WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年07月号掲載
恵比寿LIQUIDROOMで行われた、ART-SCHOOLのアルバム『YOU』リリース・ツアー・ファイナルのワンマン公演を観てきた。ART-SCHOOLがすべてのキャリアを通して辿り着いた場所がここなんだと、感慨深くなるライヴだった。
最も印象的だったのはアンコール1曲目で演奏された「Hate Songs」。"負の連鎖――虐待された子供は、その子供にも同じことをしてしまうって言う人がいるけど、ふざけんなって思う。そんなことないから"という木下理樹のMCに続いて演奏されたこの曲、音源では"愛されず育った子供達/そのあざは美しい"と歌うラインを、この日の木下は"殴られて育った子供達"と変えて歌った。この歌詞の変化から浮き彫りになったのは、今の木下が持つ、"痛いのは心じゃなく身体なんだ"というシビアな現実認識だった。本当に私たちを苦しめるのは観念的な痛みではなく、理不尽な暴力や残酷さ、恐怖が否応なく降り注ぐこの世界の根本的/具体的な在り方なのだ。今のART-SCHOOLはこの世界の病理を、時代の病理を鋭く見つめているし、そんなシビアな現実認識のもと鳴らされた「Hate Songs」が、私たちの生傷を癒すように柔らかく優しげに響いていたことは何よりの希望だった。彼らがデビュー以降描き続けた痛みと哀しみの物語は、時代と"あなた"を包むような、強くて哀しくて優しい場所に辿り着いていた。
そして話は変わるが、さっきまでsyrup16gの五十嵐隆のDVD『生還』を観ていた。去年5月にNHKホールで行われた、文字通り"生還"ライヴ。私はこのライヴを生で観れなかったが、このDVDを観て抱いたのは、先に書いたART-SCHOOLのライヴとはまったく異なる感情だった。長い沈黙を破りリスナーの前に姿を表した五十嵐の姿。それは、メンバー・チェンジを繰り返しながらも長い時間をサヴァイブし続けたART-SCHOOLが持つ逞しさ、屈強さとは程遠い、一度表舞台から姿を消した人間の、ボロボロで弱弱しくも、でも穏やかで凛とした姿だった。ART-SCHOOLのライヴが目の前にいる他者に捧げられるようなものだったのに対し、この日の五十嵐の音楽は、五十嵐という人間からただただ滲み、溢れ出てくるような剥き出しのものだった。きっと彼が背負うのは、時代や世界ではなく、"あなた"でもなく、彼1人分の大きさのものなのだと思う。でも......このDVDを観ていたら、それもなんだか、とても愛おしくて美しく思えた。きっと、これでいいのだ。死にかけたり、生還したり......生きているうちは、これでいい。その生き様そのものがメロディに、言葉になっていく。その美しさが、五十嵐の作る音楽の美しさなのだ。彼はこの先も音楽を手放さないし、音楽から見捨てられることもないだろう。常に気だるく、切なく、しかしどこか笑ってしまうような愛嬌をたたえた五十嵐の音楽。それはそっくりそのまま、彼の生き方として、彼の存在として、相変わらずそこに在った。それもまた、希望だった。
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