Japanese
FINLANDS
2021年04月号掲載
Member:塩入 冬湖(Vo/Gt)
Interviewer:石角 友香
-なるほど。歌詞の"今夜とっておきのノイズだけを持って/遠くへ行くんだよ"の、"ノイズ"っていうのは塩入さんの脈拍や、血流のように感じたんです。
車の中や、イヤホンの中から流れてる音楽と自分だけでどっかに行けるぐらいの強さを、私たちはみんな持ってるんだなって思って書いた歌詞ですね。今までいろんなところのインタビューで、"変化が怖くなくなりました"っていうのを何年か言ってきたなと思ったんですけど、それって、"怯えないで大丈夫だよ"と自分に言い聞かせてる部分も込みでだったと思うんです。でも、今回は変わっていくことが楽しくて仕方なかったんで、人間本来そういう心もあるべきなんだなって感じましたね。
-中盤、スロー・テンポで澄み切った美しい曲があって、「ナイトハイ」は特に美しいなと。これはおばあちゃんに起こった変化がもとになったとか。
はい。自分の祖母が痴呆になって、何年か前に老人ホームに入ったんです。今まで周りの家族が亡くなって誰かに会えなくなるという経験はしてきたんですけど、亡くならずとも会えなくなってしまうことがあるんだなってことが、悲しいと共に結構衝撃で。今私30歳なんですけど、同世代の子と話してても、祖父母が老人ホームに入ったり、亡くなったり入院したりしてて、そういう時期なのかもしれないんです。でも、すごく後悔はあって。私は母子家庭だったので祖父母が育ててくれたんですけど、祖母とそりが合わない部分もあったんです。反抗したりすごく冷たい態度をとったりしたし、悲しい思いいっぱいさせたと思うんですけど、どれだけ後悔しても、時間が巻き戻って私が中学生とか高校生に戻っても、同じことをたぶんしちゃうだろうなと思って。だから、「ナイトハイ」ってそういう後悔はもうしても仕方ないなと思いながらも、最初はすごい懺悔の気持ちで作ってたんですよ。でも、途中1回コロナが始まる前に、祖母に会いに行ったときに私のこと全然わかんなくて。だけど、"久しぶりに来たよ"って言ったら、手がすごく冷たいからって、さすってくれたんです。それって祖母が元気だったときによくしてたことで、身体に染みついてるくせみたいなものはなくならないんだなと思って、すごく嬉しかったんですよ。これからいろんなこと全部忘れてしまうかもしれないけど、今まで祖母が生きてきた80何年間の悲しいことから全部忘れてって、今日の夕ご飯がおいしかった、みんなでやる工作の時間が楽しかったとか、そういう楽しいことだけ覚えて、悲しいことはもう忘れてってくれたらいいなと思って。それが今の私の願いだなって気持ちに変わったんです。100パーセント懺悔だったものが徐々に変化していった曲なんですよね。
-「ランデヴー」のチルアウト・ヒップホップ的なアレンジも面白いです。
この曲はずっとあって、作りたいなと思ってて。ベーシストが新しくなって、サポート・メンバー3人は私が持ってない要素をやっぱりすごく持っているので、ここは結構おんぶに抱っこじゃないですけど。フル・アルバム作るときって、サポート・メンバーが勝手に暴走してくれて、勝手に良くなりそうだなと思うところで作ることが私の趣味かもしれなくて。それを見るのが結構好きだったりするんです(笑)。
-自分が持って行った種をみんながどう膨らませるのか。
お花の種撒いたつもりでも、大根ができるみたいな(笑)。特にドラムとかギターとか、長年一緒にやってて、ずっとサポートしてくれてますけど、彼らもやっぱりアップデートされてっているわけで。だから、こう年々、芽を出すものが変わってくるのがすごく楽しいなって感じます。そういうときはバンドじゃないけど、バンドだなって思う。
-この曲でいい意味での逃避というか、"逃げちゃっていいよ"みたいな感じが良くて。
"深夜のドン・キホーテ"って設定なんですけど(笑)、免許取り立てのときに、半同棲の彼氏と一緒に行く夜中のドン・キホーテの現実逃避感っていうのが、未だに好きなんですよね。もう経験することはないと思うんですけど、お金もないし時間しかないし、親の車に乗っていく(笑)、深夜2時のドンキ・ホーテの香水の甘ったるい匂いみたいなのを思い出すと、すごくノスタルジーだなと。それを形にしたくて。
-「Balk」はヘヴィで、メロディ・ラインはちょっと日本的なものも感じました。
もともとゴリゴリにデモ作ってて、去年の5月ぐらいにリモートで、みんなで作ったんですよ。でも、やっていくうちに、私がどうしてもノイズとかちょっと生で録りたいなと思い始めちゃって。めちゃめちゃ作ったのに今さら言うのも申し訳ないなと思って、どうにか楽曲制作の続きを延ばして延ばして(笑)、レコーディングで録ることになった曲なので、バンドっぽいというよりも、最初からどういう曲になるか、想定をして作った曲です。
-この曲にも愛という言葉が出てきます。
「Balk」に関しては社会的な意味ではないですけど、人ってすぐ死ぬぞっていう気持ちがすごくあって。顔の見えない人からの誹謗中傷の言葉で人が死ぬっていう、そんなシンプルなことがわからなくなっちゃってる。それは知性があるがゆえ、人間ができなくなっちゃったことだなと思って。そういうのが一番腹立たしいなと思うんですよね。自分のことは自分で守るっていうのは大前提だけど、それができない人だっているわけで。だから、どんなタイミングで、何で命を落とすかって、きちんと考えて我々は生きていかないといけないっていう部分は、今、便利になったからこその代償としてあるなとすごく思ってるんです。
-そうだと思います。アルバムは「まどか」のアルバム・バージョンで終わるんですが、塩入さんとしてはこの曲でアルバムの結末という感じですか?
これはいろいろ話し合った結果、2020年は「まどか」っていう曲を歌い続けてたなと思うんですね。だから、シンプルにわかりやすいんじゃないかなと。「まどか」に関しては発売して1年経って、やっともっとわかりやすく「まどか」に対して自分も思いを持つことができて。人に対しても、説明ができるようになった気がするんですよね。だから、できあがってましたけど、寝かせることによって2日目のカレーみたいな、違う味というか、違う言葉での説明を自分もすごく覚えたなって気がして。去年3月に「まどか」を聴いてくれた人が今回、どういう気持ちで新しい「まどか」を聴いてくれるんだろうなっていうのは、自分自身も楽しみではあります。
-アルバムの最後にあることで受け取り方がより深くなるというか。この全体像の中で捉えるようになるのかなって。
そうですね。これは一過性の思いじゃなくて、生きていくうえで根本的なことだなと思えるんですよ。もしかしたら自分が生活をしていくうえで立場が変わって、例えば、親になるとか、そんな変化を経たときにも、きっと同じように思えるんじゃないかなっていう私の根本である思いを歌っているので。やっぱり色褪せない部分がある曲でこのアルバムを締めたかったのかな、だから選んだのかなと思いますね。
-アルバムが完成したことで今のFINLANDSがやりたかったことは見えましたか?
今のFINLANDSがやりたかったことは見えましたね。でも、きっとまた新しくなっていくと思うんですけど。FINLANDSとしては、今までやりたい放題、好きなことをやれる環境で意味わかんない活動をしてきて。周りもたぶんあんまり意味がわかってなくて、でも、私はそれで満足してたんです。さっき言ったみたいに、大好きか大嫌いかを選べよみたいな気持ちを持ってたと思うんですけど、そこじゃなくて、"音楽ってなんかわかんないけどいいな"って部分もなきにしもあらず、大事っちゃ大事かなと思ったんですよ。思い返してみれば私だって、なんとなくこの曲知ってる、この曲聴くと懐かしいなってバンドいっぱいあるし、そういうもので構築されてきた部分、いっぱいあるし。自分だけそこに入ろうとしないのは逃げてるなと思って。だから、今までは閉めてる扉を無理矢理こじ開けて、開いてもらってそれを歓迎してた感じだったんですけど、こちらからドアを1枚開いていくことで、新しく見えてくるFINLANDSがあるんじゃないかなっていうところが、一番大きなヴィジョンの変化かもしれないですね。
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