Japanese
塩入冬湖
2020年10月号掲載
インタビュアー:三木 あゆみ
FINLANDSの塩入冬湖によるソロ作品集第4弾。今作は2020年上半期、人と密に接することを制限される生活の中で、"言葉を使うしかない"状況に直面した際に感じた、言葉だけで思いを伝えることの難しさに面白さを見いだした塩入が"これ程あなたを思っているのに"の"程"の尺度を例え話として描いた作品だ。彼女がより言葉に向き合い書いた、彼女にしか生み出せないユニークな言葉遣いやメロディはもちろん聴きどころであり、ソロ作品ならではの打ち込みによるサウンドもより多彩で奥深さを増している印象があった。今作について、本人に話を訊いた。
この作品に辿り着いてくれた人の肩の荷が下りるような音になればいいなと
-今作『程』は自粛期間に完成したということなんですが、制作以外に、普段できないことをやってみるなどはしていましたか?
"やってた"ってことでもないですけど、テレビを観たりラジオを聴いたり、そういうことをするようになりましたね。ここ何年間、ところどころで休みはありましたけど、自分のことでいっぱいいっぱいだったので、毎週この番組を楽しみにするとか、毎週この深夜のラジオを聴こうとか、そういう楽しみができて。今まで当たり前にあったメディア、娯楽を改めて楽しむことができた期間ではあったなぁって思いますね。
-ゆっくり時間を過ごすこともできたっていう感じだったんですね。今作『程』のセルフ・ライナーノーツには自粛期間に漢字検定1級の勉強もしたとも書いてありましたが。
しました(笑)。取れるわけないなとは思ってたんですけど。学生時代に準2級くらいまでは取ったけど、1級ってどんなものなのかすら見たことないなって思って。今ってネットで問題が見れるんですよ。
-そうなんですか。笑いながら雑誌感覚で読み進めてしまったとありましたが、どんなところが面白かったんですか?
ほんとに普段接したことのない、まったく知らなかった漢字とかが出てくるんですよ。"こんな漢字があるんだ!"とか"この読ませ方は無理やりだろ"みたいな。それがすごく面白かったんですよ。そりゃ取れるわけないなみたいな。もちろん普段歌詞で使ってる読み方とか、どっかで聞いたり見たりして覚えた漢字とか、日常生活で使ってるものもあるんですよ。けど、その並びにまったく知らないものがあるっていうのが、見てて面白くて。
-そういう塩入さんの"言葉が面白い"っていう感覚は作品からも感じられる気がしました。今回のソロ作品集『程』は、まずどういうきっかけで制作することになったのですか?
今年、ソロの作品を作る予定はなかったんですよ。FINLANDSの活動とか制作があったので、そっちに全振りするつもりだったんです。けど、3月くらいからライヴができなくなって、レコーディングも延期になって。どこもかしこも何もできない状況が続いているので、仕方ないっちゃ仕方ないんですけど、今年が終わるときに"今年なんにもできなかったなぁ"ってなることにすごく違和感があったんですよね。なんにもできなかったって思うよりは、今年2020年に何かを形に残しておきたいなって。それで、ソロ作品で今まで作ってきた曲とか、作りたいと思ってたけど形にできてなかったものとかを、形にしていきたいなっていうところから始まったんです。
-そうだったんですね。
私としてもやることが欲しかったっていうのもあって。これを作ってる期間って、やっぱりそれなりにうまくいかないこととか、これ厳しいなぁと思うこともあったんですよ。でも、自分で作り始めたものではありますけど、何かひとつに打ち込めるっていうのは、心の拠りどころみたいな感じがあったんですよね。この制作があったから今年の春とか梅雨とかを乗り切れたなって。そう自分で思えているので、作って良かったなって感じてますね。
-今まで作ってきた曲や、作りたいと思っていたものを形にしたとおっしゃってましたが、今作の中で新曲にあたるのはどれですか?
「洗って」、「SCRIPT」、「Arrow」、「残花」は全部新しく作った曲ですね。
-ライナーノーツには"「これ程あなたを思っているのに。」という言葉の中にある「程」の尺度は実に分かりにくい"と書かれていましたけど、今作の収録曲はその"程"の尺度を、塩入さんなりに形にしたものになるのでしょうか。
"程"っていうのは例え話でもあるんですよね。"これ程思っているのに"とか"これ程愛してるのに"の、"程"の尺度って計り知れないじゃないですか。それをどうやって今までわかり合ってきたのか......例えば恋人同士だったら、直接会って喋ることだったり、相槌の温度感だったり、行為だったり、そういったものでわかり合ってきて、"程"の中身というか、共通認識みたいなものを育んできたんだと考えていて。たぶん、この半年間って、それを全部言葉でするしかないって時間がほとんどだったと思うんですよ。インターネットを通してリモートで会うことができたとしても、タイムラグがあるし、直接会うときとはやっぱり違う。そういうことを考えたときに、言葉で伝えるとか言葉でわかり合うのってすごく難しいんじゃないかなと思ったんです。どれだけ博学で言葉を知ってる人でも、どれだけ人との付き合い方をわかってる人でも、言葉だけですべてをわかり合うことはできないんじゃないかなって。それって絶望的だなとも感じるんですけど、日本語って種類もすごく多いし、面白いものだなと思うんですよ。だからこそ、言葉にきちんと向き合って、今作を作っていきたいなって考えていましたね。
-例えば、"言葉にしなきゃ伝わらないよ"とかって常々いろいろなところで言われていると思うんですけど、その言葉をどう使うのか考える、その言葉を伝えるという行動自体に愛があるなぁって感じていたんです。"言葉"の使い方に関しては意識したところはありましたか?
そうですね。今作で言うと特に「うみもにせもの」とか「ラブレター」はストレートな気持ちだし、伝わりやすい言葉かなって思っているんですけど。どれだけ自分の中でその歌詞を理解できていても、聴いてくれる人に伝わらないと意味がないなってすごく思っていたので、いつも以上にわかりやすいというか、伝わるような作り方をしたいなと思っていましたね。
-そして、今作はサウンド的には安らかな曲が多い印象がありました。この作品を聴きながら眠りにつきたくなるというか。
そう言ってもらえるのはすごく嬉しいですね。
-音に関して、意図してそういうものを集めた感覚はありましたか?
意図みたいなのはいつもあんまりないんですよね。ソロでやることって、実験的な部分が多くて。パソコンを使っていろんな音を作り出せますし、引っ張ってこれますし。自分はこれが好きなんだなとか、この曲にはこういう手法も使えるんだなとか、そういうことをやりながらソロは作っているんですよ。自分がしっくりくるものを使っていく感じなので、最初のイメージはなかったんですけど、この作品に辿り着いてくれた人が、落ち着いた気持ちで聴けるような音質というか、肩の荷が下りるような音になればいいなとはすごく思っていますね。
-「洗って」の中には流れる水の音があったりして、すごく気持ちがいいなと思いながら聴いていました。この曲はどういうイメージでできていったんでしょうか。
この曲は今作の中で最後に作った曲なんですけど、シンプルに曲が始まったときに胸をギュッと掴まれるようなオケを作りたくて。自分が一番聴きたい曲を作ろうと思って作ったんですよ。なので、自分がときめく音を重ねていったらできあがった感じです。
-サウンド面だと、次の「SCRIPT」も新鮮で。こういう打ち込みのサウンドは、塩入さんのソロだから聴けた曲かなと思います。さっきも"実験"っておっしゃってましたがこの曲にも結構表れていたりするんですかね。
そうですね、この曲は本当に実験してて。最初は作り上げるつもりはなかったんですよ。ゲスト・ベーシストとして参加してくれたのがガッツ(小松兼太/KAWAI JAZZ/ペドラザ/神々のゴライコーズ)なんですけど、作ってたときにガッツが弾いたらめちゃくちゃ面白いかもなって思って、"これ仕上げるかわかんないけど、弾いてみてほしい"って渡したら、リモートで"こんな感じで"って送ってくれたんです。それがめちゃくちゃ良くて。100億倍くらい良くなって返ってきたんですよ。そこで私も作り上げたいなという気持ちになって、仕上げた曲なので、本当にいい化学変化が起きて完成した感じですね。この曲はすごく達成感があります。
-曲名の"SCRIPT"には台本や脚本という意味があるそうなのですが、このタイトルが付いてるのはどういうことなんだろうなって考えてました。
あんまり深い意味を込めて付けてはいないんですけど、"SCRIPT"って言葉がぴったり合うなと感じていて。台本......というよりは"創っていく"、"創られているもの"というか。この曲は、自分が知らない間に前のページやそのあとのページが創られていくこと――勝手に自分は時間の中で創られているのかもしれないし、相手も創られてるのかもしれないし。そういうのを知らないまま、過ぎていく時間をどう消化していくかって、今たぶんほぼほぼみんなそういうことを感じてると思うんですよね。創られてく自分と、創られていくあなた......"対象"に対しての発散しようのない悲しみというか、鬱憤みたいなものを歌いたくて作った曲なんですよね。
-曲の中の"公平順番待っている"とかも独特だなって。
恋愛って、次は私でとか平等でとか通用しないじゃないですか。理不尽だと思う人もいるかもしれないけど、それは人間がもともと持っている感情だから仕方ないよって気持ちとかはありますね。
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