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LIVE REPORT

Japanese

NICO Touches the Walls

Skream! マガジン 2019年07月号掲載

2019.06.08 @TOKYO DOME CITY HALL

Writer 山口 智男

デビューから10年経ったタイミングで、ここからさらに10年、20年と活動を続けていくには、時代の変化や音楽シーンの流行り廃りに負けないようにバンドの芯をより強いものにする必要があると考えたんだと思う。そこからのNICO Touches the Walls(以下:NICO)は、自らの創作欲求や本能のままに活動しながら、キャリアを切り拓いてきた。その成果が『OYSTER -EP-』であり、『TWISTER -EP-』であり、そして、最新アルバムの『QUIZMASTER』だったわけだが、同時に彼らはライヴにおいても縦ノリの速いビートに合わせ、飛び跳ねるだけに止まらない新たな楽しみ方も、「マシ・マシ」や「Funny Side Up!」といった曲とともに提案してきた。

この日、3日前にリリースされたばかりの『QUIZMASTER』について、光村龍哉(Vo/Gt)は"音楽好きとして、こういうアルバムを聴きたいというロマンを全編にぶちこんだ"と語ったが、その全10曲を軸にしたこの日のライヴは、翌日の大阪公演とともに今回のツアーの締めくくりに相応しいものであると同時に、この数年の活動の総決算と言えるものになったのだった。

『QUIZMASTER』の中でも特に壮大なスケールを持つ「2nd SOUL?」をいきなり1曲目からじっくりと聴かせ、観客の気持ちをがしっと鷲掴みにしたあと、エネルギッシュな曲を畳み掛けると、コール&レスポンスを交えながら、観客にシンガロングの声を上げさせ、存分にロック・バンドとしてのかっこ良さを見せつけた序盤。そこから一転、光村がエレキをアコースティック・ギターに持ち替え、光村、古村大介(Gt)、坂倉心悟(Ba)、対馬祥太郎(Dr)4人の演奏が絶妙に絡み合うアンサンブルが見事だったR&B調の「別腹?」や、光村と対馬のふたりがアコギとカホンを奏でながら美しいハーモニーを重ねた懐かしい「エトランジェ」ほか、バラードをじっくりと聴かせた中盤。そして、再びテンポ・アップした演奏が、轟音をエモーショナルに鳴らした「Broken Youth」で観客の精一杯のシンガロングとともにクライマックスに達した終盤。『QUIZMASTER』の肝とも言える「18?」をじっくり聴かせ、本編を締めくくるまでの約2時間、いろいろな魅力を印象づけながら彼らが見せつけたのは、心の底から生まれた歌をストレートに届け、ギミックや共感を誘うメッセージに頼らず、音楽と演奏そのものの魅力で勝負するバンドの姿だった。

この日、光村は『QUIZMASTER』について、前掲の言葉に加え"ロック・バンドがどういう生き方をしていくのか、僕たちからの問い掛け"と言ったが、音楽そのもので勝負するという答えを見いだした4人の姿を見ながら、10年後はもちろん、20年後のNICOの姿を見てみたいと思った。それは、この日の彼らにはそう思わせるだけの成熟と、自分たちが進むべき道を見据えたバンドだけが持つことができる自信が感じられたからだ。

今回、アルバムのリリースを待たずに3月の終わりからツアーをスタートさせた彼らは、新たなステップに向け、すでに動き出しているに違いない。それがリリースなのか、ライヴなのかはともかく、彼らがこの次どんなことに挑戦するのか、期待している。

ちなみにこの日、会場で『QUIZMASTER』を購入した観客の中から抽選で選ばれた50人を招き、終演後"After show de show"と題して、「マカロニッ?」、「サラダノンオイリーガール?」、「雨のブルース」を生音と生声で演奏したことと、それを観ることができた50人は超ラッキーだったということを、最後につけ加えておきたい(同企画は翌日の大阪公演でも実施された)。

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