Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

0.8秒と衝撃。

2015年08月号掲載

0.8秒と衝撃。

Member:塔山 忠臣(最高少年。) J.M.(唄とラウド。)

Interviewer:天野 史彬

-Johnny Marrにとっての雨の音みたいな、音楽を通して描きたい情景って、塔山さんにはありますか?

塔山:でもね、俺も雨の音めっちゃ好きなんですよ。昔、キャンプに連れていってもらっても、雨降ったらめっちゃテンション上がって(笑)。俺だけテントを低くして張って、雨の音がめっちゃ聴こえるようにして寝てたんです(笑)。それが気持ちよくて。脳味噌洗われている感じがするんですよね。変な人と思われたら嫌ですけど、俺、雨の音のCDめっちゃ持ってるんですよ(笑)。なので、今回のアルバムに関して強いて言うなら、ギターで雨っぽい音を出したかったかもしれない。あとは、夜っぽいアルバム。それは最初に言った"ダークネス"っていう言葉に繋がると思うんですけど。今までのハチゲキのアルバムって、朝っぽかったと思うんですよ。よく"朝一発目に聴くと元気になる"って言ってもらってて、それも嬉しいんですけど、夜っぽいアルバムも作ってみたかったんですよね。DEERHUNTERが『Halcyon Digest』(2010年リリースの4thアルバム)を作ったときもそういうことを考えていたらしんですよね。で、そのときに彼らが聴いていたのがNeil Youngの『On the Beach』(1974年リリースの5thアルバム)らしくて。あれも夜っぽいんですよね。ああいう感じのアルバムを作りたいなっていうは、当初思ってましたね。

-あと今回、例えばTrack.2「虹色の言葉」の"時がとまればイイ、数多く歌われてる。/未知なる結果は無視で、ただ僕が止まればイイ。"とか、Track.3「昨日より若く」の"時間の中、君の歌さ、砂の欠片に/さらわれて、、、"とか、言葉の面で"時間"を意識させるフレーズが多く出てくるなって思ったんです。過去の時間を振り返って眺める、ノスタルジックな感覚が通底しているというか。ここは何か意識していましたか?

塔山:単純に、そういう言葉をたくさん使おうと思ったというよりは、"メランコリー"っていうことを考えたときに、俺の中に浮かぶ要素で"時間"っていうのもあったんだと思います。意識的なものではなく、潜在的なものとして"時間軸"っていうのはあって、それが出てるんだと思いますね。結局、季節が変わるのも時間だし、自分が歳をとるのも時間だし、未来も過去も時間じゃないですか。そういう意味では、"時間"っていうのは、なんにせよ自分の中から出てくる重要なものなのかなって思いますね。でもたしかに、メランコリーって、ノスタルジーにも近いですよね。THE SMITHSも、モータウン系のものとか、懐古的なものが好きだったみたいですからね。あのシンセがピコピコ鳴ってる音楽が主流だった80年代に、彼らはモータウンみたいな音楽を聴くことをモダンだと思ってやってましたから。そういう感覚が好きなんですよね。Johnny Marrも当時のインタビューで言ってましたけど、懐古的なものをカッコ悪いとは思わない、むしろそれこそがモダンであるっていう。

-"時間"って、音楽にとってすごく重要なファクターですよね。音楽を聴いている時間って、その音楽と一緒にその人の中に残るじゃないですか。何年経ったあとも、その音楽を聴くと、当時の情景なんかも一緒に蘇るっていう。そうやって、音楽と人が密接に結びつく時間を提供する力も、この『破壊POP』にはあるのかなって。

塔山:そうですよね。余談になっちゃうかもしれないけど、さっきJ.M.が言った元MADの上田さんに、J.M.は音源と手紙を送ったんですね。このハイテク・メール時代に手書きで送ったんですよ(笑)。そしたら上田さんから返事が来て、共演が決まって。で、ライヴでも共演することになったので、俺も観に行ったんですよ。そしたら、今、上田さんがやってるAA=の若いファンの人たちが前の方で暴れてるんですね。でも、上田さんと同じくらいの年齢層の大人の方々が、後ろの方でTシャツ着て、真ん中には行けないんだけど、誰よりも声上げてるんですよ。それがめっちゃカッコいいなって思って。こういう空間、たまんないなって思ったんです。前で暴れてる奴らはそれでいいんですよ。でも、おっちゃんおばちゃんたちが、普段身に着けないようなバンドTとかバンド・タオルを身に着けながら観てて、それにキュンキュンしてしまって。家庭も持ってて仕事もあって、それでも想いがあるから観に来てて。そういう感じのことをやっていきたいんですよね。

-アーティストとリスナーが一緒に時間を歩んでいけるのは、幸福な関係ですよね。それはさっき言ったような、クソとか神とか、そういう短絡的な評価だけで人と音楽が繋がっていない証明でもあるし。

塔山:俺たちももう5年くらいやってるから、5年前からいてくれてる子もいるんですよ。お互い、この5年の間にいろんなことがあるけど、でもステージを一緒に楽しんでくれるっていう。そこにキュンとくるんですよね。それをもっと体感していきたいし、そういう人ともっと触れ合っていきたいし......そのときだけじゃない関係は作っていきたいですね。お互いが望んで来て、そこでエネルギーが爆発する関係を作っていきたい。お客さんにはお客さんの生活があるし、俺たちには俺たちの生活があるから、毎日会えるわけではないんだけど、1枚の音源で繋がって、それを頼りにお互いがひとつの場所に集まってエネルギーをやり合えるのは、憧れますね。タイムレスな空気を感じる瞬間っていうのを作りたいんですよね。

-わかりました。最後に、今回の作品に"破壊POP"というタイトルを付けた理由を教えてください。

塔山:"破壊POP"っていうのは、決してサウンドが暴力的で破壊的だっていうことではなく、自分の持ってる既成概念を破壊するっていうことですね。自分の中の世界で、"自分は何がしたいのか?"っていうことに向き合って、そいつ自身になってもらいたい。そういうポップな作品にしたかったので、このタイトルにしたんです。自分が囚われているしょうもない部分を破壊する......言わば自己破壊ですよ。自分を破壊して、その先に何をするのか、何ができるのかっていうことを刺激する、そういうアルバムになったと思いますね。