WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年09月号掲載
アルカラの新作『CAO』が凄い。耳が、感性がヒリヒリする。
アルカラは、これまで意識的に様々なことを避けてきた。シリアスになり過ぎることを避け、"自分"を赤裸々に歌うことを避け、社会に真正面から切り込むことを避け。自分とは?社会とは?世界とは?――そんな、ロックが本来的に持つ問いを、明快な形で聴き手と共有することを避けてきた。何故かといえば、自分たちの音楽が自己表現であること、あるいは社会性を持った表現であることを明かにしてしまうことで、その表現が画一的な見られ方をしてしまうことを避けてきたからである。何故そうしてきたのかと言えば、それは彼らが"答え"や"正解"を求めないバンドだから。すべてに答えはなく、すべては謎のまま。それこそがアルカラにとってのリアルでありロックだった。誠実さが売り物になるこの世の中で、この姿勢はとても貴重なものだったと思う。
しかし新作『CAO』で、アルカラは"避けること"を避けた。本作の彼らは、これまでのようにユーモアや寓話性で聴き手を翻弄したり、自分たちの心を包み隠していない。その音に、言葉に、"今、俺たちはこう思っている"と、その心象風景を、その目が見る世界を、真っ直ぐに刻み込んでいる。つまり、自分とは?社会とは?世界とは?――この問いに実直に向き合い、聴き手に投げかけているのだ。だからこそ、過去最高にそのサウンドは緊迫感に満ち、言葉は刺々しく、時に哀しい。アルカラ史上かつてなくダイレクトなメッセージ・アルバム――それが『CAO』なのである。
では本作でアルカラは、何がしかの答えや解決を聴き手に提示しているのか?......と言うと、それはそれで違う。ちょっとややこしいのだが、むしろ、今のアルカラの想いをストレートに刻んだこの『CAO』というアルバムは、彼らのディスコグラフィ史上、最も聴き手それぞれの解釈を必要とする、複雑に入り組んだ作品という側面も持っている。何故かといえば、つまるところ、現実は小説よりも奇なり、ということなのである。この世界で巻き起こる様々な事象――恋愛、仕事、政治、戦争。そのすべてに、人それぞれの立場があり、人それぞれの正義と悪がある。本音と嘘があり、裏と表がある。複雑に入り組み、謎に満ちた今がある。ないのは答え。それがこの世の根本的な在り方なのだ。だからこそ、『CAO』が描く世界――それはこの国の社会であり、音楽シーンであり、アルカラの心象である――がリアルであればあるほど、そこには必然的に幾通りもの考え方と立場が内包される。真実を語る表現とは、それだけでミステリアスなものなのだ。だからこそ、『CAO』は思考を刺激する。"俺はこうだ。では君はどうか?"と、まるで聴き手の心の奥深を暴き映す鏡のような音楽。あなたも是非、本作を通して複雑な世界とあなた自身の心に向き合ってほしい。
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