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INTERVIEW

Japanese

そこに鳴る

 

そこに鳴る

Member:鈴木 重厚(Gt/Vo) 藤原 美咲(Ba/Vo) 斎藤 翔斗(Dr/Vo)

Interviewer:山口 智男

そこに鳴るがTVアニメ"魔女と野獣"のオープニング・テーマとして書き下ろした「相聞詩」を表題に掲げたCDシングルをリリース。その「相聞詩」はそこに鳴るにとって、初のアニメ・タイアップ曲。どのように取り組んだのか、ライヴの本番直前のメンバー3人にリモート・インタビューで、楽曲の仕上がりに対する手応えも含め訊いたところ、そこに鳴るの新たなスタンダードという自信を窺わせる言葉が返ってきた。

-以前鈴木さんは、そこに鳴るの曲はアニメのテーマ・ソングにぴったりだと思うからぜひやりたいとおっしゃっていましたが(※2021年8月号掲載)、今回初めてTVアニメのオープニング・テーマを担当していかがでしたか?

鈴木:未だに現実感がないですね。本当なのかなって気がしてます。

-えっ。でも、アニメの放送はもう観たんですよね?

鈴木:はい、観ました。観たんですけど、オープニングで自分の声が聴こえてきたとき、"なんでやろ!?"って思いました(笑)。

斎藤:僕はもうシンプルに画面の前で、(※拳を握って)ってなりました。

-現実味があったわけですね?

斎藤:そうですね。僕は"やったー"という感情のほうが強かったです。

-藤原さんはいかがでしたか?

藤原:私もアニメが始まって、実際に曲が流れるまでは信じないぞというか、ほんまかなという気持ちを持ちつつ、配信時間になるまでテレビの前で正座して待っていたんですけど......。

鈴木:正座してたんや。

藤原:来るぞ来るぞと思いながら、実際に自分たちの曲がオープニング・テーマとして流れてきたときは、嬉しさが極まってもう感無量になると同時に、ほんまやったんやと思いました。

-なぜそこまで疑い深くなっていたのかわからないですけど(笑)、今回どんないきさつで、そこに鳴るに白羽の矢が立ったのでしょうか?

鈴木:アニメの担当の方がそこに鳴るのことを気に入ってくれたそうです。

藤原:『METALIN』(2017年リリースの3rdミニ・アルバム)の頃からチェックしてくれてたそうで、作品とのマッチングを考えて、今回声を掛けていただいたんです。古閑(裕/所属レーベルの社長)さんから、"「魔女と野獣」のオープニング・テーマ決まりました。おめでとうございます"というLINEがぽんと来て、"ほんまに!?"って。

斎藤:その1文だけしか来なかったから、最初は半信半疑で。

-あぁ~。だから疑い深くなっていたわけですね。原作のマンガはご存じだったんですか?

鈴木:もともとは知らなかったんですけど、お話をいただいてからメンバー全員で読みました。

-では曲を作るにあたっては、まず原作を読み込むところから始めた、と。原作を読んだときの第一印象は?

鈴木:めっちゃ良かったです。渋いんですよ。説明せずに空気感でわからせるみたいなところがあって、その感じは結構好きですね。手取り足取りチュートリアルからやります、みたいな感じじゃないところが逆に良かったんですよ。

-ストーリーを含め、世界観はいかがでしたか?

鈴木:そこに鳴るにぴったりだと思いました。ほんまに違和感がないと思います。この原作に僕らをあててくれた人は、よくわかってらっしゃるなと思いました。ありがたいです。

-「相聞詩」の制作の過程を振り返りたいのですが、原作を読み込んで、まずはどんなところから取り組んでいったのでしょうか?

鈴木:なんとなくの雰囲気として、中世のヨーロッパっぽいというか、産業革命らへんの煙がめっちゃ立ち込めているイギリス――時代としてはかなりかけ離れていますけど、そういう空気感がなんとなく出たらいいなというところから、頭のコード進行とオケを作って、そこから広げていきました。

-アニメ・サイドからのリクエストやオーダーはなかったんですか?

鈴木:そこまではなかったね?

藤原:うん。"そこに鳴るらしくやっちゃって"くらいのオーダーでした。

-さっきおっしゃっていた空気感をイメージしてから、具体的にはどんな曲に仕上げていったらいいと考えたんでしょうか?

鈴木:そこに鳴るらしさを求められていたので、展開が多くて、サビに入ったらドンと来る感じは絶対いるやろなと思って、それをテレビ尺の89秒にギュッと凝縮したんですけど、僕自身が2010年代のアニソンが好きなので。そもそも展開の多さとかメロディのあざとさとかはそこから影響を受けているんで、そういうところを出すべきなのかなと思ってました。

-鈴木さんが作ったデモを聴いて、おふたりはどう思いましたか?

斎藤:デモが送られてきて、聴いた瞬間に"これやな"ってしっくり来ましたね。

藤原:私も"そうそうそう!"って思いました。"魔女と野獣"のオープニング・テーマをそこに鳴るがやるんだったら、というテーマの120点、最適解を叩き出してくれたんじゃないかという印象でした。めちゃくちゃいいなぁと思いました。

-ストリングスとピアノも使っていますが、アニメの世界観に相応しいサウンドがそれだったということですか?

鈴木:そうです。ただ、迷ったんですよ。正直、そこまで"ギターギター"しているわけでもないから、"そこに鳴るです"って曲を出すときにこれでいいんかなと思いつつも、やっぱり"魔女と野獣"の曲なんやったらこうなるだろう、ってところを優先しました。ロックというか、バンド然としすぎてもちょっと違うのかなって。これが初タイアップじゃなくて、もう何度もやってますっていうんだったら悩まなかったと思うし、別にストリングスやピアノが入っている曲がこれまでなかったわけではないし。ただパブリックイメージとして、「掌で踊る」(2018年リリースの4thミニ・アルバム『ゼロ』収録曲)とか「業に燃ゆ」(2019年リリースの5thミニ・アルバム『一閃』収録曲)とかがあると思うので、そこからかけ離れるのはどうなのかなというのもあるんですけど、作る側の人間としては自然とピアノやストリングスが入っていきました。

-オープニング・テーマに相応しい曲として完成度を追求した結果がこれだった、と。

鈴木:そうです。

-歌詞はどんなふうに書いていきましたか?

鈴木:原作はまだ連載が続いているんですよ。だから出ているところまで読んだうえで何をテーマに書いたらいいだろうかと考えて、だったらギドとアシャフという主人公ふたりに焦点を当てるのが一番いいのかなって書き始めたんですけど、今回はなかなか難しかったですね。だいぶ時間がかかりました。

-主人公ふたりに焦点を当てつつ、そこにテーマを見いだすのが難しかったんでしょうか?

鈴木:テーマとしては、愛情とか信頼とかになってくると思うんですけど、物語の表面上そこが見えにくいというか、原作を読んで必ずしも"そうだね"ってなるわけじゃないから、そこをあからさまにしてしまうと"それはちゃうやろ"ってなりかねないかなと。だから、香らせるぐらいのニュアンスで表現しようと思って。それで"相聞詩"というタイトルにしたんですけど、そこのバランスが難しかったです。