WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2015年06月号掲載
恋する円盤の2ndミニ・アルバム『Her Favorites』がとてもよかった。デビュー作『PASTEL』の地続きにありながらも、新たなステップをしっかり踏んでいる進化作である。前作では、メンバー6人それぞれが鳴らす1音1音がぶつかり合うような、衝動的なアンサンブルの中から蒼い煌めきと向こう見ずな才気がほとばしっていたが、本作では、その衝動性は残しながらも、より根本にある普遍的な曲の良さが滲んでいる。サザンオールスターズを愛する大塚真太朗の端正なソングライティングに、メンバーそれぞれの個性が絡み合った楽曲たち。彼らが一介のインディー・ロックには収まり切らない、より懐の大きなポップ・ソングを奏でることができるバンドであることを如実に証明する1枚だろう。
そして、この作品はタイトルが素晴らしい。『Her Favorites』――つまり、"あの娘のお気に入り"である。インタビューで大塚真太朗はこのタイトルの由来について、中学生のころに好きになった女の子が聴いている音楽を自分も聴き始めた、という可愛らしいエピソードを語ってくれた。このエピソードは、恋する円盤というバンド、そして大塚真太朗というソングライターの本質を物語っているのではないだろうか。
かつて、RCサクセションが名曲「トランジスタ・ラジオ」で歌った"近くて遠い"という感覚。あの娘が教科書を広げている間に、自分が聴いている海外の音楽。それを彼女は知らないのだ。そう、いつだって私たちが想いを馳せる"あの娘"は、物理的な距離は近いにも関わらず、とんでもなく遠い存在である。逆もしかり。彼女のイヤホンから流れる音楽を、自分はきっと知らないだろう。こんなに近くにいるのに、わからない。わかってもらえないし、わかってあげられない。自分とあの娘の間に存在する距離。もちろん、ここで言う"あの娘"とはメタファーでもある。自分と他者――家族や友人でもそうだし、それは国や人種、宗教という大きな話にも繋がっていく。どれだけ傍にいても、どれだけ近くにいても、人と人の距離は遠く離れている。人と人とは、それぞれが違うから。
でも、違うことは、もしかしたらそれ自体が祝福すべきことかもしれない。きっと大塚真太朗なら考えるのだろう。"あの娘のお気に入り"はなんだろう? と。そしてさらに考えるだろう。"僕のお気に入り"と"あの娘のお気に入り"が交わる瞬間があればいいのに、と。それは"万人受けする"こととは違う。君と僕とが違ったままで見つめ合い、手を繋ぎ合うこと。もし、それが可能になれば、安易な共感や同調なんかより、よっぽど幸福でピースフルな空間が生まれるはず――そのためのメロディとリズムが必要だと、きっと彼なら考えるだろう。彼が新作に名づけた"Her Favorites"というタイトル。ここには私やあなた、そして"あの娘"も、それぞれが孤独であり、だからこそ、繋がり合えるのだという大きな理想がある。
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