Japanese
そこに鳴る
Skream! マガジン 2019年03月号掲載
2019.01.29 @下北沢SHELTER
Writer 山口 智男
デビューから3年9ヶ月。そこに鳴るが、彼らにとって初めてとなるワンマン・ライヴをついに開催した。多くのファンがこの日を心待ちにしていたに違いない。場内は身動きできないほどギュウギュウだ。開演間近になっても入場者は途切れない。"一歩ずつ奥に進んでください!"とスタッフがすし詰めになったフロアに声を掛けている。満を持して挑む初ワンマンに、これ以上相応しいシチュエーションはなかったはず。あとは思いの丈を演奏とともに観客にぶつけ、ノックアウトすればいいだけだ。
映画を観るように楽しんでほしいというメッセージなのだろう、映画の上映開始を連想させるSEに被せるように、鈴木重厚(Gt/Vo)の速弾きから「pirorhythm stabilizer ~only your world~」に雪崩れ込むと、間髪いれずに鈴木と藤原美咲(Ba/Vo)がタッピングをリレーする「self connection」、さらにふたりの超絶プレイに負けじと志雄(Support Dr)がドラムを連打する「re:program」へと繋げ、スタート・ダッシュをキメる。そして、一気に加速した演奏に、声を上げ、掲げた手を振って応えていた客席に"唯一アホになれる曲です!"(鈴木)と「METALIN」を投下。"声を出せますか!?"と鈴木が煽ると、思ったように身体を動かせないすし詰め状態のなか、それでも観客たちが身体を動かし始めた。
この日バンドが演奏したのは、アンコールも含め、これまでの活動の集大成とも言える新旧の全20曲。アクロバティックな超絶プレイ、男女ヴォーカルの掛け合いが紡ぎ出すメランコリックなメロディ、そして怒濤の演奏というそこに鳴るサウンドの真髄をこれでもかと見せつけながら、「表裏一体」ではピアノを同期で鳴らしたり、4月3日にリリースする5thミニ・アルバム『一閃』から披露した「諦念」では、打ち込みのトラックを使って、鈴木がギターを持たずにハンド・マイクで歌ったりしながら、型にとらわれず、自由に音楽に取り組んでいる現在のバンドの姿もアピールした。下北沢に来るたび食べるステーキが"おいしいんだけど、味にムラがある"と語った藤原のMCも、会場を和ませてから再びぐいっと盛り上げるバンドの加速力というか、瞬発力を見せつけたと考えるなら、話す意味は大いにあった。「エメラルドグリーン」以降の中盤のブロックは、曲が持つ爽やかさ、切なさ、軽やかさ――バンドが曲作りにおいて試行錯誤を繰り返してきたことを印象づけるポップな魅力が観客を釘づけにした。
そして、"考えがこんがらがったこともあったけど、18年、迎合する必要はないと気づきました。これからは自分がかっこいいと思うものを磨き続けるだけです"と鈴木が新たな決意を語った後半戦は、そこに鳴るの新たな代表曲となった「掌で踊る」など、再び激しい曲の数々を大団円に向かって、演奏の熱をさらに上げながら畳み掛けていった。
そこで終わっても十二分に満足度はあっただろう。しかしこの日、彼らはそこに鳴るの未来を観客に予感させるためアンコールに応える必要があった。『一閃』をリリースすることに加え、それに伴うツアーのファイナル公演についての"大きな会場を押さえました"(藤原)という発表は、ファンにとって嬉しいものだったはず。そして、前述した「諦念」で新機軸をアピールすると、"大きなバンドになるので、一緒に歩んでいきましょう。ついてきてください"と鈴木が語り掛けたその想いを観客とバンドがひとつのものにするため、最後の最後に「新世界より」を披露。"みんな、歌える?"という鈴木の呼び掛けに応え、眩い光の中、"オーオーオー"という観客のシンガロングが響きわたったのだった。
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