WRITERS' COLUMN
ライター 天野 史彬の『ベッドルームひとりぼっち』
2015年07月号掲載
まるで、"部屋に残ったあの娘の匂い"みたいな音楽である。切なくて、痛くて、愛おしい。新潟出身の3ピース、My Hair is Bad。彼らの最新シングル『一目惚れ e.p.』が、どうしようもなく素晴らしい。去年リリースされたフル・アルバム『narimi』も良かったが、正直、『narimi』に収録された12曲に比べても、今回『一目惚れ e.p.』に収録された4曲の方が圧倒的にいいと思う。去年のアルバム・リリースからここまでの間に彼らに何が起こったのか?と問い詰めたくなるほどに、覚醒しているシングルである。メロディがありノイズがあり、グルーヴィなビートがあり、それを乗りこなす言葉がある。何か目新しいことをやっているわけではない、オーソドックスなギター・ロックだが、曲を構成する1個1個の要素が鋭利に研ぎ澄まされている。バンドの真骨頂である、心の片隅に塵屑と共に溜まった想いの残骸を拾い集めて眺めるような、苦くも輝くメロディと言葉を堪能したければTrack.1「真赤」とTrack.4「悪い癖」を聴けばいいし、愛の歪さを巧みかつユーモラスに描く、ヒップホップにも通じるグルーヴ感と言語感覚を体感したければTrack.2「愛ゆえに」を聴けばいい。行き場のない気持ちを瞬間最大風速で刻みつける、彼らの中にあるパンク的衝動を感じたければ、30秒足らずのTrack.3「クリサンセマム」を聴けばいい。
My Hair is Badの音楽には痛みがある。My Hair is Badの音楽には営みがある。"男と女"――そんな普遍的な主題の中で彼らは、記憶とか、性とか、仕事とか、本音とか、嘘とか、あらゆる要素に絡めとられて、こんがらがって、解くことが困難になってしまった人生の"染み"みたいな部分に、それでも光をあてる。例えばTrack.1「真赤」。ここには、変わり続ける日々の中で、それでも"君"という名の鎖に繋がれて身動きもとれずにいる、どうしようもない男がいる。例えばTrack.4「悪い癖」。ここには、想っていたにも関わらず、愛する人の気持ちに気づけずに、気がついたらついたで傷は取り返しのつかないところまで深くなっていて、もはや悲しみの中で呆然と立ち尽くすことしかできない男がいる。どちらも誠実なわけじゃない。あまりに愚かで、きっと見る人から見れば馬鹿馬鹿しく痛々しい歌だろう。でも、美しい。過去に縛りつけられて、傷口は癒えず、それでも生き続けるしかない男の姿。しかし、生きるということは、他者と出会い、時間を共に過ごすということは、きっとこういうことなのだ。抱きしめたのに傷つけて、傷ついたのに抱きしめて、それでも転がっていくことなのだ。たとえ、その果てに、独りになったとしても。自らの生の証である、その孤独な傷口を、赤く血の滲む状態のまま音楽として鳴らすMy Hair is Bad。彼らの存在は、今、私にとって大きな希望のひとつだ。
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