WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2015年01月号掲載
人生を変えるのではなく、人生そのものになってしまうような音楽との出会いがある。私の場合は、高校生の頃に初めて銀杏BOYZの『DOOR』を聴いたときとか。あるいは、大学生のころに小沢健二の『LIFE』に打ちのめされた瞬間とか。自分の生をすべて肯定してやりたくなるような、そんな音楽との出会いがある。
あなたはもう、恋する円盤の1stミニ・アルバム『PASTEL』を手に入れただろうか? "恋する円盤"。もしあなたがこのバンドの存在をまだ知らなければ、どうかこの駄文を最後まで読んでほしい。このバンドは、あなたの人生そのものになるかもしれない、そんな予感がするのだ。
恋する円盤は6人組のバンドだ。男5人、女の子ひとり。まだ20歳そこそこの若いバンドだ。音楽的には、とても騒々しいインディー・ポップが鳴っている。6人のメンバーが鳴らすすべての音が、鳴り出した瞬間からくっちゃべったり恋に落ちたり喧嘩したり、曲の中で様々な出会い、対話、別れを繰り返していく。複数の人間が集まって音楽を鳴らす、そこにある根元的な祝福と悲しみが音に刻まれている。
曲の歌詞に出てくる主人公はいつだって、目の前にいる誰かを全力で愛しながら、いつか離れ離れになるときが来るのを感じている。君と手を繋げば繋ぐほどひとりぼっちになってしまう――そんなパラドックスを抱えている。でも、それは特別なことなんかじゃなくて、それが生きるってことだと知っている。私たちは日々暮らしていく中で、人と出会う。そこには楽しいこともあれば、すれ違ったり、喧嘩したり、結局離ればなれになってしまったり、悲しくて孤独な気分になることもたくさんある。それでも私たちは毎日、誰かのことを考えながら生きている。恋人にあげるためのプレゼントを選んだり、週末に友達と遊びにいく場所を考えたり。傷つくことや、離ればなれになってしまう予感を抱えながら、どうしても私たちを突き動かさずにはいられない人と人との"営み"が持つ力。それに対する絶対的な肯定が、恋する円盤の音楽を成り立たせている。『PASTEL』に収録された5曲はどれもいいが、2曲目の「まちのあかり」と5曲目の「夜明けまえ」が素晴らしい。特に「夜明けまえ」は"光"についての歌だ。銀杏もオザケンもそうだが、触れることのできない圧倒的なものを描こうとする表現は美しい。
"光の中 踊る人たちは 目に涙ためた/いつか終わる その時が来るのを 思いえがいたまま"(「夜明けまえ」)
目の前を瞬く間に通り過ぎる巨大な光に手を伸ばすような感覚。音楽が鳴りやんだ瞬間の虚無を知っているからこそ鳴らされる音楽としての切実さ。音楽が鳴り響くすべての場所と、そこに集うすべての人々、そして彼らの帰り道に捧げられた祈り。恋する円盤の音楽とはそういうものだ。あなたにも出会ってほしい。
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