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INTERVIEW

Japanese

塩入冬湖

2019年07月号掲載

塩入冬湖

インタビュアー:石角 友香

-ちなみに打ち込みをするとき、参考になる曲とかアーティストとかはいたんですか?

ないですね。打ち込みに関しては。自分がやってることと、自分で打ち込んで音楽を作ってる人の音楽を聴いてもリンクしないというか。自分のやってることの方がすごく簡単だし、たぶん、私やり方合ってないなって思う部分すごくあるので。

-合ってる合ってないは音楽なのでないと思うんですけど(笑)。

そうなんですけど(笑)。もともと機械とかに詳しい人間じゃないので、なんか"これで合ってんのかな?"と思いながらやって、結果それが私の中でいいと思ったらいいんですけど、同じものと思えないんですよね。打ち込みのそういったアーティストの方と。

-作り方は五里霧中だとわかったんですが、すごくフラットな気持ちで聴いてたんです。フォーマットで作っていらっしゃらない感じがしたので、それが面白い。

フォーマットはたぶんわかってないというか。1から10まであるとしたら、3から7ぐらいは知らないみたいな。そんな感じで、両極端で補おうとしてるのは自分でもすごい感じて。でも曲に対する理解度はすごい増えますね。ひとりで作ってると。

-作り方をお聞きしてると聴こえ方が変わってくるような(笑)。でもフラットに聴いてて歌詞も読みながら聴いてると、すごいネガティヴとか衝動とかではないけど、でもやはり1曲目は"恋のままで"というタイトルのままの感じがするんですけど。

はい。

-何かの温度が下がるとか、賞味期限が過ぎることに関してデリケートな感覚があるなと。冬湖さんの歌詞にはそういう内容が多いなとは思いますが。

(笑)そうかもしれないですね。

-それがキリキリした感じに聴こえないのがオツで。こういう恋のままの人間関係ってありえないのかな? とか。

そうですね。あんまり人が望んでないのかな? と思います。何か形にしたりとか、名前を付けたり、ルールを作りたいと願うことがやっぱり多いじゃないですか。でもそうならない、そこを望まなくてただ恋だけ、恋って感情だけを持って生きたいなと思って望むこと自体がすごく難しいなと思って。自分でそう望んだときにそう思ったんですけど。望むことってすごく一瞬で刹那的で、やっぱり何かその次とか、人間は進んでいきたいって思う、本能がたぶんあるんだと思うんです。どこかで先のステージを求めるんですけど、そうならないで、恋のままで置いておきたいと思える瞬間が、すごい尊いものだなと思うんですよね。

-FINLANDSで表現してることと共通してると思うんですが、ソロで聴くと受け入れる気分で聴けるんです。

受け入れる(笑)、そうですね。共感してもらいたいと思って書くことはFINLANDSでもなくて、意思表示だと思ってて。そういうのをソロの方が如実に表せるなと。例えば7曲あって全部同じことを違う角度から描いてもいいわけですよね。そういう自由度がすごくあるなと思います。

-それだけ時間をかけて作られたアルバムなのに、気持ちの鮮度が落ちてない感じがします。

気持ちの鮮度はそうですね。最近ずっとそうなんですけど、ひとつ何かが終わったときとかに、それは悲しいこととか絶望的なこととして捉えるというよりも、疑問として取っておくっていうことがすごく多くて。だからずっとそれに対して考えてる時間というのがあって。それが今言っていただいたような、鮮度を保つ材料になってるのかな? と思います。

-なんで変わるんだろうとか、逆に変わらないんだろうってことを抜群の比喩で書いてらっしゃるなと思います。「timer」にはご飯が出てくるけど、ご飯は時間を区切る比喩だったりするし。

うんうん。そうですよね。ご飯って唯一のコミュニティみたいな部分あると思うんですよ。大人になればなるほど。例えば友達とかとどこかに出かけることが減ってきて、"今日ご飯行こうよ"、"ご飯一緒に食べよう"、それだけがすごい繋がりというか、でもそれはそれですごい切なかったりするんですよね。でもそれがいい形でもある部分あると思うんですけど、そういうことを考えてました。「timer」を作ってるとき。

-あと、このアルバム・タイトルの"惚けて"というワードが出てくる「波に惚けて」もありますが、"惚ける"って"何々に惚ける"っていう使い方をするじゃないですか?

はいはい。

-冬湖さんにとって"惚ける"って表現は何に合ってたんですかね。

私、ボケーっとしてる時間とかって、さっき「恋のままで」で話したように、すごい大切だなと思うんですよ。ただ何かにボケーっとしてる時間。なんでしょう? ルールを決めたがったりするんですけど、波って私の中で無形なんですよ。無形なもので、全世界そこら中にあって、そういう無形なものに意味なく惚けてる時間というのが好きというか、好きでいたいなって願望がすごくあって。すっごい理屈っぽくて、理詰めで物事を考えてしまうフシがあるんで、そういう何も意味がない、この先に何か繋がることはないというもの、形のないものに惚けていたいっていう願望が強いんです。"あ、いけない、ぼーっとしてた"と思うじゃないですか。なんでいけないと思うんだろう? って瞬間があって、言ってしまえばこの作品も意味とか何も持ってないんですよね。ソロ作品は趣味でやってきて、ただやりたいからやってるんで、その先に意味はないというか、そういう時間って私にとってすごい惚けてる時間だなって気持ちが強くて。願望とこの作品を言い表せる言葉が"惚けて"って言葉だったんです。

-何かのために考えてっていうのが普通みたいに思いがちですけど――

なんか今思ったんですけど、人ってあんまり考えて発言しないじゃないですか(笑)。こういう場では別ですけど。普通に人と喋ってるときとかってそこまで考えて発言しない。でも、ふとしたことで問題視されたり、揚げ足を取られたりすることってあるじゃないですか。なんかそんなにみんな深く考えてないと思うんですよ。ぼーっとして会話をしてるだけで、そのとき神経を研ぎ澄ませたひと発信が何か問題になったりして。私、もっとぼーっとしてるというか、その惚けてる時間を求めていて、そういうキリッとしたものばかりを考えすぎている時代にちょっと嫌気がさしてるんでしょうね。

-そういうフィーリングを作るために時間をかけてこのアルバムを作ったんですね。

そうです。さっとできたものより苦労してできたものが素晴らしいとは決して思わないんですけど、やっぱり時間がかかっていればいるほど、理解する時間が増えるというか。なので発売するとき、誰かに聴いてもらうときに、自分がそれを一番理解していられるというのはすごく気持ちがいい。だから時間をかけて作って良かったなって、この作品に対してすごく思ってますね。