。「physical destrudo」は今聴いたら、全然そんなことないんですけど、作った当時はド直球の邦楽ロックのつもりで作っていて。結果的にまったく邦楽ロックにはならなかったんですけど、そこが大事だと思っています。そういう意味で、「physical destrudo」は一番ピュアなんです。何も考えずに作った結果、自分らしいセンスが出ちゃっている。今回作った他の新曲に関しては、そういうセンスを出すことが目的になっているから、ある種、そこに鳴るがそこに鳴るのコピバンをしたみたいなことにはなっているんです。厳密に言えば、ほんまにピュアで何も考えていないのは、「physical destrudo」だけで、それ以外の曲は、どれだけ自分のセンスを研ぎ澄ますかっていう曲なんだと思います。だから無というか、「physical destrudo」で結果、出てきたセンスを、今、改めて拾い上げて研ぐみたいなイメージでしたね。

-そこに鳴るらしさがなんなのかを、今一度意識しながら、それを研ぎ澄ましていった、と。その、そこに鳴るらしさっていうのは、一度ふたりの間で何か具体的な言葉にしたんですか?

藤原:それはしていないです。

鈴木:ただ、今回「physical destrudo」を入れたいと僕が言ったら、最初、藤原は"えぇ!?"みたいな感じだったんですよ。でも、改めて聴いてみたら、"これヤバいな"ってなったんです。そういう"ヤバいな"ってところが"らしさ"だっていう認識はお互いにあると思うんですよ。

藤原:共通の認識は持っているんですけど、それを言葉に表せって言われたら、なんなんやろ? ってなりますね。

-藤原さんは、最初、なぜ「physical destrudo」を再録することに乗り気ではなかったんですか?

藤原:面白い曲だという認識はあったんですけど、新曲と並べると浮いてしまうんじゃないかと思ったんです。"ハチャメチャな曲"っていう作った当時のイメージが残っていて。だから家で練習しているときは、"ほんまにこれやるんかな?"って感じだったんですけど、改めてレコーディングしてみたら、ハチャメチャななかにちゃんとまとまりがあって、そこが面白かったので、入れて良かったです。

-再録するにあたってはアレンジを変えたんですか?

鈴木:ほぼ変えてないです。ピロリロリンっていうのをちょっと入れたぐらいで(笑)。

藤原:あとはハモリをちょっと変えて――

鈴木:拙すぎるところを、拙いぐらいに抑えるっていうのを2ヶ所でやっただけで、基本的には、(当時の)まんまです。その拙さを消してしまったらおいしくなくなるんやろなっていう。頭の"D-E-S-T-R-U-D-O"なんて、今だったら恥ずかしくてできない(笑)。絶対にできないけど、変えちゃったら――

藤原:この曲のおいしさがなくなってしまうんですよ。