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INTERVIEW

Japanese

FINLANDS

2019年03月号掲載

FINLANDS

メンバー:塩入 冬湖(Vo/Gt)

インタビュアー:沖 さやこ

去年の秋に前作『BI』のリリース・ツアーを完走したFINLANDSが早くも新作『UTOPIA』をリリース。ツアー後に制作した「UTOPIA」と「call end」という新曲に加え、昨年JAMESONのキャンペーンで無料ダウンロード配信された「衛星」と、塩入冬湖がツアー終了後に自分の作った楽曲を聴き返し"あ、今歌いたいな"と思ったというFINLANDS初期曲「天涯」の再録を含む4曲入りのEPは、さらにバンド感を増すだけでなく、塩入のリアルタイムのモードが反映された作品でもある。塩入は楽曲のこと、"ユートピア"という言葉に持つ想いや考え方、自分のことを、じっくり話してくれた。

-これまで夏にリリースをしていたFINLANDSから、春に新作が届くのは新鮮ですね。

夏に作品をリリースすると楽曲に夏の思い出が紐づくところがあるので、それを1回崩してみたいなとも思って。それでEPを作ることになりました。でも私はEPというものに理解がなくて、それを理解するまでが大変で。

-理解?

数学の公式も"なぜそうなるのか"というのをちゃんと理解しないと頭に入っていかないんです。だからEPも、曲を作る前に"なぜシングルでもなくミニ・アルバムでもなくEPなのか"というところから悩んじゃって......。Wikipediaで"EP"を調べました(笑)。本当にわからなくてサポート・メンバーにも相談したら"EP、ミニ・アルバム、シングルの条件に合う曲数や尺の長さが全部ここに書いてあるでしょ? だから「EPとは?」とか考えないでとにかく作れ"と言ってもらって、"たしかに!"と。

-そこで納得がいったと(笑)。

それから新曲を作っていきました。その結果、既存の2曲と、ツアーが終わってから作った新曲2曲の4曲入りになったんですけど、作品としての一貫性とかは特になくて。でもできあがったものを通して聴いてみると、前作の『BI』(2018年7月リリースのアルバム)に繋がってる部分があるなと思いました。

-『BI』に繋がる部分もありつつ、4曲を通して孤独感のようなものもテーマなのかなと感じる部分がありました。

新曲の「UTOPIA」と「call end」が、極端にひとりぼっちの曲と、ふたりでいたいとすがる願いの曲で。ひとりで作り出せる満足なのか、ふたりで作り出せない満足なのか――でもそれを突き詰めていくと孤独に辿り着いていくところはあるのかなと思ったんです。ツアーが終わってからしっかりとしたお休みがあって。そんなに時間があることは久しぶりだったので、その期間に何をしたらいいのかわからなくなっちゃって(笑)。

-(笑)曲作りをする気にはならなかった?

満身創痍だったので曲を作りたいとも思わなかったし、そういうときに無理して作る必要もないかなと。それで"みんなは普段何をしてるんだろう?"と思っていろいろ調べてみたんですけど......恋愛って、言い方は悪いけどすごくいい暇つぶしだなと思って。

-あははは(笑)。

付き合っていなくても好きな人のことを考えるだけで時間は過ぎていくし、誰かと付き合っていれば一緒にいるだけで愛されるという状況ができあがる。それはものすごい状況だなと思うんです。自分の過去や最近のことを思い返してみても、恋愛で誰かを好きになる、好かれることだけで得られる認められている感覚は、満足には繋がってくるけど一生続くとは思えない。それは歌を作る、バンドをするという"自分で作り出す満足"とも違うし、自分の求めてるものと違うなと思うんですよね。でも、ひとりになればなるほど"なんでこんなにひとりなんだろう?"と思うし......。

-誰かと一緒にいても、ひとりでいても満たされない。

我ながらその感じがすごく面倒くさいなと思って(笑)! 「UTOPIA」と「call end」ではその対比を書きたいなと思ったんですよね。

-その視点は前作の『BI』と繋がりますね。

どんな新曲を書こうか、何も考えてなかったタイミングで、うちのベースの(コシミズ)カヨから"次はどんな曲を書こうと思ってるの?"と聞かれて、"『BI』に繋がるような曲を書いてみたら?"という意見を貰って。カヨがこんなこと言うの珍しいなと思ってたんですよね。でも歌詞を書きあげているあたりに、この2曲が『BI』に繋がるなと気づいたので、それはカヨから言われた言葉が頭のどこかにあったんだろうなと。

-カヨさんがそういう意見を言うというのは、何か意図があったのでしょうか?

どうなんでしょうねー......? 適当に言ったのか本気だったのかちょっとよくわかんないですけど(笑)。カヨはふと投げかけてくれる言葉が斬新だったり、明るい曲に暗いベースラインをつけたりするので面白いですね。それがFINLANDSをうまく回してるなと思います。

-塩入さんの書く歌詞は、形容しにくい複雑な心情や感覚をダイレクトに言葉に落とし込んでいると感じるのですが、実際どのように歌詞を書いていくのでしょうか?

「UTOPIA」に関しては官能的なものを書きたくて。私はある作家の方が書く官能的な表現がすごく好きなんです。世の中が性というものに対して性処理の道具やただの俗っぽいもの、汚くていいというイメージを抱いている側面があるなと感じることがあって。でもそれはこの何十年間で生み出されたものだと思うんです。まぐわうことは人によって捉え方や表現方法が全然違うし、一歩間違えるといやらしい表現になってしまう。

-そうですね。

でも私は汚いことでは一切ないし、美しいだけじゃないけれど美しいことだとも思うんです。そもそも人間は生きているだけで官能的なものだし、その官能性をどれだけ隠すかの違いだけ。それがすごく面白いなって。自分もそういう表現はずっとしてきたんですけど、そこを突き詰めたものを作りたかった。だから「UTOPIA」はすごく歌詞が大切な曲だったんです。自分は官能的なものをどんなふうに美しく思っているんだろう? と自問自答しながら書いていきました。