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LIVE REPORT

Japanese

FINLANDS

Skream! マガジン 2017年12月号掲載

2017.10.29 @新代田FEVER

Writer 岡本 貴之

ライヴ後半のMCで、塩入冬湖(Vo/Gt)は"音楽はサービスじゃないと思う"と語った。これまでのライヴ同様、アンコールはなし。予定調和のサービスはしない。だからこそ目一杯の興奮を詰め込みたい。そんな意気込みが伝わってくる18曲で、満員の観客を満足させた。

新代田FEVERにて行われたFINLANDSの"LOVE TOUR FINAL ONEMANLIVE"の最終公演は、台風22号が直撃。外では大粒の雨が地面を叩きつけていた。アルバム『LOVE』同様「カルト」から始まったライヴは、ミディアム・テンポの比較的穏やかな立ち上がり。コシミズカヨ(Ba/Cho)がリフを弾き出し、塩入は歌の合間に会場の隅々まで目をやる仕草で、観客の様子を確かめているようだ。当日券もなしの完全ソールド・アウトとなっているだけに、会場は文句なしの超満員。充実した作品となった『LOVE』の評価を感じさせると共に、彼女たちがライヴ・バンドであることを証明している。

「ゴードン」に続き、新たなサポート・ドラマー、鈴木駿介が叩く怒濤のリズムに合わせて観客が手拍子すると、ギターの澤井良太がエフェクティヴな音色で鋭いリフを弾き「バラード」へ。「クレーター」ではサビで手を上げて声を合わせる観客たち。冒頭2曲でフロアをあたためてから一気呵成に激しい曲で火蓋を切る、まさに嵐の前の静けさから台風直撃といったイメージの2段構えのオープニングだった。

"私たちはライヴをするたびに台風です"と嘆く(?)塩入のMCにドっと笑いが起こる。アルバム発売日と大阪でのワンマンの際も台風直撃だったそうだ。新アルバムからの"結婚詐欺を歌った曲"「恋の前」から、爽やかなギターのイントロが印象的な「さよならプロペラ」と、各アルバムを縦断しながら次々と曲を披露していく。どの曲もコシミズの太いベースが前に出ており、ベース・ラインがライヴ全体の表情を変える役割を果たしていた。

中盤、ささやくようなヴォーカルの「Hello tonight」から「Baby sugar」、「月にロケット」と、しばしメロウな曲が続く。塩入が深夜に部屋でつぶやいているような、パーソナリティが窺えるコーナーだった。自分にとっての興奮を"LOVE"というタイトルに託したことを語ったMCでは、コシミズにとっての興奮は"実家で作っているたまねぎが2,000個獲れたとき"と、身近な興奮を吐露(笑)。塩入とコシミズが繰り広げる会話の絶妙な噛み合わなさに、会場にはなんとも言えない微笑ましい雰囲気が漂う。

「Back to girl」は新境地ともいえるメロウなR&B調のポップスで、後ろノリのリズムが心地よい。バラードから後半のコーナーへと続く繋ぎ役としても見事に機能していた。"音楽はサービスじゃないと思う。理解できないなら理解しなくてもいい"。そんな言葉と共に始まった「サービスナンバー」の疾走感溢れる演奏に続き、たっぷり溜めてから「フライデー」のイントロが鳴ると、沸き立つ観客たち。このまま後半まで突っ走るかと思いきや、スロー・ダウンして塩入がスポットライトを浴びながら歌い出したのは、アルバムのラストを飾る「オーバーナイト」。夜の情景が浮かぶような静かに染み入るサウンドで、曲の後半はギター2本とベースのアンサンブル、コシミズのコーラスも相まって、厚みのあるサウンドを聴かせて感動的なムードに。激しいサウンドとの落差もあって、この日のライヴで最も印象的な名演となった。めったにしないというメンバー紹介から、ライヴはクライマックスへ。"FINLANDSの始まりの曲"「ナイター」から「ウィークエンド」へと続け、"これからも一緒に興奮していきましょう!"とメッセージを送り、ツアー・ファイナルを終えた。


[Setlist]
1. カルト
2. ゴードン
3. バラード
4. クレーター
5. 恋の前
6. さよならプロペラ
7. マーチ
8. Hello tonight
9. Baby sugar
10. 月にロケット
11. Back to girl
12. JAM
13. サービスナンバー
14. フライデー
15. オーバーナイト
16. さみしいスター
17. ナイター
18. ウィークエンド

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