Japanese
NICO Touches the Walls
Skream! マガジン 2018年07月号掲載
2018.06.06 @Zepp Tokyo
Writer 山口 智男
新しいEP『TWISTER -EP-』のリリースを待たずにNICO Touches the Walls(以下:NICO)がツアーをスタートさせた。その初日となるこの日、光村龍哉(Vo/Gt)は、新しいEPのタイトルである"TWISTER"という言葉に"ひねくれ者"という意味があることに触れ、"僕らにぴったり(のタイトル)"だと笑った。時折あることとはいえ、新作のリリース前にツアーを始めてしまうところからしてそうだと思うが、誰が決めたわけでもないのに、日本のミュージック・シーンにいつの間にか根づいていたセオリーみたいなものを、いくつも破ったこの日のライヴは、まさに光村が言う"ひねくれ者"の本領発揮という意味でも、実に痛快だった。
まさか全5曲収録の『TWISTER -EP-』からボーナス・トラック的な1曲を除いて、全曲やるとは思わなかった! 新曲をやるとは思っていたが、1曲くらいだろうと高を括っていた筆者は、NICOのことをちゃんとわかっていなかったようだ。以下、ツアー中のためあえて曲名は伏せるが、新曲を早速交え、序盤からぐんぐんと熱を上げる演奏にしっかり食らいついていく観客を見て、思わず"最高!"と快哉を叫んだあと、光村が言った"(今日は)俺たちの底力を見せようと思います"の"底力"とは、このことだったのか。
序盤の盛り上がりに続いて、メンバーが重ねる見事なハーモニーも含め、じっくりと聴かせる曲の数々を並べた中盤。そして、前作『OYSTER -EP-』からの感動的なあの曲で上りつめたクライマックスをさらなる熱狂に高めるため、アップテンポなロック・ナンバーを、ほぼ曲間を空けずに畳み掛けるように演奏した怒濤の終盤では、「THE BUNGY」、「天地ガエシ」といったライヴの定番曲のみならず、懐かしい曲も交えた。その流れの中には新曲も散りばめ、バンドはキャッチーな魅力に頼らずに、曲が持つパワーや演奏そのもののグルーヴで、それらを初めて耳にする観客の気持ちを鷲掴みにした。
筆者が客席を見た限りでは、新曲についてこられなかった観客は、ほとんどいなかった。前作『OYSTER -EP-』に続いて、"『TWISTER -EP-』がさらにやりたい放題なEPになった"と聞いて、大きな拍手を贈るNICOのファンたちだから、当然と言えば当然だが、誰もがそこにバンドの底力を感じたはずだし、そこにはたしかにライヴ・バンドとしての正しい在り方があった。王道に対するカウンターでありたいという気持ちから、メンバーたちがひねくれ者になろうとしているところは多分にあると思うが、この日のようなライヴのやり方をするバンドが本当にひねくれ者になってしまうんだとしたら、日本のミュージック・シーンの方がおかしい。NICOのようなバンドを本物のロック・バンドと言うんだと、少なくとも筆者は思っている。
本編最後は、前作『OYSTER -EP-』からレパートリーに加わった最強のライヴ・アンセムで締めくくるのかと思いきや、そのあとにもう1曲、新曲を披露。どの曲かは『TWISTER -EP-』を聴いてのお楽しみだが、グループ・サウンズっぽいところもある歌謡ロックンロールが持つ、歌詞とは裏腹の楽しい曲調に観客の反応がすこぶる良かったことは言うまでもない。
アンコールでは、"あらかじめ決まっているアンコールなんてそもそもおかしい。これが本来のアンコール"と本編でやった中から1曲観客のリクエストに応え、ダメ押しでひねくれ者ぶりをアピールした。セットリストはマイナー・チェンジを重ねると思うが、今回のツアー、NICOというバンドの本質が滲み出るところも含め、見応えあるものになりそうだ。ぜひ、彼らのひねくれ者たる所以を確かめに、足を運んでみてほしい。
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