WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年08月号掲載
1泊2日で大阪に行ってきた。目的は、今年没後10年を迎えた作家・中島らもの追悼イベントである。その会場が大阪城の近くにあって、開演前にぷらぷらと周りを散策していたら、聴き覚えのある音楽が聴こえてきた。andymoriだった。その日はちょうど、大阪城野外音楽堂でandymoriのワンマン・ライヴ"ひこうき雲と夏の音"大阪公演が行われていたのだ。せっかくなので音漏れのおこぼれを頂戴してきた。聴けたのは「Peace」、「投げKISSをあげるよ」、「ベンガルトラとウィスキー」......あと何曲か。andymoriの解散が発表されたのは去年の5月。それから1年以上経った今年8月、andymoriはSWEET LOVE SHOWER 2014でのライヴをもって解散する。
去年、andymori解散の報を知った時に抱いた感情――それは悲しいという気持ちと、"あぁ、やっぱり"という気持ちがない交ぜになったものだった。あぁ、やっぱり終わってしまうのだ。かつて大きな理想を掲げてきた数多のロックンロールがそうであったように、この理想は叶うことなく終わってしまうのだ。この"終わり"は、初めから宿命づけられていたことのように思えた。何故ならandymoriがそのキャリアの中で歌ってきた全ての想いの裏には常に、向こう見ずな祈りと、あまりに深い無力感があったからだ。
andymoriの音楽はいつだって、全能感と無力感の両極に引き裂かれていた。それは彼らが"世界を変えたい"と誰よりも強く願い、それと同時に"世界は変わらない"と誰よりも深く気付いていたからだ。ロックンロールとは"世界平和を祈る悪役"のようなものだ。悪役。それはいつだって正義の味方に倒される宿命を背負っている。ロックンロールの歴史とは敗北の歴史だ。ロックンロールが描いた理想はいつだって、クソみたいな現実に踏み潰されてきた。John Lennon、忌野清志郎、THE STONE ROSES、THE LIBERTINES......例を挙げたらキリがない。いつの時代も争いは絶えず、言葉は掻き消され、自由は奪われてきた。その中でロックンロールは、ただ祈るように踊り続けてきたのだ。andymoriだってそうだ。彼らの音楽は常に、愛と自由を求める祈りに満ちていた。でも、終わってしまう。何故ならロックンロールは無力だから。でも、消えない。この時代にandymoriというバンドがいて、"世界を変えたいんだ"という力強い祈りを奏でたバンドがいた、その記憶は消えない。たとえ世界がどれだけ酷くなろうが、ここにある祈りだけは、絶対に消えない。
"100回 1000回 10000回叫んだって 伝わらない 届かない想いは 100日 1000日 10000日たった後で きっと誰かの心に 風を吹かせるんだ"(「革命」)
彼らの奏でた音楽が誰かの心に風を吹かせて、そしてまたその誰かが誰かの心に風を吹かせるのだろう。ロックンロールはそうやって繋がれてきた音楽だ。andymoriがそうだったように、気ままに酔っ払いながら口笛でも吹くように、この祈りは繋がれていく。それを繋ぐのは、他でもない私であり、あなたなのだ。
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