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INTERVIEW

Japanese

POLYSICS

2017年03月号掲載

POLYSICS

Member:ハヤシ(Gt/Vo/Syn/Prog)

Interviewer:吉羽 さおり

-20周年ですが、これを1曲目に収録したことで、前を見ているバンドの姿勢も伝わります。その他の再録曲は、現在の3人になって再構築した"今のPOLYSICS"でのアレンジですが、3人体制となったときはアレンジでの試行錯誤があったんですか。

あったね。あったけど、そこはライヴでどんどんとやっていった感じで。2010年3月の武道館でカヨ(Syn/Vo)が卒業して、一旦活動を休止したんだけど、5ヶ月後には活動再開していて(笑)。その5ヶ月間は、ずっとみんなで集まってスタジオに入っていましたね。それで、ああじゃないこうじゃないとか、これだとちょっと音が地味だねとか、そういうところから始まって。

-ポリと言えば、シンセ/キーボードが入ったサウンドが、そこまでですでに形作られていましたよね。

その形作られていたものを一度、イチから立て直すんじゃなくて、ゼロからだなという気がしていたし。手で弾いていたキーボードを、そのまま打ち込みにする気はまったくなくて。マシンとバンドがセッションする、というイメージはあってすぐに取り掛かったんです。手では弾けない、手で弾くことを考えないフレーズで、暴走した狂ったマシンと一緒にセッションするみたいな。そこが次のPOLYSICSのイメージになるかなというのはあった。それで「カジャカジャグー」(Track.9/2003年リリースのミニ・アルバム表題曲)を、こういう感じなんだよねってアレンジしたら、みんなも"なるほど、なるほど"って言うので。そこからライヴでの定番曲を1曲1曲スタジオで練って、実際にライヴでやって、そこからまた音色を変えたりフレーズを変えたりしていきましたね。そういう曲を、今回レコーディングしたので。ライヴとかリハーサルで練ってるから、レコーディングではそれをそのまま録るだけでしたね。1、2個音色を足したかった曲はあって、それはその場で自分が作ってきたものを当てるという作業をしたくらいで、あとは基本のいつもの音をそのまま録るっていう。

-この3人になって約7年演奏してきたものを、録るっていうものだった。

だから、録りは3日で終わりました。ソロとかもそのまま弾いたし、音色を変えるのもエフェクターで、その場で足で変える感じだったから、ほとんどスタジオ・ライヴみたいな状態で(笑)。差し替えしてないんですよね。

-まさに、磨き上げてきたバンドが出せる音ですね。

そこはそうかもしれない。だから、バンドやってる子に聴いてほしいね(笑)。


自分の中の"いいバランス"は一般的にはイビツだと思う。整ったものは、面白くないんだよね


-ライヴは、3人体制となってよりアグレッシヴさが増したと思います。全体の躍動感もそうだし、ステージ上の動きもダイナミックになった印象が強いです。

3人体制になってやることは増えて、個々のプレイの部分もキャラクターも前に出したかったし。そうなると自然に、バンド感を増しますよね。曲によってテンポも上げたりしているし。そこでライヴ感みたいなものは増していると思います。シーケンスが常に流れているから、ドラマーのテンションが上がってBPMが上がるみたいことがないから、ライヴ後半にやるのを意識して、最初から多少テンポを上げたりもするようになりましたね。

-ということでは、3人となってより見え方も変わっていったように思います。これがPOLYSICSの音だというのは、わりと認知されていると思いますが、この20年でメンバーも含めて、結構変遷はありますね。

ブレないみたいな印象があるけど、その都度その都度変わっていってます。好きなものはブレてないんだけど、初期のころとかはアルバムごとにだいぶ変わってるよね。あと振り返ってみると、3人の時期って結構あったんですよ。メジャー・デビューしたときも3人だったし、2003年にも3人になってるしね。

-趣味嗜好的な部分や、好きな部分は変わらないけれど、あえてPOLYSICSだからこそ守ってきたものはありますか。

やっぱり、バンドであることかな。打ち込みも使っているから、打ち込みでも成立できるんだけど。そうやることで、収まりがいいというか、整っちゃうなと思っていて。すべて打ち込みでやれば、イメージもしやすいし形にもなりやすいんだけど、それだと自分にとって面白くないんですよね。それならPOLYSICSでなくてもよくない? っていう。やっぱり、生ドラムがいてベースがいて、ギターがいて、ピコピコいってるのがないとっていう。自分の中での"いいバランス"っていうのは、きっと一般的にはイビツなバランスだと思うんだけど(笑)。

-そうかもしれませんね(笑)。

でもそれが自分にとっては美しいというか、自分にとってのスタンダードだなと思うし。収まりがいいものを作ろうと思っていないのは、あるかもしれない。大事にしておきたいというか。打ち込みにしても、何かしらちょっとイビツな音だったりワードだったりがないと楽しくなくて。俺も、ポリってなんだろう? って思うんだよね、そういうときに(笑)。整ったものが好きじゃないんだなって。人がどうこう思う前に、自分は面白くないなと思ってしまうんですね。

-"バンドである"というのが大きなものだったのは、聴いてきた音楽の影響もあるんですかね。

そうですね。特にインディーズ時代の最初の『1st P』(1999年リリースのアルバム)なんて、あれこそシーケンサーとギターだけで完結しようと思えばできるんですよ──みんなほとんど演奏してないし(笑)。でもそこにメンバーが集まる、人がいるっていうことが自分は大事だったんだなと思っていて。この『1st P』を、例えば聴きやすいようにテクノ・トリートメント化していたら、どうなっていただろうなとふと思って。この『1st P』は一時期全然聴かなかったのよ、恥ずかしくて。よく"1stアルバムにバンドのすべてが入っている"と言うけど。

-言いますね(笑)。

ないない、うそうそって思って(笑)。でも、2015年にUK.PROJECTで新人のサンプラーを作るとなったときに、所属アーティストが自分の1stアルバムについてコメントを書くというのがあって、久々に聴いてみたのよ。そしたら、なんかすげぇバランスだなと思って面白くて。まずベースがベースの位置で鳴ってないし。あのときの自分は、ベースはドラムとギターを繋ぐものじゃなくて、ビヨビヨいってればOKで。ドラムも、すっごい低いところで打ち込みのキックが鳴ってるけど、生ドラムは上半身しか聴こえないし。あと、ギターもシンセも声もみんな高いっていう、すごいバランスで。あのとき、プロデューサーはいたんだけど。

-レーベル"DECKREC"ネモトさんですよね。

そう、ネモト・ド・ショボーレだったんだけど。ネモトさんはガレージ・バンド出身で、全然機械のこと詳しくないから、"OK、OK!"みたいなレコーディングで。それでできたのがあの形なのね。