WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2015年05月号掲載
リリースからちょっと時間が経ってしまったが、踊ってばかりの国の新作『SONGS』がとてもよかった。本作で踊ってばかりの国は、本来あるべき姿に辿り着いた――あるいは"還ってきた"――のだと私は思っている。この『SONGS』というアルバムは、その名の通り"歌"のアルバムである。そして"歌"とは、このバンドのヴォーカリスト、下津光史の本質そのものである。
『SONGS』は、波のさざめく音とオルガンの音色が響き渡る「ocean(intro)」で幕を開ける。そこからラストにかけて、本作は、下津光史が抱え続ける"生きること=歌うこと"という深いサガを通底音として奏で続ける。ラスト前のトラック「唄の命」で歌われる、"僕が歌ってるという事 今を生きているという事/それを君が聴くという事 唄の命が生まれるのよ"というラインが、本作に宿る真理を見事に物語っている。この世に産み落とされたこと。人生。他者との繋がり――下津光史にとって、そのすべてを繋ぎ止めるのは"歌"なのだろう。彼は歌によって生き、歌によって他者に語る。だからこそ、生命の起源、母なる海を想起させるイントロで幕を開け、"歌=生"の方程式を鋭い言葉と共に歌い上げる「唄の命」に辿り着くまでに収められたいくつかの楽曲では、下津光史のどこまでもパーソナルな、身近な他者に対する想いにフォーカスが当たる。「口づけを交わそう」や「Hero」といった、具体的な誰かを想って書かれたのであろう楽曲は、ため息が出るほどに素晴らしい。
ただ、"パーソナル"と言うには、ここに刻まれた想いはあまりに赤裸々すぎるかもしれない。妻や家族など、本作に収められた楽曲で歌われている(と考えられる)下津と他者との関係性を"君と僕"などという言葉で片付けることもできない。そうするには、彼の歌からは血が滲みすぎている。「唄の命」が終わったあとに始まるラスト・トラック「ほんとごめんね」で綴られるのは、悔恨である。"生きること=歌うこと"という自身の本質を曝け出したこのアルバムの最後で、下津は謝り続ける。ほんとごめんね、ほんとごめんね、ほんとごめんね......歌を生かし、歌に生かされる男の懺悔。歌の力を誰よりも信じ、だからこそ、"歌うことしかできない"という無力を誰よりも抱きしめているのであろう彼の悲しみが、その隙間なく埋め尽くされた轟音の壁から沁みだすように、聴き手のこちらにも伝わってくる。その悲しみが、どうしようもなく美しい。そう思ってしまう時点で、私はこの『SONGS』というアルバムの"当事者"にはなれないのだろう。何度も書くが、このアルバムは"歌"のアルバムである。それは下津光史の"命"のアルバムと同義である。曲の中の登場人物以外の聴き手は、その美しく壮絶な生き様を、傍観者として見つめることしかできないのだ。
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