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INTERVIEW

Japanese

そこに鳴る

そこに鳴る

Member:鈴木 重厚(Gt/Vo) 藤原 美咲(Ba/Vo) 斎藤 翔斗(Dr/Vo)

Interviewer:山口 智男

カップリングの「綻んで爆ぜれば」はわりかしイケメン寄り


-「相聞詩」を聴きながら、個人的には復讐がテーマというか、モチーフとしてあるんじゃないかと思いましたが。

鈴木:あ、それはそうですね。もちろん"魔女と野獣"の曲ですけど、僕の曲でもあるんで、いつもの自分の語彙感というか、感覚みたいなものは出すべきなのかなっていうのはありました。原作のメイン・テーマにも復讐があって。結局、復讐のあとの虚しさとか、復讐に限らずですけど、そういう虚無感みたいなところが自分のボキャブラリーの根本だったりするんで、そこはリンクするかなっていう感覚はあります。

-歌詞を書くときに鈴木さんならではの語彙感は意識したんですか?

鈴木:いえ、全然全然。これまでも意識したことはなくて。簡単な言葉を使うのをやめていくっていう感じですね。

-"相聞詩"というタイトルは、"魔女と野獣"のオープニング・テーマとしてぴったりですね。

鈴木:それは嬉しいです。

-"相聞歌"って男女間の恋愛だけを歌っていると思っていたんですけど、調べてみたら男女に限らず、兄弟、友人の間の親愛を歌うこともあるそうで。その意味では、主人公ふたりのキャラクター設定や関係性にぴったりだと思いました。ただ、"相聞詩"って本来は"相聞歌"と書くのが正しいんですけど、なぜあえて"詩"の字を当てたんですか?

鈴木:"相聞歌"のままだと違う気がして変えたんですけど、そのほうがイメージに合うのかな。僕、消去法が多いんですよ。何か考えるとき、"なんか違うな"という感覚がなくなるまで調整するっていう。だから今回も"相聞歌"だとなんか違うなって調整していって、"詩"を当てたときに"違うことはないな"ってなった、という感覚ですね。でも、"相聞詩"のほうが登場人物のイメージに近い気もしますね。

-その「相聞詩」、藤原さんと斎藤さんの演奏面の難易度はいかがでしたか?

藤原:そんなに苦労はしなかったです。テクニック的にも特別なことはしてないですね。だからノリ感とか音色で、曲をどう彩れるかってところにもしっかり目を向けられました。私、ベースは曲の展開とか、ドラム・フレーズとか、ギターのニュアンスに合わせて、フレーズごとに音色を作りながら曲を彩るというか、深みが出るように考えるんです。ただ、主張しすぎるのは違うと思うので、今回も歌に寄り添うことを一番意識して、歌の邪魔をせずにしっかり曲に深みと奥行きが出るようにプレイしています。

-斎藤さんは?

斎藤:ドラムだけで言ったら、そこまでではなかったですね。ただ、僕が入ってからそこに鳴るは3声のハーモニーを武器にしているんですけど、歌いながらということを考えると最高難易度ぐらい難しかったです。レコーディングはドラムと歌は完全別なので、ちゃんとドラムと歌を一緒にやるまで、どこで何が噛み合うのかわからないんですよ。「相聞詩」は実際に3人で合わせてみると、"ここで来る!?"みたいなところに歌が来ることが結構多くて。もちろん、そこに挑戦するのが面白かったりはするんですけど、この曲のBメロとかサビは、歌いながらドラムを叩ける人はいないんちゃうかな。それぐらい難しいです。

-鈴木さんのギターはイントロのリフぐらいで、あとはほぼバッキングに徹していますね。

鈴木:あんまり表に出てこないですね。ギターが前に出ちゃうと、どうしてもうるさい印象になっちゃうんで。この曲は、それよりも儚さがあったほうがいいだろうという判断でそうなっていますね。「氷上の埋葬」(2020年リリースのクリスマス・コンピレーション・アルバム『HAPPY CHRISTMAS FROM SHIMOKITA』収録曲)もそうなんですけど、あれぐらいの距離感がいいと思いました。

-「TV Size(相聞詩 <TV Size>)」はアコースティック・ギターのコード・ストロークがフル・バージョンよりも多めに鳴っているところが面白い。

鈴木:いきなり入ってくるアコギですか?

-そうです。

鈴木:もともと、あれがある体で作っているというか、「TV Size」から作っているんです。だから、あれが本来の姿といえば本来の姿なんですけど、フル・バージョンを作っていったときにいらないなと思って取ったんです。フル・バージョンはアウトロもないんですけど、そういう構成になると余計アコギもいらないってことなりました。

-そういうアレンジの違いを聴き比べるのも面白いですよね。この曲、アコギはずっと鳴っているんですか?

鈴木:鳴ってますね。ただ、サビは音源のアコギですね。そのほうが馴染みが良かったんです。

-ということは、終盤にいきなり鳴るアコギは本当に鳴らしている?

鈴木:そうです。マイクで録りました。

-そういう使い分けもするんですね。CDにはさらに「相聞詩」の"instrumental"も収録されていて、みなさんがどんな演奏をしているのかがよりわかるという意味で、聴きどころになっていると思いました。この「相聞詩」がどんなふうに広がって、バンドの活動に返ってきたらいいと考えていますか?

斎藤:僕らのことを知らない方にとって、そこに鳴るの入門編になるような気はしています。

鈴木:「掌で踊る」は一回置いておいて、新しいスタンダードになったらいいと思いますね。

斎藤:逆に「相聞詩」から掘り下げていって「掌で踊る」を見つけてもらったり、最新の曲もどんどん聴いていってもらったりしたら嬉しいですね。

-カップリングの「綻んで爆ぜれば」についても聞かせてください。ダンサブルなポップ・ソングを、そこに鳴るらしいアクロバチックな演奏とサウンドに落とし込んだという印象がありましたが、カップリングにこの曲を選んだのはどんな理由からだったんですか?

鈴木:「相聞詩」と一緒に何曲か録っていて、「相聞詩」で僕らのことを知った人が聴いたときに、好きになってもらえるんじゃないかなっていう。他に録った曲と比べて、わりかしイケメン寄りの曲を選びました。

-イケメン寄りってどういうことですか(笑)?

藤原:そのときは、普段やらない感じの曲を多めに録っていたんですよ。その中で正統派というか......。

斎藤:ギターが常にジャキジャキしていて、わかりやすくかっこいい曲です。

藤原:音がいっぱい鳴っていて、速い曲ですね。

-演奏面での聴きどころは? 

鈴木:もちろん全部です!

-いや、それはもちろんなんですけど、そこをもうちょっと噛み砕いてもらうと?

斎藤:ラスサビの畳み掛けがめっちゃかっこいいと思います。

鈴木:あそこはいいね。

斎藤:最後サビをもう1周するんですけど、3拍子に変わって、なおかつ全パートが手数を足しながら全員が歌っているんです。あそこは"おぉ~"となると思います。

-そういう畳み掛けるようなアレンジは、デモの段階からそういうふうになっているんですか?

鈴木:デモの段階からですね。で、そのままスタジオで合わせずにレコーディングに入ります。僕ら、いつもレコーディングの前にスタジオで1回演奏してみようっていうくだりがなくて。

斎藤:僕はなくて全然いいと思いますけどね。あったらあったでいいこともあるんでしょうけど、たぶんそこに鳴るにとって不純物が入るのは良くないと思っているので。鈴木さんがバッて持ってきたやつを忠実に再現しつつ、いかに自分らしさを出すか。そこに挑むのがいいと思います。

-そのほうが、そこに鳴るとしてより純粋なものになる、と。

藤原:スタジオで合わせたとき、"ここ、演奏できひんからやめよう"ってなるのもイヤなんですよ。そうなっちゃったら表現を制限してしまう気がして面白くないから、そういう過程は省きたいんです。レコーディングを終えてから初めてみんなでスタジオでバンド演奏してみて"こんなん無理やろ。なんでこんな曲作ったんだ!?"って困るのも楽しいんですよ。自分たちで自分たちを追い詰めるタイプなんです。

-「相聞詩」をライヴで披露するのはリリース・ワンマン・ツアー"魔女と野獣OP「相聞詩」release oneman tour 2024"からですか?

藤原:そうです、2月23日の名古屋が初日です。シングルCDのリリース・ツアーなのでセットリストの自由度が高く、かなり楽しみながらセットリストを組んでいます。この新曲2曲が入ることでどんな化学反応が起こるかがすごく楽しみですね。