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INTERVIEW

Japanese

NICO Touches the Walls

2016年03月号掲載

NICO Touches the Walls

Member:光村 龍哉(Vo/Gt) 古村 大介(Gt) 坂倉 心悟(Ba) 対馬 祥太郎(Dr)

Interviewer:山口 智男

-いや、これはみんなびっくりしますよ(笑)。

光村:誰も予想していない曲でしょうね(笑)。3年ぶりのアルバムじゃないですか。掴みでびっくりさせられなかったらやっぱり負けだと思ってたから、そこは自分なりに勝負に出ましたけど、結構、古君(古村)のケガがあったからこういう形になったっていうところもあるんです。ケガしてたからギターを弾けないわけじゃないですか。ケガをする前は全然違う曲調だったんですよ。歌詞も違ったし、メロディも違ったし、ほとんど別の曲だったんです。ちょっとR&Bっぽい曲だったよね。

坂倉:もっと生々しい曲だった。

光村:だったんですけど、古君がケガして、ギターでいろいろやろうと思っていたことができなくなって、じゃあ発想を変えようと。古君がギターが弾けないとなると、俺もめちゃめちゃ弾けるわけじゃないから、ギターのパートを声でやってしまおうって考えたのがアレンジのきっかけで。しかもアルバムが声から始まったらすごくハッとするだろうって。ファンファーレっぽいイメージで作ってみようかなと思って、いざやり始めてみたら手応えはあったんですけど、結構大変で。結局、2ヶ月ぐらいかけてやっと完成しました。今までで1番大変だったかもしれないです。

-ギミックも使ってバンド・サウンドの範疇を超えたサウンドですからね。

光村:完成図が僕の頭の中にしかなかったんですよ。だから、坂倉と対馬君はレコーディングのとき、大変だったと思います。説明の仕方もすごかったんですよ。方眼紙を持ってきて、"ここでこれだけの音が重なるからこう演奏してくれ"みたいな感じで。レコーディング自体はパッと終わったんですけど、たぶん弾いているときは何もわからなかったと思う。

坂倉:"よし、いいプレイできた。で、どうなるんだろう"って(笑)。

光村:古君なんて1番わかってなかった(笑)。

古村:病院から帰ってきたらこのアレンジになってたんですよ(笑)。

光村:僕が弾けちゃうレベルでしかギターは入っていないから、古君には最後にちょこちょこっと足してもらったぐらいなんですよ。

-もともとはR&Bっぽい曲だったとのことですが、この間の武道館のときからR&B色が以前よりも出てきたように感じていました。今回のアルバムもそういうところが随所に出ているんじゃないかと思うんですけど。

光村:タテノリが嫌いなわけではないんですけど、あまりタテノリの曲が浮かばない。そういうところにあまり逆らわないようにしているっていうのはあるかもしれない。

坂倉:歌い方のニュアンスなんかはそうだよね。

光村:意識的にやっているわけではないんですけど、今回の「ブギウギルティ」(Track.5)なんかは昔のジャズとかブルースとかを、自分たちなりにポップスというか、ちゃんと聴きやすいものにデフォルメしてやっています。それは僕の宿命だと思ってるから迷わずに行こうって、そういう曲をやる踏ん切りもつきましたけどね。

-アルバムの最後を締めくくる「勇気も愛もないなんて」の古村さんのリード・ギターも聴きどころのひとつではないかと思います。音数を抑え、あえてサスティーンで聴かせるところがいい。

古村:あ、ホントですか。嬉しいです。いかに弾かずにひとつの音で語るかを感じていただけたら俺は幸せです(笑)。あそこのために新たにトーンベンダーっていうエフェクターを買ったんですよ。音もこだわったというか、辿りついたところがそこだったんですけど、買ったとたん手を折ってしまって(苦笑)。

-この曲はリズム隊も聴きどころですよね?

対馬:演奏の土台というイメージが強かったです。そのうえで、古君のギターや歌のムードをどれだけ伝えられるか。ドラムの音とプレイが曲の三角形を成り立たせるうえで重要だということを意識しながら叩きました。

光村:今回のレコーディングで1番つらかったそうです。

対馬:はい、難しかったです(笑)。もちろん、そう思いながら演奏しているんですけど、シンプルなだけに、これで合っているのかなっていう不安はちょっとありました。

坂倉:僕も本当に「ローハイド」のタイミングから......って、結構戻っちゃうんですけど、みっちゃん(光村)がアコギで弾き語りで作っていくっていう曲作りの原点に立ち返って。アコースティック・アルバムを作る流れがあった中で、バンド・サウンドなんだけど、歌を大事にしようっていう意識が改めて芽生えてきたんですよ。だから、アンサンブルを引っぱるというよりは土台になることを意識しました。「ウソツキ」もそうなんですけど、今回のアルバムは全体的にそういう意識でいましたね。

-今年前半はライヴに次ぐライヴだとは思うんですけど、贅沢を言わせてもらってもいいですか? たぶんこのアルバムからNICOはさらに加速するんじゃないかと、今回、新曲を聴きながら感じたんですよ。だから、今回のアルバムの先のNICOっていうのを、できるだけ早く形にして聴かせてほしいなぁと(笑)。

光村:そうですね(笑)。僕もひとつ、何が自分の大事にすべきポイントというか――もちろんいろいろな音楽が好きだし、それはこれからも変わらないと思うんですけど、自分たちが本当に大事にしなきゃいけないものは何だろうってことに関しては、ずっと答えが出なかったんですよね。ただ今回、"勇気と愛"ってところで、自分と音楽との共通点、音楽に向かう姿勢との共通点みたいなものが見つかったから――自分がこのバンドを通してやるべきことがはっきりと見えてきた手応えはあるんで、今は結構楽な気持ちで次の曲をまた書いているんです。

-新作からはいろいろな可能性が感じられますよね?

光村:でも、総じて人間臭いところが1番自分たちらしいと思うし、あまりかっこつけることができないのが宿命なのかなって思ってるんで......そうですね、新しい曲いい感じですよ(笑)。いや、本当に、今回のアルバムには収まらないタイプの曲になっているんで、ぜひ楽しみにしていてください。