WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2014年02月号掲載
(前回の続き)
同じ場所の、同じ穴を掘り続ける――その結果辿りついた深い穴底から、遂に9年の時を経て届けられたのが、銀杏BOYZの2枚のアルバム、『BEACH』と『光のなかに立っていてね』だ。
ライヴ・リミックス・アルバムと銘打たれた『BEACH』は、この9年間を埋めるような作品だ。ライヴ音源に過剰なまでのノイズと打ち込み処理が施された異形のライヴ・アルバム。もはや語り草にもなっている銀杏BOYZのライヴの混沌とした現場感が再現されているだけでなく、9年前にリリースされた楽曲の世界観がより進化/深化した形で再構築されている。このアルバムを聴くと、かつて多くの人々を熱狂されたあの混沌は、途切れることなく、ずっと水面下で蠢き続けていたことがよくわかる。
そして、スタジオ盤『光のなかに立っていてね』。リリース前から、ノイズ、インダストリアル、エレクトロなどを昇華した音楽性の変化は話題になっていたが、やはりここには、新たな銀杏サウンドがある。かつては"童貞"などのキーワードを使うことで、満たされない少年少女たちの気持ちにスポットを当てていた歌詞も変わった。本作には、もはやそういった"クラスの隅にいる冴えない奴"的なモチーフも、幻想の女の子に救いを求めるピュアネスも、見当たらない。だが、当時から何かが大きく変わったわけではない。9年前、既に20代後半に差し掛かっていた銀杏BOYZのメンバーにとって、"童貞""学校""幻想の女子"といったモチーフがリアリティを持って機能していたとは考えにくい。ただ、それらのワードを使うことは、人間の持つ根源的な闇を、欲望を、孤独を、表現するために当時最も有効な手段だったのだろう。しかし本作は、今、30代半ばを迎えた峯田和伸、そして銀杏BOYZが見た等身大の世界、そこにある絶望と希望が言葉になっている。もはや飾り立てる必要もなく、凄まじい殺傷力とユーモアで、この殺伐とした世界、そして人間の奥底を覗き込んでいる。
本作の中、やはり最も耳と心を揺さぶられるのは「ぽあだむ」だ。まるで水面を反射する日光のようにキラキラとポップに輝くこの曲は、9年間、同じ穴をずっと掘り続けてきた銀杏BOYZが辿り着いたひとつの決着であり、希望であり、新たな始まりなのだと思う。前回私は、銀杏BOYZはこの9年間、社会的な事象にコミットしなかったと書いた。それはその通りだと思う。だが、それ故の凄まじさがある。他の追随を許さない、表現としての圧倒的な密度と濃度。これは、決死の覚悟を持ってひとつの穴を掘り続けなければ到底辿り着くことのできない境地だ。時代性はないが、人間の普遍性がある。だから、2014年に銀杏BOYZが必要か?と問われれば、その答えはNOだ。2014年だから必要なんじゃない。銀杏BOYZはいつどんな時代においても、永遠に必要な存在だったのだ。
Related Column
- 2015.10.25 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.09.29 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.08.23 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.07.23 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.06.20 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.05.22 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.04.22 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.03.22 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.02.17 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2015.01.23 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.12.17 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.11.20 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.10.18 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.09.17 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.08.17 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.07.16 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.06.11 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.05.13 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.04.10 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.03.19 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.02.12 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2014.01.19 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2013.12.07 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2013.11.11 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
- 2013.10.28 Updated
- ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
LIVE INFO
- 2024.12.21
-
煮ル果実
ストレイテナー
back number
People In The Box
Helsinki Lambda Club
LiVS
シノダ(ヒトリエ)
フィロソフィーのダンス
あいみょん
Umisaya
Galileo Galilei
クジラ夜の街
クレナズム
浪漫革命
DENIMS
ベランダ
怒髪天
"MERRY ROCK PARADE 2024"
tacica
Homecomings
ずっと真夜中でいいのに。
SPECIAL OTHERS
LEGO BIG MORL
佐々木亮介(a flood of circle)
Absolute area
Hello Sleepwalkers
PEOPLE 1
新しい学校のリーダーズ
アーバンギャルド
mzsrz
MOROHA
- 2024.12.22
-
ExWHYZ
ストレイテナー
back number
Helsinki Lambda Club
tacica
シノダ(ヒトリエ)
上白石萌音
フィロソフィーのダンス
Lucky Kilimanjaro
大森靖子
あいみょん
WONK
Aooo
People In The Box
ザ50回転ズ
Homecomings
DOES
怒髪天
"MERRY ROCK PARADE 2024"
ずっと真夜中でいいのに。
majiko
ゴホウビ
miida × stico
さめざめ
小林柊矢
TK from 凛として時雨
adieu(上白石萌歌)
MyGO!!!!!
PEOPLE 1
新しい学校のリーダーズ
LEEVELLES × 名無し之太郎
- 2024.12.23
-
DOES
Cody・Lee(李)
LiVS
ドレスコーズ
Cody・Lee(李)
RAY×BELLRING少女ハート
坂本慎太郎
原因は自分にある。
東京初期衝動
- 2024.12.24
-
羊文学
川上洋平([Alexandros])
藤巻亮太
ポップしなないで
CIVILIAN
Plastic Tree
yama
- 2024.12.25
-
UNISON SQUARE GARDEN
原因は自分にある。
ExWHYZ
サンドリオン
川上洋平([Alexandros])
豆柴の大群都内某所 a.k.a. MONSTERIDOL
シノダ(ヒトリエ)
ずっと真夜中でいいのに。
- 2024.12.26
-
BiS
いゔどっと
優里
Cwondo
LACCO TOWER
ネクライトーキー / kobore
UVERworld
Dannie May
- 2024.12.27
-
いゔどっと
"FM802 RADIO CRAZY 2024"
優里
TK(凛として時雨)
シノダ(ヒトリエ)
賽
Devil ANTHEM.
"TOKYO COUNT DOWN 2024"
ネクライトーキー / 3markets[ ]
ビッケブランカ
ExWHYZ
煮ル果実
神聖かまってちゃん
SANDAL TELEPHONE
ウソツキ
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.28
-
CENT
ザ・クロマニヨンズ × go!go!vanillas
the paddles
"FM802 RADIO CRAZY 2024"
TK(凛として時雨)
シノダ(ヒトリエ)
ADAM at
TENDOUJI
DJ後藤まりこ × クリトリック・リス
鯨木
Homecomings
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
モノブライト
BiS
THE YELLOW MONKEY
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI / PIGGS / Wang Dang Doodle / ゆっきゅん
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.29
-
"FM802 RADIO CRAZY 2024"
ADAM at
DIALOGUE+
Aooo
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.30
-
Dragon Ash × The BONEZ
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2024.12.31
-
Nornis / ROF-MAO / 葛葉 ほか
"第8回 ももいろ歌合戦 ~愛の大晦日~"
フラワーカンパニーズ
FINLANDS
"COUNTDOWN JAPAN 24/25"
大森靖子
9mm Parabellum Bullet×アルカラ
"LIVEHOLIC presents COUNT DOWN SPECIAL 2024→2025"
- 2025.01.03
-
JIMMY EAT WORLD
- 2025.01.04
-
私立恵比寿中学
RAY×BELLRING少女ハート
いゔどっと
sajou no hana
PRIMAL SCREAM / ST. VINCENT / JIMMY EAT WORLD ほか
- 2025.01.05
-
RAY×BELLRING少女ハート
PRIMAL SCREAM
Base Ball Bear
WEEZER / MANIC STREET PREACHERS / DIGITALISM ほか
PIGGS
- 2025.01.06
-
THE JESUS AND MARY CHAIN
- 2025.01.07
-
WEEZER
PRIMAL SCREAM
GANG PARADE × 寺中友将(KEYTALK)
レイラ
RELEASE INFO
- 2024.12.21
- 2024.12.25
- 2024.12.26
- 2024.12.27
- 2024.12.28
- 2025.01.01
- 2025.01.06
- 2025.01.08
- 2025.01.10
- 2025.01.12
- 2025.01.14
- 2025.01.15
- 2025.01.17
- 2025.01.20
- 2025.01.22
- 2025.01.24
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
ST. VINCENT
Skream! 2024年12月号